20 イズミの願い 最終話
遂にここまで着ました。
これも読んで頂いた皆様のお陰です。
最終話宜しくお願いします。
カラナス王国王都シャシスに滅茶苦茶嬉しそうなシェルシアを残し
ミリニシアの自宅へ帰って来るとその入口前に誰かが頭を抱え込んでしゃがんで居るのが目に入って来た。
「エッ!誰?」
私の後ろに居るタルトを振り向くも判らないと横に顔を振っているし
セティア達も何が起きて居るか判らない様なので仕方なく私がゆっくり近づき
もう少しで手が届く所まで来るとその人物が突然顔を上げた。
「あっ!帰って来た~~!オルイド様~~~。」
しゃがみ込んで居た彼女は
私達を見付けると私の横を通り過ぎ
更に友達になると云って居た筈のタルトの脇を素通りしてオルイドに飛びついた。
「リーナ何でこんな所に?」
しゃがみ込んで居たのはオルイドに片思いをして居る
リーナ・ファラニナス・リシャール
あの男爵令嬢だった。
彼女は鼻水を啜りながら泣きじゃくりオルイドに抱き付いたまま
オルイドを見上げた。
「だって冒険者になった報告に来たら誰も居ないし
周りの人に聞いても知って居る人は誰も居ないし
ギルドに聞きに行ったら『ギルドに属す人の情報は教えられ無い』
と突っぱねられるし
暫く待って居れば帰って来るだろうと待って居れば待てど暮らせど一向に
帰って来る様子さえないし私は・私は・・・何か有ったかと思ってもう心配で心配で。
ずっとここでお待ちしておりました。」
そう云って泣き出したリーナだったけれどもオルイドは慌てる事無く落ち着いた様子で
彼女の両肩に手を添えそっと離した。
「・・・ん。判った。それよりもう少し離れて貰いたいんだが。」
「え~そんな~。やっとお会い出来ましたのに。」
「それとこれとは関係ない。前にも云ったが俺にはタルトが居る。」
オルイドに云われ仕方なくその手を離しオルイドから2歩程
離れるとオルイドの顔を見上げた。
「所でオルイド様一体何が有ったと云われるのですか?」
「兎に角家へ入れさせて欲しい、話はそれからだ。」
「あっあっ!ゴッゴメンなさい!私とした事が!皆様お疲れですものね。」
家の中へ入ると各自自分の部屋に荷物を置き1階の食堂兼リビングに戻って来るのを見計らい
私とタルトが紅茶を用意するのをリーナが手伝ってくれた。
こんな所は優しくて可愛い子なんだけれど若いせいか思い切った行動をする倍が有る。
さっきのタルトが近くに居るにも拘らずオルイドに抱き着いたりするのもその一つ。
羨ましいと云うか・・・。
そして皆が集まり私がカラナス王国の王都シャシスでの事を話すと
リーナは突然立ち上がり叫んだ!
「エッエッ~~!白銀の魔女様とお知り合いだったのですか~~!」
「そこかい!」
思わず突っ込んでしまったが普通世界中を巻き込む戦になりかけた事を驚くと思うんだけど
シフォンさんの事に食い付くリーナ。
そんなリーナが私達が帰ってから5日経ったこの日何故か同居をして居る。
いや、彼女が云うには冒険者になり嬉しくて私達の(特にオルイド)に報告に来ると誰も居ない。
始め簡単な仕事をして少ないけれどお金を稼いでは私達の家へ様子を見に聞いて居たけれど
一向に私達が帰って来ない事が気掛かりになり宿と私達の家の前を行き来する様になったけれど
しまいには宿代にも困りその宿を引き払い私達の家の前で待つようになったと云う。
時々ギルドの職員用のシャワーを借りたり仮眠用のベッドを使わせて貰ったりもしたが
それもそう長く続ける訳にも行かず
更に冒険者で身を立ててみせると家を出て来た手前男爵家に御金を借りる訳にも行かず
今空いて居る部屋、元シェルシアの部屋を貸す事になった。
元々少なかったけれどシェルシアの残って居る荷物は1階の使って居ない部屋にしまって有る。
何しろシェルシアは殆どの物を自分のポケットに放り込んで居たからね~。
そして新たな同居人が増えたその5日後朝食を済ませ一段落している時
家のドアをノックする音が聞えた。
『こんな時間に来客?ギルドには暫く仕事を受けないと伝えて有るし
既にカラナス王国の王都シャシスでの事は報告済み。
それはシフォンさんの報告とも一致して居ると聞いて居る。』
てっ!
私達はシフォンさんより早くシャシスを出てミリニシアに着いた翌日報告したのに
既にシフォンさんから報告を受けたナリエスのギルドからその旨伝えられて居たという。
シフォンさん早すぎ!一体どんな手を打った?
いや、流石シフォンさんと言うべきか・・。
あっそうそうお客さんを迎えねばと玄関のドアに手を掛け開けるとそこには思いがけない人が
ドアの外に立って居た。
「あっ!・・」
私は思わずその人の顔を見つめ固まってしまった。
「イズミ!誰?」
リビングから聞こえるタルトの声に我を取り戻しその人物に声を掛けた。
「ミナト、何故ここに?」
「イズミ、キミと共に残りの人生を過ごしたい。俺を・・俺と一緒になって貰えないか?
イズミ、キミが好きだ!」
「エッ!エッ!エッエエ~~!シッシフォンさんは?
それにだって!だって!
私に謝ってたじゃない、
なのに何故今頃??エッ何で?」
「イズミ、シフォンにはこの事をちゃんと話して来た。
前にも云ったけれど君が好きだ!確かにイズミがシフォンを気遣う気持ちは分かる
それを裏切るような形にさせてしまった事は謝る。
でも、そのシフォンにもキチンと話し判って貰えたんだ。それにこれ。」
私はテンパって自分自身何を云っているか判らない状態に陥っていると
ミナトはポケットから一通の手紙を私に渡してくれた。
それはシフォンさんから私に宛てた手紙。
その封を開けるとシフォンさんの優しい字で書かれた文字が書かれて居た。
『ミナトの話を聞いて彼の気持ちを尊重する事にしたわ。
イズミも彼の事が好きでしょ。
素直になりなさい。
それから私の事は心配しない様に
伊達に白銀の魔女を名乗って無いわよ。
イズミ幸せにね。
貴女の親友シフォンより。』
その他にも今迄の経緯が幾つか書かれて居たけれどシフォンさんは
私達を祝福してくれて居る事が判る手紙だった。
「・・・ミナト、本当に私で良いの?
だって初めて私にその話をした時私に謝ったじゃない。
あれって。」
「謝った事?あれはキミが怒って居ると思って。」
「怒る?何に?別にミナトに対して怒ってなんか無いのに?」
「イズミはシフォンの親友だろう?
その大事な友達の気持ちを裏切る形になる事を嫌って
怒って居るかと思って。・・元々俺シフォンと付き合ってたし・・・だから。」
「うん、それはシフォンさんの事を思えばそうだけど
私だっていけないと思いながらもミナトの事を好きになってたのは本当。
だからどんなに悩んだか判らないしシフォンさんとミナトの事を知ってたから諦めてたのに
ミナトは私を選んだんだのもの。
本当に私で?」
「イズミ!俺はキミが好きだこれはウソ偽りのない事実だし
それはシフォンも納得してくれた。だから俺をイズミの側に居させて・」
ミナトがそこまで云いかけた時私が中々戻らない事に心配になったタルトが迎えに来て
ミナトを見付けその場で立ち止まった。
「ミナト?・・イズミ!
そんな所で立ち話もなんだし中へ入って貰ったら?」
タルトのその言葉に長く玄関で立ち話をして居た事に気付き
急いで皆が待つリビングへ案内した。
ミナトをリビングに案内すると一応に驚いた様子を見せるニシアの風の面々と
誰だろうと興味深げに覗き込むリーナ。
彼女には『シフォンさんと一緒に行動をして居たミナト。
ナリエスの黒の魔術師』だと説明すると座って居た椅子から転げ落ちそうになる位驚いて居た。
「えっ!何でそんな有名な人が!
あの学校の初期生を洞窟崩落事故から救った英雄ですよね。」
「あっうん。そうよ。」
助けられたのは私達だけれどね。
それはまあ黙って居る事にした。
その後私達は付き合う様になり直ぐにシフォンさんへ
親友の証としてミリニシア伝統の5種類あるネックレスの中で
薄いブルーの石の付いた
『親友・永遠の友』の意味合いの有るネックレスを送った。
その後私とミナトは結婚。
式典にはシフォンさんも参加してくれたけれども
シフォンさんは私とミナトが付けていた
『貴方の全てを受け入れます。永遠の愛』
と云う意味の石の付いた
シフォンさんに送ったネックレスと同種のネックレスを見ると
何かを狙う様な目つきに変わり握りこぶしを作るのが見えた。
その視線がミナトに注がれると私は慌てて
すかさず2人の間に入りそれを阻止した。
私が思うにおそらく以前ミナトを落とした
ベアハッグ的な物をやろうとしていたに違いない。
シフォンさんが何をしようとして居るの位私だって判る!
と云うかシフォンさん表情に出過ぎ。
私が2人の間に入るとシフォンさんは諦めたらしくその握りこぶしから力を抜き
今度は私とミナトに握手をしてくれた。
私には優しくミナトには少々強め?
ミナト真面に痛がっていたけど
シフォンさんの気持ちも分からなくも無いので
ミナトの骨も折れて無いしOKとしよう。
私と結婚したミナトは以前から帝国とナリエス両国から
ミリニシアへ協力依頼受けて居た通信機の音声変更に成功して
私達はある程度裕福な生活が出来る様になった。
その後更にその通信設備を電話と名付けたミナトは今度は携帯出来る様に小型化への研究を始めた。
既にスマホを知って居るだけにその利便性を考えたらどうしても欲しくなるアイテムの一つ。
私達が結婚すると皆それぞれ私の家の近くに各自の家を建て始めた。
オルイドは念願かなってタルトと結婚して私の家の隣に。
セティアとカリナは始め近くに家を建て一緒に住んで居たけれど
セティアが結婚するとカリナは新たに私の家を挟んで反対側に比較的大き目の家を建てた。
カリナはそれよりも3年ほど遅れて無事結婚。
その時の喜びようは今でも目に浮かぶ位浮かれはしゃぎまわって居たのを
今でも容易に思い出す事が出来る。
そして途中から同居を始めたリーナは何故か未だ私の家に居る。
付き合っている人は居る様だけれどもこれで良いのか?
まあ家事を手伝ってくれるので助かるので私は良いのだけれどね。
そうそう、そして私は可愛い娘を2人授かった。
名前は長女をサクラ次女をツバキと名付けた。
1つ違いの娘達は何事も2人でこなす程何時も仲良く遊んで居る私の宝物だ。
そして私達が住み始めたこの屋敷はシルクのお陰で
常に穏やかで気持ち良い風が吹いて居る事から
『風の館』等と一般にも知られる様になった。
しかもそれはナリエスにもその名が知られて居る様で
『ミリニシア神皇国 ミリニシア 風の館』
でシフォンさんから私に手紙が届いたと驚いて居た位だ。
それからは年に一度私達ニシアの風メンバー家族とリーナが集まりパーティをする様になった。
その時ばかりは10人以上で食事が出来る筈のリビング兼食堂が手狭になり思いっ切り広げたが
結局そのリビングを使うのは年に一度そのパーティの時だけになって行った。
何しろ私たち家族だけで使うには広すぎるので別に家族で使う食堂を建てちゃったのでね。
でも年に一度仲間全員で集まるパーティは冒険者を引退した後もずっと続き
何時の間にか私達に無くてはならない行事の一つになって居た。
その後イズミは45歳でこの世を去りその間際契約の切れるシルクと
2人っきりになりなりたいと人払いをして何か話しこんで居いた。
「シルク今迄有難う。ただ一つ私の我がまま聞いてくれるかな?」
「私に出来る事なら聞いてあげる。だって私の唯一の契約者であるイズミの願いだもの」
「有難う。それじゃあ・・・・・・」
そしてイズミは多くの家族仲間に看取られて旅立って行った。
そして200年後恒例のパーティが代を重ね風の館でイズミの子孫と
リーナ、カリナ、セティアの子孫がタルトとオルイドが先頭に立つようにして続けられていた。
長く続くこのパーティは周りからは電話を開発したミナトをきっかけに有力者が集まるパーティと
嘯く人も居たが実の所集まるのは元ニシアの風メンバーの子孫とその後結婚したリーナの子孫達ばかり。
彼等が年に一度集まるこのパーティは先祖を敬いその子孫達との親睦を深める
大切な物へとなって居た。
そしてこの日も穏やかな風の吹く中
そのパーティに参加する為に多くの人がパーティ会場に集まり出していた。
イズミの末裔になる5歳の女の子とその母親はパーティ会場隣の庭の見える準備室で
来客の合間を利用して休憩をして居る所だったが
その5歳の女の子が何かに気付いた様にその庭の一角をじっと見つめて居た。
すると間も無く又パーティ参加の来客が見えた為母親がその子を残し母親がその部屋を出て行った。
「ママは迎えに出るからここで大人しくして居なさいね。」
「はーい」
その子はやはりその一角を見つめたまま返事をすると何かに誘われる様に
その部屋から庭へ出るとその一角の前まで歩み寄って行った。
「お姉さん。ずっとそこに居るけどパーティに出ないの?」
「フフ、貴女私が見えるのね。名前は?」
「私イズミよ。」
「イズミ、そう。良い名前ね」
「うん。私の大おばあ様とね同じ名前なんだって。」
「そう、イズミは大おばあさまの事何か知ってるの?」
「え~っと。何でも精霊使いで、風の精霊さんと一緒にお仕事していたんだって。」
「良く知ってるわね。良かったらイズミと同じ名前の大おばあさまの事もっと知りたくない?」
「お姉ちゃん知ってるの?」
「良く知ってるわよ。」
「お姉ちゃんおしえて!ママったら精霊さんとお仕事して居たとしか教えてくれないんだもん。」
「ええ、良いわよ。これからイズミの事を話しましょうか。」
「有難う。所でお姉ちゃんの名前何て言うの?」
「私の名は『シルク』風の精霊『シルク』よ。
イズミとの約束で貴女達の事を何時も見守って居る精霊覚えて置いて。」
「うん。シルクお姉ちゃん。」
「それじゃあイズミの事話しましょうか。」
「ハ~イ。」
ミリニシア神皇国のミリニシアでは何時までも心地良い風が吹くその館を風の館と呼ぶ
その館では風の精霊使いイズミの事を何時までも語り継がれて行った。
今迄ご愛読有難うございました。
全84話ですがこれで最終話になります。
ここまで来られたのも読んで頂いた皆様のお陰です。
少し間を置いて次回作を又投稿させて頂きたいと思いますので
その時は又宜しくお願いします。
7/4 一部誤字修正しました。




