第36話 凄い羽根でした
「まったく。まあ一人で行ったのならそれはそれで一安心だが」
とユイジュさん。
「で、どうやってその巣を持って帰って来た?」
「だから袋に入れて持って帰って来たよ」
「誰が運んだんだ?」
「僕だけど?」
「じゃ、チェトが魔法でも使ったのか?」
「チェトはライトしか使ってないよ」
「「ライト!!」」
『それは内緒の話だろう!』
ダダルさんの質問攻めに答えていたら急に叫ばれた。チェトまで叫んでいる。ってあれ? ライトの事って内緒だったんだ。
「ほう、やっぱりただの犬コロじゃなかったか」
ダダルさんがチェトを抱き上げ、顔を近づけて言った。
『やはりバレていたか……』
「そうなんだ! チェトは、凄い犬なんだよ!」
「……俺は、それでも犬だと思っているお前に驚きだよ」
凄く大きななが~いため息をユイジュさんはついた。どうしてそんなため息つくんだ。
「で、話は戻すが、チェトの魔法ではないとすれば、スキルを使ったって事だな?」
「うん。何か色々覚えた」
「色々? どれくらい?」
「え? 数? えーと、1,2,3,4……」
「ちょっと待てそんなに覚えたのか?」
ダダルさんの質問に答えようと指折り数えていたら、ユイジュさんに聞かれてわかんなくなった。
「あーもう。そうだよ。出発してから10個ぐらい覚えたと思う」
『「「10個だと!』」」
うん? チェトも一緒に驚いている?
「もしかして変?」
「あのな。普通は覚えないから変も何もないだろう」
「あ、そっか」
ユイジュさんの突っ込みに納得です。
「それらを駆使して持って帰って来たって事か」
ダダルさんの言葉に僕はそうだと頷いた。
「じゃ取りに行った先の木に、この羽根が落ちていたって事か」
「うーん。もう一つの巣にあったんだ。なんか去年のもあるって言っていたから見てみたらあって。持って来ちゃいけないって知らなくて、返してくるからチェトを返して下さい」
「ほれ。別にチェトを奪ったわけじゃないさ」
と、テーブルの上にダダルさんはチェトを置いた。ぴょんとチェトは僕の膝の上に乗っかった。
「お帰り」
僕は、チェトを撫でる。
『ふう。やはりおぬしの膝の上が一番落ち着くな』
「そう?」
「和んでいるところ悪いが、話を続けるぞ」
ダダルさんに言われて、はいと頷く。
「それは返さなくていい。俺達が驚いたのは、普通は手に入らないものだからだ。羽根はあまり抜けないようでなかなりの値打ちのものだ」
「え? そうなの? でもそれ、チェトのおもちゃにする予定だったんだけど……」
「はぁ? おもちゃ?」
「おもちゃを別に買えばいい。だからこれを俺に売ってくれないか?」
うん? 売る?
「それ何に使う物なの?」
「魔物に受けた毒などを除去するお香になる」
「ダダルさん……それ、俺買えませんよ?」
って、ユイジュさんが困り顔なんだけど? どういう事? 買うのはダダルさんじゃないの?
「えっと。ダダルさんが買うんだよね?」
「俺というか、冒険者商会で買い取る。個人で買える値段じゃないからな」
「うん? じゃなんでユイジュさんが関係あるの?」
「別にないけど……」
と珍しくユイジュさんが暗い顔をしている。
「ユイジュの兄が……」
「ダダルさん!!」
「しかし、目の前にこうしてあるんだぞ」
「どっちにしても俺が手を出せる品物じゃない! 分けてもらえるお金もない!」
よくわかんないけど、ユイジュさんがほしいみたいだね。
「ねえ、チェト。あの羽根あげてもいい?」
『別にかまわん。われは枝で遊ぶ方が好きだ』
「ありがとう。それチェトいらないってさ。別に冒険者商会経由しなくてもいいんじゃない? ユイジュさんにあげるよ」
「お、お前何言ってるんだ! もう働かなくてもいいぐらいの値打ちだっていっているんだ!」
「あ、じゃこうしようよ。使って余ったら売ればいいんじゃない?」
「一度使用したものは、冒険者商会では買い取らないんだ」
「それに、個人で錬金を頼むのにも金が要る。どちらにしても貰ってもお香に俺は出来ない!」
「あ、じゃ僕が売ったお金で……」
「断る!! そのお金を返す宛てもない!」
うーん。なんかユイジュさんがかたくななんだけど?
「ところで、ユイジュさんはそれを何に使うの? 錬金って?」
「はぁ? 何もわからないで言うなよ!」
ダンとテーブルを叩いて、ユイジュさんが言った。なんか今回は怒ってる?
「あははは。さすがロマドだな」
「ユイジュ、ムキになるな。ちゃんと話した上で彼が決めるならそれでいいだろう」
って、居たんだというぐらい静かに聞いていたセードさんが言った。
そう言えば、ユイジュさんって借金もあるって言っていたよね……。
「お世話になってるし、ユイジュさんの力になりたいです。教えてください」
「……わ、わかったよ。はぁ……」
やっぱり最後はため息なんだ。




