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最弱の魔王  作者: よーき屋支部
第三章 小人の祈りに想いを重せて
23/38

 採集クエスト

 無事にパーティ申請を終えた三人は、北地区中心部にある大きな教会の前に来ていた。


「すっげえな」


「ええ、思わず言葉を失ってしまいますわ……」


「ファンタジー世界においても、宗教施設が放つ荘厳さというものは、普遍的なのですね……」


「信仰心は、ファンタジーの垣根をも超えてみせるのですわね」


「え、えっと……すっごいな」


 約一名語彙力が追い付いていないが、皆一様に感動しているようだ。


 眼前に聳える建造物は、中世の欧州建築によくみられる鋭角で縦に長い尖頭アーチと、精緻で複雑な彫刻が見事なゴシック調。一ドットの狂いもなく組み上げられた芸術品は、グラフィックデザイナーがこれ一つにどれだけの時間を割いたのか心配になるくらい本気で作りこまれている。


 建物だけではなく、石畳の広場や石像、果ては門に至るまで、周囲のありとあらゆるものが白一色に統一された光景は、宗教施設特有の神聖さを醸し出す。


 神々しくも冷たい印象を与える外観に親しみやすさを与えるためか、青々とした草花が庭のあちこちを彩り、確かな生命の息吹を振りまいていた。


 内装も豪華絢爛を極めているであろうことは想像に難くないが、残念ながらこの先はアリア一人で向かう運びとなっている。


 なぜならばこの教会こそが、僧侶の職業に就くために存在している施設だからだ。



 〝エスタ・キャピタル大聖堂〟。



 街の名を冠する巨大な宗教建築物は、回復職を目指す駆け出しプレイヤーを迎え入れんと、その門戸を大きく開いていた。


「んじゃ、ここでいったんお別れだな」


「また後でお会いしましょう」


「はい」


 名残惜しそうに別れを告げる三人であるが、こればかりは仕方がない。クロベーと真名は、()()()()()()()()()()()()()


 前にも述べたとおり、オークに魔法職の適正はない。エクス・マキナもまた、魂なき機械人形は神の摂理に逆らう存在として、神職からは異端者のそしりを受けている。


 そのため、職業習得が主な役割であるこの建物では門前払いを喰らってしまうのだ。


 中を見て回るくらいならばとも思うが、各種族には大体似たような縛りがある。エルフの里などは極端な例で、エルフ以外は入れない。


 どうせならすべてを見てみたいと思う気持ちもあるが、見ることができない、立ち入れないからこそ人の想像力を掻き立てる。


 また、各々の体験談を仲間に話すことで、話題の提供と会話の円滑化を進められる。行ける場所への縛りには、そんな目的があるようだ。


 そういった思惑は、この三人にも良い方向に作用しているようだ。合流後、クロベー達はアリアにどんな様子だったかを必ず聞かせて貰おうと、アリアは微に入り細を穿ち説明をしてあげたいなと思いながら、しばしの別れに身を委ねるのであった。





 アリアと別行動を始めたクロベーと真名は、この時間を利用して消耗品の類いを買い漁っていた。


 ああでもないこうでもないと話しあい、インベントリをアイテムで埋めていく。イレギュラー・クエストの経験と、初クエストを迎えるアリアへの過保護でそれはもう買いまくり、インベントリ内はお前ら何日間ダンジョンにこもるつもりなんだといった有様だ。


 際しては、クロベーが防具用にと溜めていた貯金が半分以下となった。彼の腰巻生活はまだまだ続きそうである。


 一方、先んじてAGIの上昇するブーツを作製していた真名はすっからかんである。


 今まで送ってきた彼女の人生では考えられない事態ではあるが、欲しいものを得るためにお金とアイテムを貯め、苦労の末それを手にした喜びを味わった彼女は満更でもなさそうだ。時折これを眺めては口の切れ込みを弓なりに吊り上げる様子は、とても恐ろしい……もとい、とても愛らしい。


 買って貰ったばかりの長靴を、晴れた日にも履いてはしゃぎ回る年幼い少女のようだとは、隣を歩くクロベーの率直な感想である。


 実年齢より幼く見える外見も相まって、どこかほっこりした気持ちにさせられるものの、一応彼女も十五歳。こういった視線を向けるのは失礼であるとクロベーはかぶりを振る。


「であれば、やはり手羽元こそ守るべきではありませんか……っと、アリアさんからメッセージですわね」


「ああ、俺の方にも届いた。のんびり向かい始めて正解だったな」


「ですわね。お話もキリの良いところまで進みましたし、参りましょう」


「聞き手に言わせりゃ生殺しもいいところだけど、続きはまた今度聞かせてくれ」


 ややあって、アリアからチュートリアル完了の連絡が入る。そろそろかと思い教会方面へとのんびり足を運んでいた二人は、その知らせを受けたことで気持ち足取りを速めた。っていうか、お前ら何の話をしていたんだよ。





 五分ほどをかけて教会に辿り着いた二人は、アリアを探そうとあちこちに視線を向けながら門の前へと進んでいく。


「見当たらねえな……ちょっと待たせちまったかね」


「いえ、いらっしゃいましたわ」


「んっと、どこだ?」


「あちらですわ」


 真名が視線を向けた先へクロベーも顔を向けると、その先には、


「じーっ」


 教会の門柱、その陰からこちらに熱視線を送る黒マントがいた。


「なあ、あの口でじーって言うやつ流行ってるの?すげえデジャブなんだけど」


「さあ?生憎、わたくしもはじめてお目にかかりますわ」


「なるほど、無意識か」


 己の行動に無自覚なお嬢様に頭を抱えながら、とりあえず彼女の下へ向かう。


 二人が自分を目指して歩いてきているのを理解したからか、アリアもまた日の当たる世界へ一歩を踏み出した。大袈裟な表現かもしれないが、彼女にとってはそれくらいの覚悟が必要なんだ。


「倚門の望の如く、お待ちしておりました……」


「お待たせしてしまいましたわね。できればもう少し、目に留まりやすいところにいて頂けると嬉しいのですが」


「……日の満ちるこの世界は、私のような日陰者には大層生きづらく……陽の気が、まるで私を拒んでいるかのように感じるのです……」


「おう、俺もオークだからその気持ちはわかる」


「お二人とも、ご自分に自信をお持ちくださいな……アリアさんは、初期装備を杖になさったのですわね」


 真名の申し出を受けて戦慄するアリアに頷いていたクロベーも、真名の言葉でアリアへ目を向ける。アリアが慄きながらかき抱いた両腕には、先ほどまでは見られなかった杖が収まっている。



 ―――ノアにおいて職業を選択する際、NPCによる簡単な操作説明と、いくつかの専用チュートリアルクエストがある。それらすべてを終わらせると、職業に応じた任意の装備を一つ貰えるのだ。


 魔法職の場合は〝マナ・クリスタル〟と呼ばれる、魔法の威力を増幅させる石を組み込んだ装備から選択できるようになっている。これらの種類も多岐にわたり、定番の杖や指輪、魔導書といったいかにも魔法使いと呼べるものや、剣や槍といった近接武器に至るまで様々だ。


 しかし、そこはあくまで最初期にもらえる装備である。この場で選択できるものは杖と指輪くらいのもので、しかもそれは各々に応じたサイズになっていたりはしない。実際、ハーフリングである彼女には共通規格の杖は少し長いようで、真名の背丈程度のそれでも持て余し気味だ。


 サイズ直しを行えばジャストサイズで運用できるが、さして効果の高くないそれに別途料金を払うくらいならば、新しい装備を買うまでは我慢してそれを使うプレイヤーがほとんどだろう。


 そう考えたクロベーは自分達と揃いのものをアリアへプレゼントしようと思っていたが、流石にそれは甘やかしすぎだろうと真名が止めていた。


 仲間としての線引きは曖昧にしてはいけないと思っての意見だったが、そうなると消耗品の類いもまた扱いは変わってくるのではないかと議論は白熱。貰う時は躊躇するくせに、あげる時は節操がないクロベーに真名も少し呆れていた。この男、どんだけチョロいんだと。


 結果、互いの意見を尊重し合う形で、折衷案をとることとなった。


「では、アリアさんの具合を確かめるためにも、早速クエストに参りましょう」


「は、はい……それで、どのようなクエストへ赴くのでしょうか」


「ああ、それなんだが、〝素材集め〟に向かおうと思う。あまり激しい戦闘がないものにな」


 初のクエストに不安があったのだろう、戦闘がメインではないと聞いたアリアが安堵する。ついで口からまろび出た疑問は、彼女にとってはなんてことのない会話の延長でしかない。


「素材……必要なものがあるのですね」


「ええ。それはもう、不可欠なものが御座いますわ」


 パーティ見習いとはいえ、消耗品の類いまで都合してもらったアリアに否やはない。二人が少しでも強くなれるよう手助けができれば、と気合を入れた。


 続く真名の言葉を聞くまでは。


「初期装備であるアリアさんの杖を、新調致しましょう」


 どうやら、アリアへの至れり尽くせりはまだまだ続きそうである。





 エスタ・キャピタル中央区にある大通りを、クロベー達は連れ立って歩いている。


 先の教会前にて、いたたまれなさから三度(みたび)毛玉になろうとしたアリアをなんとか宥めた三人は、いざクエストへ向かわんとワープ・ポータルを目指して進む。


 道中においては真名渾身の、晴れて新章へ突入したバックストーリー……ではなく、アリアが目にしてきたエスタ・キャピタル大聖堂内部の話で持ちきりだった。


 人前で多くを語る機会などなかったアリアは、最初こそつっかえつっかえもごもごと話していたが、時間が経つにつれて軽妙な語り口へと変容していく。


 時に詩的に、時に情緒へ訴える表現は、まるで自身の感動がそのまま言葉と化したように二人の胸へと届けられた。


「壁一面に張られたステンドグラスの壮麗さは、無償の愛を注ぐ天爛の輝きと呼ぶ他なく……特に、蒼空を表現する青の燐光は、まさしく神々の住まう地と呼ぶに相応しい絶美を放っておりました」


「ええ、アリアさんの眺めた情景が、わたくしの心にも映って見えますわ……」


「すげえ……俺なんかが、この光を浴びて許されるのか?」


 特に、感受性が豊かに過ぎる二人には刺激が強かったようで、眼を閉じれば煌びやかなステンドグラスに彩られる教会の景観が広がって見えるようだ。


 そんな、外見的にも挙動的にもヤバい三人組が向かうのは、初心者御用達との呼び声の高いクエスト。


 〝採集クエスト〟である。



 ―――採集クエストとはその名の通り、クエストの依頼者が必要とするアイテムを入手して、依頼主まで届けるクエストだ。必要アイテムは種類、量ともに見境がなく、道端に生えている薬草からモンスターのレア素材まで、どこかで誰かが必ず欲していると言っても良いほどに需要がある。


 また、シーズン毎にアイテムの価値が変わるため、市場価値を見定めて予めアイテムを入手しておく貿易のような遊びも楽しめる。そのため素材クエストでは、そういった状況に備えて大目にアイテムを得るプレイヤーが多いのだ。


 何より、必要素材によっては大型モンスターと戦わずに済むという気軽さが、非戦闘職やライトユーザーにも優しい設定になっている。


 特に、採集系のクエストはアイテムドロップのアルゴリズムが変動しており、普段よりも良い素材が手に入る確率が上がる。広いマップ内で目当てのアイテムを探す根気があれば、初心者でも安心してアイテムを得られる収入源、それが採集クエストなのだ。


 

 暫くして、クロベー達三人はワープ・ポータルのある中央広場へ到着した。現実世界とリンクしたノアの季節もまた春で、巨大な噴水が生み出す虹と、柔らかい色合いの花々がプレイヤーを向かえてくれる。祭壇の周辺には相変わらず人だかりができており、クエストへ向かう集団が談笑していた。


 クロベー達は何度となくこの場に足を踏み入れているが、アリアは初めて訪れたようだ。知的好奇心の赴くままに、前髪に遮られた顔をあちこちに向けていた。


 小柄な彼女がキョロキョロする仕草は、新しいもの好きな子供のようでとても愛らしい。しかし、豊かに過ぎる彼女の御髪が、彼女の存在を人間離れさせる。お陰で彼女の仕草は、森の中で獣に育てられた少女が、初めて人類の文化圏に足を踏み入れた時のリアクションに思えてならない。


「とても調和のとれた、美しい広場ですね……初めて赴く海外の地に似た新鮮さと、ワープ・ポータルが見せるファンタジーな様相が、好奇心を刺激してやみません」


 森と生きる野生児じみた外見に似合わない文化的な表現を口にしながら、アリアが二人を振り返る。前髪が翻った際にちらりと覗いた大きな瞳は、キラキラと輝いて見えた。


 うすうす感づいていたアリアの美少女ぶりを、一瞬とはいえ目の当たりとした二人。クロベーは勿論のこと、真名さえも落ち着かない様子で返答した。


「あ、ああ、そうだな。イイ感じだよな、すごく!!」


「え、ええ。初めて目にした時から今まで、変わらずに胸の高鳴りを訴えてやみませんわ」


 二人を襲う不意打ちじみた一撃が、良いところに命中してしまったらしい。冒険前に感じるものとは違うドキドキを経験した二人は、小首をかしげるアリアを前にしどろもどろになる。


 黒部 泰智、紀久淑 茉奈。


 人生初のギャップ萌えを体験した瞬間である。





 ワープポータルを超えた先。


 眼前に広がる抜けるような青空が、三人をむかえいれた。ワープに関する一連のやり取りは全面カットである。


 期待に胸を高鳴らせるアリアの表情が、目元が見えないにもかかわらずしょげ返っているのがわかるほどに変わり果てたのだ。これには結果を知っていた二人も罪悪感に駆られる始末。


 しかしそれも一瞬。普段は絶対にお目にかかれない絶景が、何とも言えない空気が流れたこの場を一新させる。


「素晴らしい場所ですわね……」


「はい……見渡す限りの青空と、その青に決して引けを取らない、鮮やかな緑が彩る大草原……」


「景色につられてか、空気もうまく感じてくるな」


 気分はちょっとしたピクニックだろうか。思い思いの感想を述べながら感慨に浸る三人。クロベーなど、緑の絨毯へ身を任せておもむろに寝転がる。そのまま暖かい陽気に誘われてうとうとしだしたところで、顔の横へ銀光が一閃した。


「クロベーさん?目的をもうお忘れで?」


「あ、はい。すんませんっす」


 三日月のように口元が裂けた真名の笑顔を受けて、慌ててクロベーが立ち上がる。それを受けた真名は更にひと睨みを加える。クロベーが背筋を伸ばしたのを確認して、全くもうと呟きながら、地面に突き立てたナイフを抜き取った。


「いや、初心者のアリアに少しでも楽しんでもらおうとだな……」


「そのアリアさんは、早く先へ進みたそうにしておりますわよ」


「あ、いえ、決してそういうわけではなく……やはり、名の由来である丘の風景に興味がありまして……」


 言いづらそうにもじもじしているのかと思いきや、どうやら好奇心からうずうずしているようだ。その証拠に、首の向きがちらりちらりと高台になっている丘へ向かっている。このマップのメインフィールドであり、名の由来になっている場所だ。



 エスタ・キャピタル南西部マップ〝風船ヶ丘〟。



 とあるモンスターの生息区域であり、これから取りに行くアイテムはそこでしか手に入らない。


 出現するフィールドモンスターも低レベル帯が多い割にはアイテムの換金率が高いという、所謂オイシイクエストではあるのだが、他のプレイヤーには人気がない。


 理由はいろいろあるが、まずは難易度が高い。パーティはある程度の連携が必須となり、それに加えて遠距離攻撃もなくては厳しい。


 フィールドにおいては特殊なシチュエーションでの攻略が求められるうえに、選択を間違えれば即死の憂き目にあうこともままある。下手をすればパーティが全滅しかねない鬼畜な仕様となっているのだ。


 第二に、出てくるモンスターは弱いのだが、いかんせん数が多い。更には相手モンスターの持つ特性が、戦いに慣れていないプレイヤーへ苦戦を強いる。


 諸々のハードルを越えて得られるアイテムは確かに魅力的ではあるが、他のもので代用できないわけではない。あくまでここはゲーム序盤、少し待てばもっと良い装備がいくらでも出てくるのだから。


 そういったリスクリターンを加味した結果、無理をしてまで欲しいわけではないという結論を出されてしまう不遇のクエストなのである。


 初心者であるアリアを慮って採集クエストを受注しに行ったはずなのに、全然チョロくないぞコレ。恐らくは人の少なさを加味して受注したクエストなのだろうが、どうしてこうギリギリを責める様なクエストばかり取ってくるのだろうか。


 前回から疑問が絶えないクロベーではあったが、アリアも楽しそうにしているようなので自重する。ティリア遺跡同様、真名(下手人)には何かしらの秘策があるのだろう。


「では参りましょう」


「おう。道中の露払いは任せておけ!」


 言いながら、クロベーは腰に差した新たな相棒の柄をポンポンと叩く。クリスタル・ゴーレムとの戦いの後に新調した、銀色の光沢が美しい両手武器だ。


「……やはり、オークの武器といえば、()()が定番ではありますね……」


「おっ!アリアはロマンが分かってるなあ。これ買う時、真名に猛反対されたんだよ」


「……別にわたくしも、反対をしたわけではありませんわ」


 当時のやり取りをしみじみ語るクロベーに、プイっとそっぽを向いて答える真名。


 確かに形状だけを見れば、決して戦闘向きとは言えない。速度による連続攻撃を身上としている真名から支持を得られないのも納得できる、武骨な外見もしている。


 何より、この武器を用いるキャラクターは大概がかませか、中盤で死んでしまう超カッコイイキャラクターしかいないのだ。長くノアを楽しみたい真名からすれば、死亡フラグを積極的に立てようとする仲間へ一言物申したくもなろう。


 〝ウォーハンマー〟。


 金属製の太い柄が1メートルほどあり、それだけでも十分な重量を誇っている。この時点で前回の棍棒とは比べ物にならない威力を発揮しそうではあるが、その先端には数百キロはあろうかという鉄塊が取り付けられ、他を圧倒する存在感を放つ。


 用途に応じて使い分けるためだろう、片面は平らにならされているが、反対側は巨大なつるはしのように湾曲した鋭利な形状をしている。叩き潰し、穿ち貫く。暴力的なまでの機能美はロマン派の心を掴んで離さない。


 当然、この武器の魅力は外観だけではない。鉄塊による一撃は硬い装甲をものともせずに粉砕し、横薙ぎに振るえば暴風を生み出し、周囲へ暴虐の限りを尽くす。


 刃が通らない相手も潰し喰らう最重量近接武器、それがウォーハンマーだ。


「ただ、あまり見かけない武器でしたので、クロベーさんはこれを十全に扱えるのかと危惧しただけですわ」


「確かに、若干軸がブレるんだよなあ。まだまだ修行が足りないみたいだ」


 真名の指摘にもっともだと頷きながらも、クロベーは二ヘラと笑う。年相応の笑い方は、普段のいかめしいオーク顔とのギャップからか、大分幼く映る。まるでご当地ゆるキャラのようだ。


 これを眺めた女子二名、なぜか胸をキュンとさせる。すわここから三角関係の修羅場へ突入かと思われたがそんなわけもなく、単に二人の可愛いものセンサーが反応しただけだ。完全にマスコット扱いである。


「……まあ、クロベーさんがそう仰るのであれば、わたくしは何も言いませんわ」


 若干折れた形にはなるが、真名もクロベーへ笑顔を向ける。アリアも小さく微笑んだところで、クロベーが号令を上げる。


「っしゃあ、行くぞぉ!」


「参りましょう」


「お、おー……」


 何とも足並みの揃わない三人である。

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