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最弱の魔王  作者: よーき屋支部
第四章 戦乙女は戦わない
33/38

 脳筋と運動音痴

 新章開始です。

「おっす。やってる?」


 キイキイガラガラと建付けの悪い引き戸を不景気そうに鳴らしながら、黒部は馴れ馴れしい挨拶を口にした。耳をつんざく不協和音に眉を顰めるのもいつものことだ。さほど儲かっちゃいないのは理解しつつも、いい加減取り換えて欲しいと心の中で愚痴りながら扉を閉め、それほど広くない室内を見回した。

 とはいえ、顔を出さなかったのも数日程度だ。目に見えて何かが変わるはずもなく、感傷に浸るほどの懐かしさも感じない。相変わらず辛気臭い場所だなと独り言ち、入口にほど近い場所で雑誌を読む男に目を向けた。

 年の頃は五十ほどで、白髪交じりの黒髪を総髪にまとめている。落ち着いた柄の開襟シャツとGパン姿の、細身の中年男性だった。インターホンのつもりなのか、軋む引き戸の音から来客に気づいた男が顔をあげる。こちらの姿を眺めたところで、ニイと人の悪そうな笑みを浮かべた。


「ヤスじゃねえか。ゲームはどうした? 仲間の女にフラれたか?」


 数日ぶりに聞く声には、訪れた黒部をからかうような色が多分に含まれていた。なんとなく馬鹿にされているような気がして顔をしかめるが、それも一瞬。慣れた様子で流しながら、軽く要点のみを伝える。


「今日は早めに切り上げただけ。たまには身体も動かしとかねえと、すぐ鈍っちまうから」


「そうか。打ってくか?」


「おう」


 短く答えてさっさと奥へと引っ込んでいく。相手も黒部のそっけない態度に気分を害した様子もなく、咥えていた煙草をもみ消すと椅子から立ち上がった。



 十セットを打ち終えて、黒部がふう、と息を吐く。悪くない感触だ。ここ数日はボールではなく椅子を友達に過ごしていたため、もっと鈍っているものだと思っていたが、これならば十分合格点は与えられる。鈍った勘を取り戻すため、今日は徹底的に己を苛め抜こうと思っていた。それが杞憂に終わり、心に余裕が生まれたからか、こちらを観察している先ほどの男性―――通称〝おっさん〟に声をかけた。


「他の人は?」


「揃って合コンだ。もっとも、一人はツレにバレたがな」


「うわ……今夜は色々大変そうだ、皆も誘わなきゃいいのに」


「アレがいると捗るんだとよ」


 黒部の脳内に、涙目の青年が金髪の美女に引き摺られていく姿が浮かぶ。もはや見慣れた光景ではあるが、誘う方も誘われる方もいい加減に学習しろよと思わなくもない。全く成果の上がらない合コンも含めて。


「おっさんはいかないの?」


「生憎、俺は女に困っちゃいねえんでな」


 言いながらにやりと笑うおっさんを見て、それもそうかと納得する。このおっさん、時折女物の香水の匂いを纏っていることがある。それも日によって違う香りを漂わせているのだ。ワンチャン女装癖のある可能性もあるが、これについては考えない方がお互いの精神衛生上宜しいだろう。

 言われてからよくよく観察してみると、おっさんの見てくれは悪くない。加齢によって刻まれた皺や白髪交じりの毛髪こそ誤魔化せないが、それが渋みを増している。引き締まった肉体と、吊り上がる口角と共にスウと細められる切れ長の目が、危うさを感じさせる影を纏い、それがまた魅力となっているのだ。

 黒部がおっさんのスペックに関心していると、またもや人の悪そうな笑みを浮かべたおっさんが黒部に問いかける。


「そういうお前はどうなんだ?」


「何がだよ」


「まともにゲームできそうにねえとか言ってた割にゃあ、しっかり女ひっかけてヨロシクやってんじゃねえか。うまくいってんのか?」


 こういった話題を振られると、とたんに困ってしまうのが高校生だ。同年代との会話に上がるそれに比べ、年上の男性から聞かされる話題は非常にエグイ。生々しさとリアルな質感が、耐性を持たないこの年代のデリケートな部分を刺激してやまないのだ。恋愛観が小学生とさほど変わらない黒部には特に顕著で、うっとおしそうに手を振りながら顔をそむけた。


「そういうんじゃねえって。そもそも俺じゃ釣り合いが取れてねえし……上手く言えねえけど、たぶん違う」


「どうだか」


 からかい交じりに述べるおっさんと、今度は分かりやすく顔をしかめる黒部。それを見てからからと笑う姿を見て、これ以上は語ってたまるかと口をつぐんだ。ひとしきり笑った後に、流石にこれ以上からかうのはマズいと判断したおっさん。すまんすまんと軽く謝って話題を変えた。


「そんで、仲間は増えたのか?」


「おう。一人増えて、今は三人でパーティを組んでる」


「女か?」


「……だったらなんだよ」


 比較的会話に乗りやすいものを選んだためか、それとも新メンバーの加入を誰かに語りたくてしょうがなかったのか、簡単に乗っかってくる黒部はしょうがないなあもう。

 おっさんも相変わらずチョロいなと内心呆れながらも、再びへそを曲げかけている黒部に続きを述べた。


「いや、だろうなと思ってな」


「だから、なんでだよ」


「血だな。俺は勿論、兄貴もモテちゃいた。義姉(アネキ)以外にゃ見向きもしなかったがな」


「……そうだったんだ」


 どこか懐かしむような目を向けてくるおっさんの姿に、噛みついていた黒部の勢いはしおれていく。

 何を隠そう、今黒部におっさんと呼ばれている男こそ、現在アパートで一人暮らしをしている黒部の後見人である。そして、黒部の父の弟、実の叔父にあたる人物なのだ。

 彼が今の生活に落ち着くまでに色々あったが、これまで自分の親について語られることはなかった。おっさんも話そうとはしなかったし、黒部もまた聞こうと思わなかったからだ。

 これまで暗黙の了解で決められていた不可侵が破られたことで、この場を沈黙が包む。おっさんもこれ以上を自発的に語る気はないようで、ゆっくりと紫煙をくゆらせる。黒部は何を思うのか、表情からは伺えない。

 数分の沈黙の後、しんみりした空気を払拭するよう、おっさんは白髪交じりの総髪をぶっきらぼうにかいて告げた。


「……おら、もう一セット行ってこい」


「え?」


「鈍っちゃいねえが、あくまで感覚の話だ。しっかり身体は固まっちまってる。感覚に身体がついてこれなきゃ意味ねえんだよ」


「……おう」


 複雑な関係にある二人。多くを語らず、黙々と身体を動かす黒部。おっさんもただ黙ってそれに付き合う。不器用な男達の静かな夜は、こうして過ぎていった。





 翌朝。


 浮暮波が教室で死んでいた。


 いや、あくまで比喩表現だが、呼吸すら億劫そうに机へ突っ伏す彼女はピクリとも動かない。顔に留まらず机すらも覆い隠す黒髪は異様という他ない威容を称えていた。


「黒部さん、これはどういったことですの?」


 そしてその横には、額に青筋を浮かべた紀久淑が仁王立ちし、黒部を見下すように見上げていた。


「今日よりランニングを始めるというお話は聞き及んでおりました。ですが、無理はさせるなと申し上げましたわよね」


「……はい」


 いつも通りの挨拶を述べた黒部も、紀久淑の放つやんごとなきオーラを眺めて顔を引きつらせる。とりあえず正座しておいた方が良いのではないかと膝を曲げたところで、紀久淑から状況の説明がなされた。


「ある程度の消耗は考慮に入ってはおりましたが、まさかここまでとはと思い、今日のメニューをヒアリングしていたのです。すると、力づくで汲み敷かれ、嫌がる彼女へ無理矢理迫り、無理だと言っても放してもらえず、挙句最後まで……とわたくしに伝えたのち、果てました」


「悪意しかない」


 先にネタばらしをしておくと、此度の騒動の原因は些細なすれ違いに端を発している。試練(浮暮波視点)を乗り越え、まさしく満身創痍の体で登校してきた浮暮波を見て、大いに慌てた紀久淑。

 すわ何事かと事情聴取を行うも、息も絶え絶えな浮暮波はまともに答えられるコンディションになく、断片的な単語をただ羅列することしかできない。ここで悲劇を生んだのが、浮暮波が活用している独特な言い回しであった。

 日頃から詩的な表現を好む浮暮波の翻訳回路が、まともに頭が回らない状況下で正常に働く筈もない。それどころか、直近で乗り越えた地獄の特訓(浮暮波視点)に引っ張られワードセンスが暴走し、剣呑な単語ばかりが無意識下で出力されてしまったのである。

 結果、過保護モードが発動した紀久淑はこれを早合点し、足りない単語を有り余る想像力で補った結果生まれたのが、先の起訴状読み上げである。これはひどい。


「初日から根を詰めても長続きしないと申し上げていたのは、ほかならぬ黒部さんでしたわよね?」


「はい、確かに申し上げました」


「だから、明日はストレッチと、軽いウォーキングから始めようと思う。いいな? と申し上げていたのも、黒部さんだったと記憶しております」


「一字一句間違いなくそう申し上げました」


 勘違いが止まらないお嬢様と、勢いに呑まれて流されている黒部。事態を収拾すべき浮暮波は、意識を空の彼方へはばたかせている。お陰ですれ違いは加速するばかり。当然、クラスメイトは我関せずだ。とはいえ、司法は公明正大をうたっている。ここで検察兼裁判長(紀久淑)から、被告兼弁護士(黒部)に発言権が認められた。


「誤解のなきよう申し上げておきますが、黒部さんに限ってこのような凶行に走るとは思っておりません。ですが、ほかならぬ浮暮波さん自らが訴えるところを無碍にもできません」


「ああ、よかった。そういう人間だと思われていたら、多分俺立ち直れなかったわ」


「何をおっしゃいますのやら。わたくし達は、仲間ではありませんか」


「おう……おう?」


 いい雰囲気の言葉に頷きかけて、咄嗟に踏みとどまる。何が何やらわからなくなってきたが、何をおいても正しい状況説明は必須だろうと頭を切り替えた。


「では、黒部さんの言い分をお聞かせくださいな」


「つっても、特におかしなことはしてないと思うんだけどな」


「なるほど。では、先程浮暮波さんが述べていた、力づくで汲み敷かれたとは」


「んー……たぶんストレッチじゃねえか? 浮暮波さん身体が硬いどころの話じゃねえから、後ろから押したんだよ」


「では、無理矢理迫るというのは」


「前に逃げようとしたから、がっしり固定してた。風呂上がりのストレッチは今後の必須科目だわ」


「無理だと言ってもというのは」


「ストレッチ終了時点で死にかけてたからな。そこで切り上げたんだけど、せめて家までは歩いて帰れと」


「なるほど、これは……無罪ですわね」


 逆転無罪。冤罪ダメ、絶対。

 みんなが幸せになったところで、空中散歩と洒落込んでいた浮暮波の意識も戻ってくる。遅いよ。

 酷く億劫な様子で顔を上げた彼女の目に映ったのは、攻守逆転。平謝りするお嬢様と、負けじと頭を下げる三白眼の姿だった。攻守逆転していないな、これ。



「……あと、運動が絡むとスパルタになっていたかもしれん。ごめん」


「い、いえ……黒部さんがいなければ、分を弁えず、無茶なメニューを敢行した挙句、どこかで一人倒れていたに違いありません」


 話が戻って、というか正されて。三人は改めて今朝のフィードバックを行っていた。


 目下課題となるのは浮暮波をスタートラインに立たせること、つまりはストレッチの完遂である。想定をはるかに超えた運動音痴ぶりに、メニューは下方修正の極みへと達した。これまで彼女はどうやって生きてきたのだろう。

 ただ、これに関しては先に黒部が述べたよう、自宅でのトレーニングにかかっている。継続は力なりということで、黒部監修の下特別メニューが組まれるはこびとなった。

 そこで問題となったのが、黒部の性格だった。こう見えて、黒部は割と体育会系思考なのだ。アバターの動きを見て分かるように、黒部自身の運動神経は割と高い。生身でバク宙をできる高校生の割合を考えると、相当高い水準にあるのだ。

 その肉体を形成したのが、日々の運動とトレーニングである。そのため、日頃から強い負荷をかけることに慣れている彼は、やればやるだけ身体は強くなると本気で考えていた。

 何が言いたいのかというと、彼の考案したメニューをこなすのは、浮暮波はおろか、およそ一般の女子高生がこなせるような代物ではなかったのだ。


「……わたくしも参りましょう」


 書き出されたメニューから迸るマッスルを眺めて、紀久淑が参戦を表明する。彼女の内に眠る冒険者魂が刺激されたわけではない。黒部の領分ゆえに一任していたが、彼をトレーナーに据えるには身近な物差しが必要だと考えたのだ。

 比較するまでもなく小柄な自分では正確な指標にはならないだろうが、一般的な女子高生の体力をある程度把握させておかないと、今後困る。自分達も、黒部自身も。

 それに、万一の送迎などを考えると、自身の目が届く範囲でトレーニングをしてもらったほうが良い。今日のような行き違いも防げる。加えて、友人と朝からランニングという響きが、ちょっと楽しそうだなと思ったのもあった。

 それを聞いて縮こまってしまったのが浮暮波だ。ただでさえ黒部を巻き込んでしまっている現状、紀久淑にまでご足労願っては己の立つ瀬がない。


「紀久淑さんにまでご迷惑をおかけするわけには……」


「いえ、わたくしもエクス・マキナ(アバター)のスペックを十全に発揮できているわけではございませんので。それに、熱くなった黒部さんのストッパー役も、必要ではありませんか?」


「返す言葉もございません……でも、真名ってあれ以上早く動けるのか?」


 高いAGIを誇るエクス・マキナにも限界はある。黒部の疑問ももっともだろう。事実、彼女のセンスに小柄な体格も相まって、真名の機動力は同レベル帯においてはトップクラスの性能を誇っている。これ以上のスペックを持っているとしたら、エクス・マキナを捉えられるアバターは存在しなくなってしまう。バランスブレイカーも甚だしい。

 当然、彼女もそれは理解している。いまだ己の意識に身体が追い付かない感覚を覚えながらも、これはレベルと共に改善されていくだろうと慮外に置いていた。なので、紀久淑の狙いはまた別のところにあった。


「少し、挑戦したいことがありまして。未だお見せできるような代物ではありませんが、いずれお披露目いたしますわ」


 彼女にしては珍しい、お茶を濁すような物言いに首をかしげる二人。暫し考え込むが、彼女なりの考えがあるのだろうと黒部は笑顔で、浮暮波は恐縮した様子で首肯した。


「んじゃ、明日からヨロシク」


「お付き合いさせてしまい、申し訳ありません」


「わたくしも混ぜて頂きたいと思っただけですわ。ご承諾くださり、感謝いたします」





「俺、壁役やろうと思う」


 時間は飛んで昼休み。場所を部室棟の一室へ移した三人は、食事の摂取を生身に任せてログインしていた。ある程度人数の揃ったパーティであれば、昼休みの短い時間にクエストをこなすことも可能ではある。しかし、そうはいかないのが底辺プレイヤーの悲しいところ。そのため本日は、移動に割く時間を惜しみ、街の中で簡単に行えるクエストを受注した。通称〝バイト〟と呼ばれるものだ。三人揃って単純作業に勤しむ中、クロベーが呟いた。

 それを聞いた真名が、可哀相なものを見るような目を向ける。アリアも作業の手を止め、まじまじと彼を見つめている。


「文化祭はまだ先だと記憶しておりますが」


「なにもそんなに自分を卑下なさらなくとも……」


「もうちょい夢のある配役にしてくれてもいいんじゃないかな? ってそうじゃねえよ。タンクな、タンク」


 年に一度のお祭りに、モブ役で演劇に参加することが決定しかけた黒部。的外れなツッコミを返しつつも話を戻す。

 唐突な話題にピンと来ていなかった二人も、漸く黒部の言わんとしているところを理解した。しかし、表情は相変わらず優れない。


「腰巻一枚で宣ったところで、世迷言にしかなりませんわよ?」


「分かってる。ただ、ウチに足りないものの中で、俺にできそうな役割はそれしかねえんじゃねえかって思うんだよ」


 オークというアバターは、物理戦闘能力特化と言っても差し支えないステータスをしている。高いSTRのお陰で思い武器や防具を装備でき、VITやHPも十分にあるので経戦能力も高い。

 なので、これまではアタッカーの二枚看板でパーティを回していたのだが、アリアが加わったとなるとそうはいかない。ヒーラーが敵の攻撃にさらされないよう守りながらの立ち回りが必須となり、結果二人のDPSが格段に低下したのだ。


 勿論、これは悪いことばかりではない。前にも述べたよう、回復役が存在することで戦闘が、ひいては収支も安定するからだ。特にこのパーティにおいては、クロベーが落ちるか否かの玉砕戦法を採用していた都合上、今後アリアなしの運用は考えられないと言っても良い。

 とはいえ、安定した収入を確かなものとするには、アリアを庇う壁が必要となる。この先真名が速度に特化したビルドを組んでいく以上、長所を殺すような選択はできない。互い違いにアリアを庇っていては非効率この上ない。であれば、既にアタッカーとしての道が閉ざされているクロベーがこれを担うのが妥当なのだ。


「むー……」


 語られた理論を理解しつつも上手く飲み込めないのか、真名が唸る。アリアも気持ちしゅんとしている。

 ややあって、真名が渋々といった様子で頷く。


「…分かりましたわ」


「私も頑張って回復します」


「おう。頼むわ」


 ふんす、と鼻息荒くガッツポーズするアリアの姿に微笑ましさを覚えながらクロベーも頷く。

 ここで会話を切り上げようとしたのだが、これだけは言っておきたいとばかりに真名が切り返す。


「ですが、問題が一つございますわ。アタッカーを担うのがわたくし一人では、少々心許ないですわね」


「あー……俺が二役こなせば」


「黒部さんが〝黒豚〟でさえなければ、一考の余地もありましたわ」


「ホントそれな」


「あ、あの、クロベーさんが黒豚でなければ、こうしてこの地を踏む日は訪れませんでしたので、私としましては、少しだけ、感謝しております……黒部さんからすれば、噴飯ものの発言とは存じておりますが」


「そうですわね……申し訳ございません、失言でしたわ。忘れてくださいな」


「いや、これに関しては痛し痒しっていうか、それは言わない約束でっていうか」


「……ふふっ」


「ええ、言わない約束、ですわね」


 照れくさそうにはにかむ三人。互いに足りないものを持っているからこそ、申し訳なく思うし、感謝もする。

 何ともこそばゆい感覚を払拭するよう、真名がコホンと咳ばらいを打つ。そのまま二人を見回すと、瞳をキュピーンと光らせた。そんな表情差分もあるのか。


「となれば、やるべきことは一つですわね」


「……やっぱそうなんの?」


 既視感を覚える流れにクロベーが露骨に嫌そうな顔をするも、スイッチの入ったお嬢様は止まりそうにない。これまでの流れから意図を察したアリアもまた、苦笑いを浮かべるよりほかなかった。


「アタッカーを、迎え入れましょう」

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