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運命に抗う者たち ~The Black~  作者: 斬崎 奇人
第一章 【It was crazy】
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Chapter.01 【黒の少年】

第一話です。


よろしくお願いいたします。



瓦礫だらけのこの国、旧アーサー王国無法地帯はかつて、最も繁栄した国として賑わっていた。


だがしかし、それは千年以上も前の話。


今はその面影として朽ちた城の跡が有るのみ。


そんな国にも、生きている人間はいる。


殺し、殺されるのが当たり前のこの国で、生きる者が、また一人。


黒雲によって閉ざされた空を見上げる一つの影。


黒雲の下には人工的に創られた、普通なら有り得ない色をした月が四つ浮いていた。


赤や、緑、青に黄色と色とりどりの月が自ら放つ幻想的な光りに目を閉ざしたのは、一人の少年だった。


高く積み上がった瓦礫に腰を降ろしていた少年は、傍に置いていた刀を手に取るとゆっくりとした動きで立ち上がり、眼下を見下ろした。


下から吹き上がってくるひんやりとした風に目を細め、眼下にいる一人の年若い男性に視線を向けた。


器用に片方の口角だけ上げた少年は、酷く愉しそうに口を動かした。






「  見付けた  」


声変わりが始まっているか少し低めの声は、下から吹き上がってくる風によって掻き消され年若い男性に届くことはなかった。


軽い足取りで、高さ三○はあるであろう瓦礫から飛び降りた少年は地面に足が着く前に鞘から刀を取り出した。


口元に携えた笑みは、幻想的な月の光りに照らされて不気味に思える。


「死ね」


たった一言、たった一言口にすると少年は抜刀した刀を年若い男性の頭上に降り下ろした。


「は……?」


何が起こったか解らなかったのだろう。


年若い男性は、間抜けな声を上げて自分の頭上から降ってきた少年に視線を向け、そして口から赤い血を吹き出した。


バキッと何かが割れるような音がして、年若い男性の方を向くとそこには頭を綺麗に真っ二つに斬られ、白眼を向く年若い男性がいた。


そこから更に骨が斬れる音、身体の中の臓物が斬られる音が後から聞こえてくる。


「……な"、ゴホッ……」


頭を真っ二つに斬られ、身体の中の臓物も斬られたというのに年若い男性は未だに息をしていたのだ。


しかしもうすでに、死ぬ一歩手前。


頭を、身体を、真っ二つ斬られて生きていることが、出来るはずがない。


少年はそれを解っているのか、口元に浮かんでいる笑みを更に濃くするとゆっくりと顔を上げた。


幻想的な月の光りに照らされて、少年の切れ長で鋭い目は恐ろしく感じる。


「どうせ死ぬんだ、言い残すことはあるか?」


少年の言葉に、何も返せずに地面に後ろ向きに倒れた年若い男性はピクリとも動かなくなって仕舞った。


先程まで月が放つ幻想的な光りを捉えていたはずの目はグルリと白眼を向き、先程まで動いていた口は頭から真っ二つ斬られたことによって不自然にズレている。


頭から股にかけて、綺麗に斬られた年若い男性の腹からは赤い血に濡れた臓物が飛び出していた。


少年は死体となった年若い男性の頭に近付くと、少し考え込むと早急に結論付けたのか刀を年若い男性の首元にあてがった。











片手に何かを包んでいる黒い布を持ち、歩を進める少年は瓦礫だらけのこの国としては珍しい僅かに原型を留めていた廃屋へと向かっていた。


半開きのまま、開けられていたボロボロの扉を開けて中へと入って行った少年は、中で待っている年若い男性を殺すように依頼してきた相手と顔を見合わせるために奥へと進んでいく。


外からでは分からなかったが、中は思ったよりも掃除がされているのか、案外綺麗ではあった。


この廃屋の一番奥へと進んで行った少年の前に現れたのは、明らかにこの廃屋とは不釣り合いな新品さを醸し出している四脚の椅子に座る少年の依頼人。


「やぁ、便利屋。目標(ターゲット)は殺ってくれたかい?」


瓦礫だらけのこの国に似合わない、豪華絢爛な服を見にまとった紳士といった言葉が似合う男性は、優雅に脚を組み従者に持たせて来たらしい紅茶に口をつけた。


ほのかに香ってくる茶葉の甘ったるい匂いと、男性自身から香る香水の爽やかな香りが少年の眉間に深く皺を刻み込むことになる。


男性は眉間に皺を寄せた少年を見て、目を細め嫌みったらしく口元に笑みを浮かべると、赤茶色の紅茶が入ったカップをソーサーに置いて、脚を組み直した。


目標(ターゲット)は殺ってくれたんだろう?見せてくれないか?」

「……相変わらず、趣味悪ぃな。クソ貴族」


吐き捨てるように、呟いた少年は黒い布に包まれたナニカ(・・・)


少年は黒い布に包まれたナニカ(・・・)を男性へと向けて投げる。


ナニカ(・・・)を包んでいた黒い布は空中で外れ、ナニカ(・・・)をさらす。


男性の連れていた従者の一人が呻く声が聞こえた。


それもそうだろう。


黒い布に包まれていたナニカ(・・・)とは、






少年が殺した年若い男性の二つの首だったのだ。


地面に落ちた年若い男性の首を踏みつけて、優越に浸る男性は頬杖をつきながら口を開く。


「手間をかけさせる。お前のせいで、便利屋に無駄な金を食わして仕舞った」


男性の言葉に舌打ちをした少年は、男性の眼前に手を差し伸べた。


「金。五万。依頼はこなしただろ?さっさと寄越せ」


少年の言葉に思い出したかのように両方の口角を吊り上げた男性は「そうだったな」と呟くと後ろに立っていた従者に何かを耳打ちした。


傍を離れて行った従者は、黒革で出来た小さめなケースを持って現れた。


黒革のケースを男性に手渡すと、男性は口元に笑みを浮かべたまま少年に投げ渡した。


少年は軽々と黒革のケースを受け取とり、中を確かめようと鍵を開けた。


革同士が擦れる音をたてて、黒革のケースが開く。


と、同時にカチャリと音をたてて少年の額に向けられたのは、小銃。


「……何のつもりだ?クソ貴族」

「何、とはまた奇妙なことを聞く。この状況になって何も気付かないのか?」


少年を嘲笑う男性の周りにいた従者は、男性と同じく小銃を手に持ち銃口を少年へと向けていた。


「お前は確かに使える便利屋だったが、まぁ、ゴミのような人間だ。代わりが見付かったのでな」


酷く愉しそうに笑う男性は小銃の引き金に指を掛けた。


「お前の代わりは、美しい蒼い髪の女で」


男性の言葉が言い終わらないうちに、少年は霧のようにその姿を消した。


中身が空っぽの黒革のケースが地面に落ちる音が虚しく響く。


少年が霧のように姿を消したことに驚き固まる男性は、右へ左へと視線をさ迷わせた。


「ど、どこへ行った?!」


狼狽える男性は従者たちに問い掛ける。


狼狽える男性と同じように、従者たちも狼狽え始める。


「……自分の姉(・・・・)を殺されたくなかったら、今すぐ出て」


またしても、男性の言葉が続くことは無かった。


突如として現れた少年によって横っ面を蹴り上げられたからだ。


蛙が潰されたような悲鳴を上げて、吹き飛んでいく男性に従者たちは目を見開き小銃を少年に向けることすら忘れる。


だがしかし、冷静になる者が早い人間もいるもので。


「撃て!!!!!撃ちまくれ!!」


怒号にも似た声を上げて、少年へと銃口を向けると引き金を引いた。


銃口から放たれた、鈍い色を放つ弾丸を完全に見切っているのか少年は掠りもさせずに自分へと引き金を引いた、男性の従者へと一気に間合いをつめた。


ゴキッ


骨が折れる音が従者たちの耳へと届く。


「ぎゃ、あああああああああああああああああああああ?!!!!」


断末魔を上げながら、右腕をもがれ、無くなった(・・・・・)せいで出来た傷口をを抑え、踞る従者。


少年の右手には、従者の右腕があり手には小銃がしっかりと握り込まれていた。


痛みのせいで定まらない焦点。


額から流れてくる嫌な冷や汗。


従者は、目を見開き震えながらも口を動かした。






「ば、け……ものがッ」

「うぜぇから、さっさと死ね」


無情過ぎる一言と、共に従者の首が蹴り飛ばされた。


その光景に叫び声を上げて、廃屋から逃げて行こうとする従者たちを少年は容赦しなかった。


腰を落とし、逃げ惑う従者たち全員をそれぞれ視界におさめると、片方の口角を器用に釣り上げた。


「 黒き霧(ブラック・フォーグ) 」


少年が身に纏っている黒い服が風に吹かれているかのようにはためき、揺れる。


ジワジワと、少年の身体から黒い靄、いや、霧のようなものが少年の身体へとまとわりつく。


「 刀型(カナガタ) 」


少年にまとわりついていた黒い霧は、少年の差し出す右手へと集まり、あの、年若い男性を殺した時に使用した刀へと姿を変えて少年の手の中におさまる。


「安心しろ。全員、ラクに殺してやる」


ニタリと笑う少年は、勢いよく地面を蹴り上げた。











少年に蹴り飛ばされた男性は、閉じていた目蓋をゆっくりと開けた。


「あぁ、起きたのか。あれだけで死なれたら俺も困るんでな」

「便利屋?!」


驚き地面に手をつき上体を起こした男性は、掌に触れた冷たい液体に視線を向けた。


掌に触れた冷たい液体に目を凝らすとそれが、赤い色をしていることに気付く。


錆びて仕舞ったブリキの玩具(おもちゃ)のように自分の隣に視線を動かした男性は短い悲鳴を上げた。


半開きの口から流れ出ていたと思われる赤い血。


グルリと白眼を向き、見開かれた目。


身体をバラバラに刻まれた死体や、首を撥ね飛ばされた死体など。


鉄臭いにおいで、溢れ返っていた。


「姉さんに手を出せば、俺が無償でお前の依頼を聞くと思ってたのか?」


男性の従者の身体を流れていた血を踏んで、少年は男性へと近付いて行く。


「ま、待て。取引だ。取引をしよう。私を助けてくれれば、お前の望むものをやろう。私は、上流貴族だ。お前の望むものくらいやれる」


男性のその言葉を聞いて、少年は目を細めると口元を歪めた。


「そりゃあ、良いこと聞いた」

「そ、そうだろ?で、何が欲しい?金か?それとも、女か?」






「お前の生命(いのち)


少年が振り上げた黒い刀を見て、男性は絶望に表情を染め上げた。






廃屋から出てきた少年は、刀を黒い霧に戻すと廃屋を後にしようと前を向いた。


「あそこ、人目につかなくて便利だったんだがなぁ……。アイツ等の死体のせいで使えなくなっちまった」


ブツブツと悪態をついた、少年は殺した男性から奪ったらしい指輪や、宝石を手に帰路へと向かって行った。



結構、長くなってしまいました。


誤字、脱字が有りましたらお教え下さい。

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