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運命に抗う者たち ~The Black~  作者: 斬崎 奇人
第一章 【It was crazy】
6/11

Chapter.05 【二つ結い少女】

第五話です。


更新期間、ちょっと空いて仕舞いました。





リヴィアの仕事は主に、殺しである。


そして殺しの依頼をしてくるのは、貴族たちなどの金が腐るほどある“この世界”において国を創るさいに奮励した人々。


その功績を称えられて領地を分け与えられた貴族たちだが、今では殺戮に悦楽を感じ、己の仕事すらも忘れ、奴隷市場で奴隷を買い漁る姿は、餓えた獣のようだ。


そんな貴族たちから依頼を受けているリヴィアを敵視している人間たちも多い。


そのため、リヴィアの知らない所で殺意やら敵意やらが渦巻き、リヴィアへと向かうことが多々ある。


「リヴィア、気を付けてね。後、あんまり危険な仕事は受けちゃ駄目よ。……それと、怪我、しないでね……?」


便利屋としての仕事をしに行くリヴィアにセイが心配そうに、訊ねるのにも頷ける。


しかし、リヴィア自身は例えそんな事があったとしても対処することは出来る。


そもそも旧アーサー王国、無法地帯においてリヴィアに敵う者はリクとセイの二人しかいない。


前者であるリクはリヴィアにこの国で生きていけるだけの戦闘の知識と技術を与えた、師であり、リヴィアよりも強く、本気を出したリヴィアが赤子でも捻るかのように負かされるほどである。。


後者であるセイは、リヴィアにとっては唯一の“血の繋がった家族()”であるため、セイと殺し合いになろうものなら、リヴィア自らその首を掻きき斬るほどに、セイを大事に想っている。


この二人以外というのなら、一番近くてここから南西に下って行くと“ジスティール共和国”という国がありその国には暗殺者(アサシン)という、殺しを生業としている者たちで構成された“とある組織”がある。


リヴィアは暗殺者(アサシン)という存在がいること自体は知っているが、仕事で出会ったことはないためさして気にしてもいない。


リヴィアはセイの言葉に苦笑いを浮かべると、一言「大丈夫だよ、姉さん」と返した。


セイにとっては聞き慣れた言葉なのだが、それでも心配事は尽きず顔色は青白い。


「セイは心配し過ぎなんだよ」


うっすらと口元に笑みを浮かべたリクがセイの頭の上に手を置く。


ポンポンと数度セイの頭を撫でると、こちらを睨むリヴィアに視線を向けた。


まるで、弟に母親を取られ拗ねている兄のようである。


「お前はヘマをしない限りは死なないだろ?」

「……ヘマなんぞしねぇし、そもそも俺が死ぬのは姉さんを護ったときだけだ」


口をへの字に曲げて、リクの言葉に返した言葉にリクは僅かに口を開けて笑い、セイは「私のために、死なないで」とだけ言い眉を寄せて儚く笑みを浮かべた。


素晴らしき姉弟(きょうだい)愛とでも、言えばよいのだろうか。


遠くなっていく黒い背を見詰めていたセイの表情は青白い顔と相まって、病人のように思える。


「あの子は、どうしてあんなことを言うのかしら……?」

「お前が大事だからだよ」


セイの言葉に当たり前という風に返したリクは、見えなくなって仕舞うまでぼんやりとリヴィアの背を追い続けていた。


「私も、あの子が大事なのよ。とても。あの子には、絶対に私のためなんかに死なないで欲しい」

「……辛いからか?」


それは、残されたら、という意味なのだろうか。






「……あの子には、お母様やお父様と同じに成って欲しくないから」


哀しそうな、それでもどこか強い意思を感じる言葉にリクは苦笑いを浮かべると、自分よりも大分低い位置にあるセイの頭に手を置いた。


グシャグシャとセイの髪を掻き乱せば、綺麗で蒼く長い髪の毛はボサボサとはねる。


リクに視線を向けて止めるようにとジッと見詰めれば、リクはニッとこうかくを吊り上げて笑みを浮かべる。


「酷いわ。折角、綺麗に直したのに……」

「お前は、母親とソックリで髪が長いからな」


リクの言葉に僅かに頬を綻ばせて笑みを口元に浮かべたセイは「あの子は、お父様にソックリよね」と呟いた。











リヴィアが便利屋としての拠点を構えているのは、第四地区と隣接している第五地区である。


第五地区は、“ジスティール共和国”という国と唯一隣接している地区である。


第四地区や第三地区は“ランガン大国”という“この世界”最大の国土を誇る国と一部が隣接しており、第五地区も“ランガン大国”と一部が隣接している。


そしてその第五地区の中心に位置している廃れた歓楽街と成っている街の奥の奥、普通ならば足を踏み入れるような場所ではない所にリヴィアが便利屋としての拠点を構えている。


リヴィア自身、面倒なのか広告なども一切出さずに便利屋をやっているため客は多くはない。


しかし、どこから嗅ぎ付けて来たのか“ランガン大国”から貴族たちがやって来る。


貴族というと“この世界”に住む人間たちは良い印象を抱いたりはしないだろう。


リヴィアも貴族を相手に商売をしているがことあるごとに、“クソ貴族”と呼び愚弄するなど扱いはかなり悪い。


まだ形を留めている石造りの家は、壁が何かに貫かれでもしたかのように穴が空いていたり、屋根が吹き飛んでいたりと人間が住むにはあまりにもな家が建ち並ぶ。


ここが歓楽街だというのだから驚きだ。


しかし、ここが歓楽街だということは直ぐに気が付く。


新しく建てられたのか外装はそこそこ立派で少し大きめの店には、派手な色に染められた看板が吊り下げられている。


店の前では若い男性が、手当たり次第に通り過ぎていく男性たちを引き留めては店へと誘い込む。


「やっぱアンタも(ヤロー)なんだ」


完全に馬鹿にするよような声色と言葉に額に青筋を浮かべたリヴィアはグルリと後ろを振り向いた。


そこには、地面に落ちた瓦礫に座りニヤニヤと笑みを浮かべる明るい茶髪(ライトブラウン)の髪を頭の両サイドで二つ結い(ツインテール)にし、赤い紐のようなもので結った少女がリヴィアに視線を向けていた。


リヴィアはその少女を視界におさめると一言、言葉を発した。






五月蝿(うるせ)ぇよ、二つ結い(ツインテール)女」



ツインテ~ル。



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