最終話 旅たち
僕は今か今かと、二人が来るのを待っていた。
ダダルさんから連絡があって、ユイジュさんがチェトとサザナミを連れて家に来るって!
退院してから一週間。大人しく家に居て、旅立つ用意をしていた。母さんには、冒険者として世界を回って来ると話し、お金を送金するので父さんに戻ってくるように言ってと伝えると驚いていた。
「こんにちは。ユイジュです」
来た!
「チェト! サザナミ!」
二人とも毛につやがないけど、元気そうだ! 僕は二人に抱き着いた。
「おい! 俺には挨拶なしか?」
つい嬉しくなって二人に抱き着いたら文句言われちゃった。
『元気そうだな。安心した』
『よかったわ』
「うん。二人とも目が覚めてよかった」
もう一度ぎゅ~っと抱きしめた。
「もうこの子ったら。本当にすみません」
「いえ、これダダルさんからです。連絡用のマジカルコレクトです」
「え? こんな高価なもの……」
「片方は俺が持っているので、預かって頂けませんか? あとでダダルさんが説明をしに来ます」
うん? 離れていても母さん達と連絡を取れるの?
「そうですか。わかりました。お預かりします。ご迷惑をお掛けするかと思いますが、ロマドの事を宜しくお願いします」
「はい。ですが、彼のお陰で俺も助けられたんです……」
なぜかクルッとユイジュさんが僕に振り向いた。
「兄も目を覚ました。ありがとう、ロマド」
「え? 本当? よかった」
「力を合わせて頑張ろうな」
スッと手を出してきた。僕たちは握手を交わす。
「では、失礼します」
「母さん、行ってきます。父さんに宜しくね!」
「えぇ。立派になったって伝えるわ。気を付けて行ってらっしゃい!」
軽く手を振り僕たちは歩きだした。
「お前、荷物多くないか?」
「そう? 簡易テントに二人の布団でしょう。あと食料に……」
「まあ落とすなよ」
「大丈夫。ちゃんと縛ったから!」
「じゃ、大丈夫だな」
なんというか、すんなり認められるといつものユイジュさんじゃないみたいで、変な気分だ。
「ところで、腰にぶら下がっているフライパンみたいなのはなんだ?」
「あ、これ? チェト達のお肉を焼く為のフライパン。買ったんだ。でも入らないから腰に下げた」
「それ、いらないだろう! おいていけ!」
「え~! いるよ! だっておなかすかせたらモンスター生で食べちゃうんだよ? おなか壊すよ。せめて焼かないと!」
「だからチェト達は、生でも大丈夫だろうに!」
「大丈夫じゃないよ! ユイジュさんも見たでしょう。サザナミが小さくなったの!」
「は? あれって生肉を食べたからなのか?」
僕はそうだと頷いた。
『いや違うだろう』
『あなたと契約したからなのだけど……』
うん? 契約? 契約って何か約束って事? なんだっけ?
「はぁ……。わかったそういう事にするけど、そのフライパンは腰から外せ! 恥ずかしいだろうが!」
仕方がないので手に持つことにした。
「貸せ。俺の荷物に入れておいてやる」
「ありがとう! ユイジュさんってたまに優しいよね」
「……たまにってなんだ」
ため息交じりにそう言って、フライパンをしまってくれた。
『やれやれだ』
『何も変わってないわね』
『あぁ。最高だろう』
『えぇ、そうだわ。後でブラッシングしてもらいましょう』
「そうだね。じゃどこかで休憩して……」
「ブラッシングなら寝る前にしろよ」
「え? なんでわかったの? 言葉わからないんだよね?」
「二人の目がキラキラしている。そういう時は、ブラッシングの時だ。それだけはわかる」
二人の表情を読むなんてさすがユイジュさんだ!
「凄いね!」
『ユイジュめ。わし等の表情を読むとはやるな』
『気を付けないとね!』
チェトとサザナミは、きりりとした表情になった――気がする。
あぁ、楽しいな。やっぱりチェト達がいないとね。
これから僕の大冒険が始まる! ――はず。




