異世界転生〈1歳〉
時が経つのは本当にあっという間で、気付けば私は一歳の誕生日を迎えていた。
「お誕生日おめでとう」
家族、使用人、会うたびにおめでとうと祝われる。
プレゼントは子供用の服やおもちゃ。
一年を経て気付いたことは家族構成と家の立場。
父、母、兄が一人、姉が二人。
そして侯爵という高い地位。
どうやら私は裕福で生活の安定した所に生まれたらしい。
…そして、喜ばしい事に物に掴まりながらなら多少歩く事も可能になった。
「成長が早くて少し寂しいわ」
なんて母のテレサは言う。
「良いじゃないか、早く立派になった姿が見たいぞ」
と父のヴェルヴェットが言う。
たった一人の兄であるファムルスはニコニコと微笑んでいるだけで突っ込もうとする気は無いようだ。
長女のエリスと次女のリリアナは私を撫でながら私の未来図を話していた。
「お姉様、私、アルはきっと可愛らしい子に育つと思いますの」
「リリアナ、それでは騎士としての面目が立ちませんよ、でも、美しく気高く、強い子になって欲しいですわ」
まさかお嬢様言葉に萌え死にそうになるとは思っても居なかった。
きっとこれからも私はこの温かい家族と共に暮らしていくのだろう。
前世の記憶を持っているとどうも反抗期とやらが来るとは思えない。
神の気まぐれではあるが与えられた第二の人生。
私は私のできる事をしたいと思った。
こんな素敵な場所を守るのが私の役目なんだと、勝手に思っているが、
今はそうでありたいと願うばかりだった。