異世界転生〈0歳〉
ああ、身動きが取れない。
生まれたばかりって、こんな感覚なんだ…
にしても、まさか自分が男として生まれてくるとは…
駄目な神様だな全くもう…
ま、いっか、深くは考えまい。
「坊ちゃん、お乳の時間ですよ」
と、乳母が言う。
この世界での私の名前はアルカディウス。
侯爵家……って確か結構身分高いやつだよね?
因みにフルネームはアルカディウス・ロマニオ・テオドシウス。
……すっごく長い…
(これからこんな長い名前名乗っていかなきゃいけないのか…)
勿論長すぎるので家族からは〈アルちゃん〉なんて呼ばれている。
(…にしても、赤ちゃんて食って寝る以外にやること無いな~)
なんて、呑気に考えているうちにご飯の時間は終わったようで、乳母が私の背中を擦り、げっぷを出させた。
「それにしても、やっぱり坊ちゃんの瞳は美しいですね。」
うっとりとした表情で言う乳母。
そう、私の瞳は特殊なようで、その澄み切った紫は誰もが惚れてしまうような美しい瞳なのだと、ここ最近よく言われる。
「さ、寝ましょうね」
暫しの間私の瞳を眺めていた乳母は直ぐに気持ちを切り替え、私を揺りかごに寝かせた。
(んー、暇だ……大っきくなったら何しよう)
なんて夢物語を繰り広げながら、私は眠りについた。