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アリとキリギリス 2018

作者: 佐藤コウキ


 強い日差しが照りつける真夏。

 アリは今日も一生懸命に働き、食べ物を巣の中に運んでいました。

 それをキリギリスは草の陰に寝転んでバイオリンを弾きながら眺めています。

「アリさん。そんなに働いていないで遊んだらどうですか。人生は一度しかないんだから楽しまないと」

 汗で小さな体が黒く光っているアリは振り向いてキリギリスの方を向きます。

「キリギリスさん。毎日、遊んでいていいんですか。なまけていると、いつか困ることになるでしょう」

 しかし、キリギリスは笑ってばかりでアリに答えません。

 アリはため息をつき、重い食べ物を背負って巣に向かいました。


 アリは休まずに働いていましたが、ある日、とうとう疲れのせいで倒れてしまいました。

 働かないと冬を越すための食料が足りなくなります。

 体調が悪かったのですが、我慢して働きました。しかし、予定した分の食料は集まっていません。


 やがて冬になり、アリは食料を節約して対応していましが、とうとう食べ物がつきてしまいました。

 アリは腹ぺこで雪の中を歩きました。どこかに食べ物が残っていないものか。

 するとキリギリスの大きな家が見えました。

 窓から覗いてみると、キリギリスは暖炉の前でワインを飲みながら軽やかに踊っています。


 アリは労働者でしたが、キリギリスは資本家でした。有望な株をたくさん買っていたので、遊んでいてもお金が入っていたのです。さらに株を買っていた会社が上場したのでキャピタルゲインが入り、使い切れないほどの資産になっていました。


 アリがドアをノックすると、高級ガウンを着たキリギリスが出てきました。

「食べ物がなくて困っています。どうか食料を恵んでもらえませんか」

 キリギリスは、あきれたように視線を高い天井に向け、そしてアリの方を向いて言いました。

「仕方ありませんね。では、お金を貸しましょう。あなたの家を担保にして金利は年に十パーセントで良いですね」


 この世は一生懸命に働いても報われないことがあるのです。


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