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2.初めての友達。

あとがきまでよろしく(´;ω;`)!!








 なんだかんだあって、一日目が終了した。

 ボクはあの後に教員のみなさんから質問攻めを受けたけど、苦笑いすることしかできず。結局、この一件は不問とすることとなったのだった。


 でも、まさかという感じだ。

 教員という立場の人が、ボクよりも弱いだなんて……。



「いや、マグレだよね。きっとそうだ」



 だけど、そこまで考えて首を左右に振った。

 ゼウズに認められなかったボクに、そんな才能があるとは思えない。



「とりあえず、ご飯食べに行こう」



 割り当てられた部屋で服を着替えてから。

 ボクはふっと息をついて、そう呟いた。この学園には食堂という場所があって、学生ならば無料で食事を摂ることができるらしい。

 天界での食事とはどう違うのか、興味津々だった。


 なので、ほんの少し軽快な足取りで移動していた。

 その時だ。



「近寄るな、この貧民が!」

「きゃ!」



 どこかから、そんな罵声と共に短い悲鳴が聞こえたのは。



「え、なんだろ?」



 ボクは慌てて声のした方へと向かう。

 するとそこにあったのは、大柄な男子生徒と小柄な女子生徒の姿。後者には見覚えがあった。ボクの前に魔法の実践をしていた女の子だ。

 どうやら、彼女は男子生徒に突き飛ばされたらしい。


 さらに一つ、悪態をつくと彼は去っていった。

 残されたのはその女の子と、ボクだけ。

 駆け寄って手を差し伸べた。



「あの、大丈夫?」

「え……」



 すると、驚いたようにこちらを見上げる女の子。

 緑の髪に褐色の肌。くりくりとした金色の瞳が愛らしい、そんな子だった。身に着けているのは普段着ではなく、支給された学生服のまま。

 彼女はおそるおそるボクの手を取って、ゆっくりと立ち上がる。

 そして、小さく頭を下げた。



「あの、ありがとうです……!」

「気にしないで。それよりも、災難だったね」



 ボクが言うと、少女は首を左右に振る。



「違うです。アタシが貧困層出身だから、悪いんです」

「貧困層出身……?」



 彼女の言葉に、こちらは首を傾げた。

 貧困層、というのはつまるところ――貧乏、ってこと?

 それってなにか、悪いことがあるのだろうか。なぜならボクだって、言ってしまえば無一文の貧乏人であるに違いない。

 だからって、そのことに善悪があるとは思えないし。

 少なくとも天界にはない価値観だった。



「あの、アタシと一緒にいたら変な噂がたつかもしれません」

「関係ないよ、大丈夫! 友達になろうよ!!」

「え……?」



 不思議なものだなぁ、と思いつつ。

 ボクは笑顔を浮かべながら、女の子に握手を求めた。



「ボクはテオドロ! キミの名前は?」



 同じ学年なのだから、友達であることに変わりはない。

 そう思って言うと、女の子は少しだけ涙ぐむ。そして――。



「アタシは、モモ、です……!」



 その小さな手を、ボクの手に合わせるのだった。











 一方その頃、魔法学園理事長室では。



「ふむ……。まさか、そのような規格外の新入生が、な」

「はい。最高級の水晶を破壊し、フリーゲルを一撃で昏倒させました。秘めたる力は、この世界に並び立つ者がいないかと思われます」

「なるほど、な」



 学長――ダリアスに、一人の教員がテオドロのことを報告していた。

 長く蓄えた髭をなでながら、老齢の学長は目を細める。杖をついて立ち上がり、窓際へと向かう。そこからは学園全体が一望できた。



「しかし、この学園には才能満ちた学徒が大勢いる。素性知れぬ十二歳の少年が一人で生き抜くには、いささか厳しい環境かもしれぬな」

「左様ですね……」



 ダリアスは、星々の浮かぶ空を見てこう口にする。




「せめて、神々の導きがあることを祈ろう」――と。




 才能が潰されないことを、ただただ願って。

 彼はゆっくりと目を細めるのだった。


 


面白かった

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