28 神殿の女神
馬車置き場から綺麗に整備された真っすぐな道を徒歩で進むと間も無く久し振りに見る神殿が現れた。
イズミ達が開け放たれた神殿入り口から中へ入って行くと数人の女性の姿が見え
その一人にシェルシアが巫女に会いたいと伝えると少し間を開けて。
「申す分け有りませんが巫女様は現在お祈りの最中でお会いする事が出来ません。」
それを聞いたシェルシアの表情が変わった。
「キプリニシア、そう来たか。」
一言呟くと直ぐにそのまま神殿の奥へ歩き始めた。
それを見たその女性はシェルシアを引き留める様に前に立ちはだかった。
「ですから今巫女様はお祈りの最中でお会いになれないのです。」
「大丈夫、理由はちゃんと知ってるから。心配しないで」
「そう言われましても、ここから先へ行かせる事は出来ません。」
「んもう、しょうがないわね。貴女は真面目に働き過ぎ少し休んだ方が良いわよ」
そう言うと彼女に
睡眠魔法を掛けてそこにあった椅子に座らせ寝かせてしまった。
「シェルシアやり過ぎじゃない?」
「大丈夫よ10分もすれば目が覚めるから。」
イズミが注意するがシェルシアは悪びれずそのまま更に通路を進み
奥まった所に有るドアに手を掛け勝手に入って行った。
イズミ達は心配しながらもシェルシアの後に着いて行くと
その部屋の中に居た1人の女性が此方を振り向き一瞬驚いた様子を見せたが直ぐに
その姿勢を正しシェルシアの方へ歩み寄って来た。
「どちら様でしょうか?」
「貴女がそれを言う?巫女様」
お道化た様子でシャルシアが言うと
巫女と呼ばれたその女性も納得した様に
「貴女がシェルシア様ですね。本当ならお会い出来ない筈でしたが
ここまでいらしたのでしたら仕方ありません。どうぞこちらへ」
そう言ってシェルシアとイズミ達に椅子に座る様に勧めて来たので
勧められるままその席に座るとその前の席に巫女が腰かけた。
すれとほぼ同時にシェルシアが天に向顔を向け。
「キプリニシア様聞いて居られますよね。少々お聞きしたい事が有りますので宜しければ
出て来て貰えませんか?」
セティア達がその言葉を聞いて慌ててシェルシアを押さえようとしたが既に
遅く巫女の後ろに人影が現れた。
イズミはその姿を見て冷や汗が出る思いがした。
『本当にキプリニシア様が来た。シェルシア下手な事言わなければ良いけど』
そう思いつつもその様子を興味深げに見守っていた。
「シェルシア貴女は天界を追放された身ここに来る事自体おかしな事ではありませんか?
それに石頭で頑固な私に会いたくないのでは?」
「エッ!聞いてたんですか?」
「貴女は私が何も知らないとでも思って居るのですか?」
「まあそうですよね。うっうん。」
キプリニシアのキリっとした表情と静かながらもその言動に怒りの様な物を感じたが
シェルシアは無理やり自分を納得させ直ぐに開き直り椅子から立ち上がった。
「キプリニシア様にお聞きしたい事が有ります。」
「魔族の事ですね。」
「はい、彼らの今の動向等詳しい事を知りたいのです。」
「それは教えられません。それは貴女も知ってる筈でしょ。」
「何時もの自分達で解決しないと未来が無いと言う事ですよね。でも、今私はその当事者であり
被害を被ろうとして居る仲間が居ます。彼女達に危険が及ぶと知り私は自分の出来る限りの事をしたいのです。
その為にはキプリニシア様の助言がどうしても必要なのです。」
「シェルシアその気持ちが有れば必ず解決できますよ。」
「そうやって又誤魔化すんですね。お願いです。仲間の命が掛かって居るんです。
彼等が何処で何をしようとして居るのか彼等の事を教えて下さい。」
「ミリニシア様は貴女を自由にさせて置く様に私に申されました。しかしこの事は
ミリニシア様の意に反します。人は自分の力で困難に打ち勝ってこそ先へ進む事が出来るのです。
今回もその一つに過ぎません貴女の為だけにそれを破る事等出来る分けが無いでしょ!」
最後の言葉は少しきつめにシェルシアに放たれた
しかしシェルシアは珍しくそれにも屈せず更に詰め寄った。
「キプリニシア様!何時も貴女は、人の進歩には犠牲は必要と言われてました。
確かに貴女の立場から見ればそうでしょう。
でも私は仲間に危険が及ぶのを知っておきながら人の進歩の為と
そのままにして置くほど出来た人間では有りませんし
又そうしたいとも思いません。
今回の事でほんの少し人の進歩は足踏みするかもしれませんが
それは取り戻せる筈です。
でも彼女達の命は取り戻す事は出来ないんです。
今、私にはその進歩よりも彼女達の方が大事なんです!死なせたく無いんです!」
シェリシアの必死の訴えに暫く沈黙が続いたがキプリニシアが穏やかな顔に戻り
シェルシアの顔を少しの間見つめるとようやく口を開いた。
「今ミリニシア神皇国に居る魔族は6人全て人族に化けてミリニシア首都内に潜り込んで居る筈主に指揮を執って居るのは片方の角が折れてるジャシルと言う男が泊まってる宿はミリニシア東部の安宿だったかしら?・・・どうも最近独り言が多くなって困るわ。あっ今のは独り言なので忘れてね。
あっ!それから誰が石頭で頑固だったかしら?シェルシア?」
そう言って笑いながらキプリニシアは姿を消した。
「フハ~緊張した~。シェルシアがキプリニシア様を怒らせるんじゃないかと思って心配してたんだけど
何とか聞き出す事が出来たみたいね。」
イズミがシェルシアに安堵の表情を見せながらそう話すと突然そのシェルシアが
膝から崩れ落ちた。
「あはは、今になって膝が震えてる。やっぱりキプリニシア様は・・・・黙って置こう・・うん」
一瞬周りを見渡したシェルシアはそこで言葉を切るとしゃがみ込んだまま
片手をイズミの方へ突き出すと笑いながら
「イズミ腰が抜けて立てない。手を貸して。」
「本当無茶をするんだから。」
イズミがそのシェルシアを肩を貸して立たせるとセティア達と一緒に座っていたオルイドを見つめると
イズミに肩をかりたままその場に立ち。
「オルイド、タルト達を守ると言ってたんだから協力者が居るんでしょ。まずはその人達と作戦会議ね。
今はまだ私達が彼等の宿や人数等知って居る事等思いもしないでしょうから
今の所私達の方が優勢だけど何時それが引っ繰り返されるか分からない。
これは私達かその魔族どちらが先に動き出すかの勝負よ。直ぐその仲間の所へ行きましょう。」
「ああ、分かった。彼等は既にミリニシアで待機してる」
「よ~~ししゅっぱ~~つ!うっ腰が・・イズミ馬車までお願い・・」
「ハイハイ。シェルシア婆さん参りましょうか。」
「婆さんは、酷い!まだこんなにも美しく可愛らしい私が御婆さんだなんて!
ちょっと腰に力が入らないだけだのに。」
「でも、年はこの中で1ばっ・・・ウッ・・くっ首は反則・・」
「フフフ、うら若きこの私に年の話しは禁物よ。」
「うら若きって・・・」
シェルシアに首を絞められたイズミがシェルシアのその不適な微笑みに
なにかを感じ言葉を切ると突然シェルシアがおぶさって来た。
「さあこのまま馬車まで私を負ぶって行きなさい。私頑張ったんだからその位良いでしょ。」
「良いけどシェルシアもう少しダイエットした方が良いんじゃない?」
「重くな~~い!ハイ出発!出発!」
その後何故かハイテンションのシェルシアを先頭にミリニシアへ向かって馬車を走らせて行った。




