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03_とりあえず自分捜し

トリエステ魔法学園はアドリア王国にある魔法学園のなかで最も古い学園だ。主要魔法騎士の養育機関としてアドリア王国は8つの学園を設立している。

多種多様な人材を育てるために、他の国との競争力を上げるための組織を作ることに当時の王は熱心だったらしい。

魔法学園設立当時に開発された特殊なルーン石、制服の上に着装する特殊な鎧も作られたのも王による計らいだった。

ただ、予算も記録にある以上の出費があったためそこから来る憶測もあった。

「セシルは以前見つけた書類から、その前王の働きに関する報告を見つけました。彼女に古文書の解読能力があったのは以外ですが、そこから異世界から来た勇者に対する意識と繋がっていたのかもしれません。彼女の行動は不可解ですが、試合の結果からマヒロさんは学園の生徒に匹敵する魔法騎士であることは間違いないですから。」

生徒会室にはメンバーがいた。

生徒会室のラスティ、書記のメルル、会計のユリスは今回の試合について話し合っていた。

「そのセシルが抱いている異世界の勇者と、偶然セシルが遺跡で出会ったマヒロ。その二つに関連性があるかどうかはまだ未確定です。」

延々と現状確認をするユリス。その彼女も、あの試合での戦いで見たマヒロに対する認識は変わった。

「少なくとも、セシルが連れてきた彼氏というわけではないと。」

「メルル、彼氏かどうかはそもそも関係ないでしょう?もしかしたら、遺跡で何か語られていない何かがあったのかも。」

「それってつまり、本当はセシルが何かをされたんですね!?」

それは違うと思う、とラスティが言いたかったが。妙な盛り上がり方をするため、会話に入れなかった。

「あの魔力から換算しても、リーシャ以上の攻勢魔法を使えると判断できましたから。あのマヒロさんが持つレーヴァテインという武器も、調べてみる価値はあるかと。」

「あの剣も、学園が管理する物と一緒なのでしょうか。」

「今は分かりませんが、決闘での成果から判断して高いランクの魔力を秘める武器であることは間違いありません。メルルさん、貴方には彼に近づきレーヴァテインの詳細を調べさせてもらいますが、よろしいでしょうか。」

「本当なら風紀委員の方のほうが適任ですが。セシルが居ますからね。」

「ハニートラップでも構いません。」

「ユリスさん?いくら私でも、いきなりそんなことできるとでも?」

「胸の大きさならセシルより上です。」

「わたし、ちょっと近づくのも自信無いですから。」

「大丈夫、見たところマヒロという男性は優柔不断の男ですから。セシルよりは貴方の方に傾きます。」

「レーヴァテインを調べるにも、一人で殿方のところに入るだなんて。」

「盗めとは言っていません。貴方なりの考えで見てきてください。」

「分かりました。この書記のメルルがレーヴァテインの調査に向かいます。」

その決心の後、メルルは生徒会室から出て行った。

会話の内容としては、ユリスが彼女に応援していたように見えていた。ラスティとしてはユリスと話し合って一番の適任がメルルだと決めていたが何故か落ち着かない。

「メルルはセシルを嫌っているのか?」

「生徒会長からすれば、確かにメルルは少し挑発的な言動をしますが。彼女は中等学校でもあんな感じでした。中等では魔法の技能を評価しないため、むしろ今の方が生き生きとしています。」

「そうか。」

むしろ、突然学園長がマヒロを生徒として引き入れたことで彼を観察しやすくなった。

リーシャとの戦いで見せた力を、また一度全力で見せてくれるのなら尚更逃すわけにもいかない。



何故、僕は学園の生徒にならなければいけないのか。その答えを探すにはその許可を取った人間と直接話し合う必要があった。

学園長、スキピオという男性は丁度学園長室にいたため、探す必要はなかった。

見た目は老人かと思っていたが、40ぐらいの人だ。

「君がマヒロ君か。よく来てくれたね。」

「何故、僕を生徒に?」

セシルとアニスは廊下で待機している。二人がいると余計なことを言いそうなため、留守番という形にしておいた。

「警戒しないでくれ。こちらも、君に危害を加えようとは思っていない。それは保証するよ。」

「それは分かりました。でも、セシルが勝手に考えたことを何故受け入れたんですか?」

「彼女は私の養子でね。」

突然の事実に驚いてしまいそうだった。養子ということは、彼は結婚していないということだろうか。

「12年前、彼女が5歳のときに養子としてある人から預かったんだ。セシル・スチュアートという名前以外はよく知らない子供でね。その彼女はその当時から異世界から来た勇者という存在を信じていた。子供でも知っているお伽話を信じていたと思っていたが、彼女はその話を否定されると癇癪を起こして暴れることがあったんだ。この話はセシルの事を知る人なら有名な話になってしまったけどね。セシルは本気で、今も勇者の存在を信じている。本来ならあり得ないような話をセシルは現実として受け入れているんだ。マヒロ君は、彼女を恨まないでほしい。」

「まるで病気みたいな子ですね。その話が本当だとして、僕が学園の生徒になるメリットはなんですか?」

「結構あると思うけどね。その前に一ついいかな。」

「なんですか?」

「君は本当に、異世界から来た人間なのか?」

「それは分かりません。異世界から来たことは事実だと思う程度で、今はかなり曖昧な感じでしたから。」

「つまり、どういうことだ?」

「異世界から来たというのはわかっているけれど、姿は完全に記憶とは別人なんです。生まれ変わってしまったというか、別の人間になったというか。その辺りはあまり理解していないんですよ。」

「セシルから聞いた限り、レーヴァテインという剣は最初から持っていたそうだが。」

「なんででしょうね。」

笑って誤魔化してみたが、正直スキピオさんの立場からしてみれは不審すぎだろう。

「その剣はともかく、君は記憶がはっきりしないまま遺跡にいたということか。それはどういうことかもわからないと。」

「はい。」

「ふむ、とりあえずあまり自由にはさせたくはないな。」

「記憶喪失なんで、多分何も答えられないと思います。」

「君は危険だ。それはリーシャとの決闘からも証明している。だから、学園の生徒となることで君も自分の不確かさを考える必要がある。答えを探すのはマヒロ君の役目であり、私がすることではない。」

「僕が異世界から来た人間だと信じていないんですか?」

「無論、お伽話だからな。それに、別の世界からどうやって来るのか。その理論も言えるわけでもない。だから、異世界から来たかどうかはこの際保留だ。」

つまり、僕の問題は僕が解決しなければいけないということだ。

難しいかもしれないが、頑張ってみる価値はあるだろう。

ただ、セシルは何故異世界の勇者という存在に拘るのか。

ある意味、僕よりもセシルの方が厄介かもしれない。




結局、僕は学園の生徒になってしまった。試験は通過せす、ただリーシャと渡り合えたという実技のみを評価された形でだ。

部屋に戻って一休みしたかったが、そこには何故かアニスがいた。

「何故君がいるの?」

「貴方を確認しにきた。」

「確認?」

「昨日、貴方は自分に自信が持てないでいた。」

「自信て。まあ、僕が僕でないのは気持ち悪いことだけど。」

「気持ち、悪い?」

「もし、アニスが全くの別人になっていたら君も驚くと思うよ。」

「異世界から来たといっていたけど。それは本当?」

「それは、本当だよ。」

「本当にそうなら、強いのも納得。」

「もし、本当に異世界から来たのは本当だとしても。このレーヴァテインが何故僕にあるかは知らないけどね。」

「知りたいの?」

「僕はまだ、自分に何があったのかよく分からないから。とりあえず、この学園の図書館に行ってみるよ。」

「私も行く。」

「え?」

「図書館、この校舎には二つ図書館があって。一つは普通の図書館。もう一つは地下にある図書館があるの。レーヴァテインや異世界に関する情報なら、その地下図書館のほうがいい。」

そのアニスの助言に従っておこう。今は情報収集が最優先だから、協力者は必要だろう。


その地下図書館へ行くには許可が必要で、その手続きを終えて入ることになった。

地下のためかなり暗いはずだったが、ルーン石によって明るく照らされている。

「この場にはときどき魔道書が暴走して襲いかかってくることがあるから。気をつけて。」

「てか、かなり広いな。」

階段を降りてもまだ下がある。本の数がかなり多いが、確かにここなら何か掴めそうな気がした。

「この図書館は記録や遺跡に関する本もあるけど。複数同じ内容があったり、あまり役に立たない魔道書が多いから。マヒロがほしい情報は地下13階にあるところかもしれない。」

「こんなによく掘れたな。地下なんて普通ここまでできるか?」

「魔法による建築だから、ある程度無理はできるけど。」

ふと、アニスは足を止めた。

「どうした?」

「今、誰かが居た。」

「他の生徒だろ。」

「そうね。」

そのまま、捜し物のある場所まで歩く。

かなり中が綺麗だが、一体誰が掃除しているんだろう。



13階の地下まで降りていくと、その先に大きめのの扉があるのが見えた。

まだ地下があるのだろうか。それにしても規模が広すぎると思う。

アニスはそのまま歩いて奥まで行こうとする。その時だった。

突然アニスの足元に魔法陣が発生し、アニスの身動きを止めてしまう。反射的に彼女の名前を叫び、助けようと彼女の手を掴んだ。

しかし、その抵抗も虚しく二人はその魔法陣による魔法によって姿を消してしまった。



ふと、夢を見ている。目の前にいる少女は捜し物をしているわけだが、その捜し物がなんなのかは教えてくれない。

多分、かなり大切なものなんだろう。僕は彼女のために少ないお小遣いを使って食べ物を買ったりした。

忘れかけている過去の記憶、確かにそれはあったはずなのだが。それも目を覚ますと同時に忘れてしまった。

「ここは、どこだ?」

起きると、自分が今いる場所は何処かの通路みたいな場所だった。

「ん、やっ、だめ。」

「え?」

手を動かしたら何故か手がアニスの胸を掴んでいた。

「なんでだ!?」

そのまま離れる。かなり直接的になってしまい、現実認識がおかしくなりそうだ。

「マヒロ君はセシルだけでなく私まで狙う気?」

「いや、違う事故だ!?」

「事故でおっぱいを揉むとは。ラッキースケベ的なやり口でセシルを何かしたと?」

「してません。」

「本当に?」

「僕を何だと思ってるんだ?」

「学園では、マヒロという男はセシルを狙っており、学園で覇権を握るために暗躍するスパイだと噂している。」

「無茶苦茶すぎる。」

「私は初めておっぱいを男性に揉まれたので、今ではマヒロは学園の女子生徒を狙う変態かもしれないと思いました。」

「すみません事故です。」

「既成事実。私はもしマヒロが敵であれば、私は生徒会の前で先程のセクハラを告げます。」

「敵って、僕は何も。」

「まあ、初めてなら私も奪いましたからおあいこね。」

「おあいこ?」

「覚えてないの?鏡を見て突然震えだした貴方をキスして慰めたじゃない。」

全然覚えていなかった。それほど自分の今の姿を見て気がおかしくなったんだろう。

ただ、流石にアニスの言うことは少しやりすぎな気がした。

「キス、はともかく。オーバーすぎるだろう。」

「そうね。初めてだけれど、私はいいと思ったから。クローゼットの中から貴方を見て、私は貴方に関心を持った。それだけだかど、学園の魔法実技の首位である私のつながりは確かに強いから。」

「どう、いう意味だ?」

意味のわからないアニスの発言に少し引いてしまう。

「あの時、私は貴方と精神的な波長が繋がっていたから。クローゼットで霊と交信する訓練をしていたとき、貴方と私は不思議と繋がっていた。だから、精神的に繋がってみることでより貴方の魔力を調べさせてもらったの。」

「なっ!?あの時何をしたんだお前!?」

「精神的な繋がりから魔力機構の構造を見るために貴方にキスをして、精神の一部を私の魔力とリンクさせたのだけど。驚くほどに貴方へのハッキングは難しくて断念した。けど、身体はある程度理解したわ。貴方は自然に作られた人間じゃない。至る所に魔法を効率よく発動するための人工神経があって、まるでロボットみたい。」

「ろ、ロボット?」

「魔法で作られた金属製のゴーレムの一種よ。でも、貴方はロボットのそれと違うところがある。だから、私は貴方をよく知りたい。」

ある意味、有益な情報は彼女から得られた気がする。

問題はいきなり変な場所に来てしまったことを考えないといけないのだが。

「帰り道、分かるか?」

「設置型の転移魔法はそうできることじゃない。気をつけて。」

アニスの言うとおりにしておこう。今の場所を脱出するために通路を歩き始める。




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