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無限に終わらない  作者: 睦月煉
第1章   邂逅と離別
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11話    急変する事態


 それから数時間が過ぎた夜だった。

 窓の外では、東京では見ることができないであろう星空が、空を埋め尽くすように広がっている。



「……それで?」



 そんな夜空の下、麗翔は子供のように顔を顰めながらカノン、響希と共に同じ部屋に集まり、麗翔が気を失った後の話をしていた。


「カノンが火の魔法だけじゃなく、氷の魔法まで覚えたって……」


「おう、すごかったぜ? 麗翔の魔法で3割くらい削れた岩を、カノンの火の魔法で全部消し飛ばして、と思ったらロウソクみたいな可愛い火も出せて、他にも刺さったらヤバそうな氷柱出したり…」


 カノンの凄まじい魔法の話を、響希は自分のことのように自慢する。何故か一番喜んでるのは響希なのだ。子供の自慢をする父親かよ、などと思うところはあるがいいとしよう。


 カノンも部屋の椅子に座りながら恥ずかしそうに笑いつつ、氷魔法で小さい猫を軽く造形してみせた。

 既に氷でオブジェを造形できるくらい器用に魔法を使いこなせるようになったのかと、絶句する。

 


「あと……今日は麗翔くんと響希さんの寝るこの部屋と、私の寝る部屋の、2つの部屋を貸して下さるみたいなんですが……」


 氷でできた猫を溶かして蒸発させ、そういって話を切り出すのはカノンだ。最初は堅い関係だったものの、魔獣や組織の1人に襲われたりと、なんとか小さな修羅場を乗り越えたこともあり多少は打ち解けることができたのだ。


「兵団に入ることを勧められました。 明日になれば今の私達には行くあてもありませんし、私も賛成したいのですが、麗翔さんはどう思いますか?」


「まぁ、悪くない話だと思う。 兵士はほとんどここの寮に住んでるみたいだし、衣食住が全て揃うのはありがたい。 だけど……」


 問題は1つ。カノンはともかく麗翔と響希が兵士として、果たして役に立つかどうかだ。一発派手な炎をぶちかまして気絶する麗翔と、そもそも魔法が使えない響希。


 今、決断をするには少々時間が足りない。


「今夜は泊めてもらえるんだよね。 ちょっと色々ありすぎて疲れたかもしれない。 明日まで……考えさせてもらってもいいかな」


「あ、はい、わかりました」


 カノンは返事をすると立ち上がり、扉まで歩いて行く。そのままドアノブを捻り、扉を半分まで開けたあたりで振り返る。


「じゃあ……おやすみなさい」



 そう言いながら彼女は天使のような微笑みを見せ、部屋を出た。



「まぁ何はともあれ、やっと落ち着けたって気がする」


「そうだな、俺も今日のところは早く寝てえ」


「僕らも寝よっか。全くさ、響希の家に泊まるはずが……まさか異世界の兵団基地に泊まるなんてね」


──そうだ、思えば僕らはゲームを買いに行っただけだったんだ


 その前までは父親、母親、妹と、幸せに暮らしていたハズだったのだ。彼らは今、何をしているのだろうか。あちらの世界はどうなっているのだろうか。


「ホントだな……まぁそんじゃ、おやすみ」


「うん」


 そうして響希は暗い中で鈍く光る明かりを消すと、ベッドに入る。


 しかし麗翔は、眠ろうにも家族のことが頭をよぎり、どうにも眠れない。きっと心配しているだろう。突如として長男が行方不明になり、悲しんでいるだろう。今だって帰りを待ちわびて──


「ごめん……」


 麗翔が眠りにつく手前、自然と息のように小さく声に出た言葉だった。



 それを最後に、涙が流れてきそうな目を擦ると、段々と視界はぼやけ、暗く静まり、意識は深い深いまどろみの中へ──



* * * * * * * * * 



「おい、麗翔!」


「んん……?」


 気がつけば窓ガラス越しの日差しをもろに受け、響希の大声に起こされる。情けない声を出しながら声の主の方へ顔を向けると、そこには焦った様子を露わにする響希がいた。


「説明は後だ、とりあえず急いで来てくれ!」


「え、なに……?」


 突然すぎる目覚めと呼び出しに困惑しながらも、麗翔は響希に続いてたらたらと眠気の残った歩きで部屋を出る。


 響希と共に部屋を出て右に見える階段を下り、一階まで進む。だが、おかしい。昨日は兵団基地に入ってエリクと会話をした時は、もっと兵士がいたはずだ。


 そのはずが、今は誰ともすれ違わないし、騒がしさも全くない。そんな疑問の残る状況の中、広い集会所のようなところに着く。



 中に入ると兵士だと思われる人間が6人いた。そしてその中には──


「やあ、急に目覚めさせてしまってすまないな」


 不意に声をかけるのは、エリクだ。その隣にはアモネもいる。


「あの、昨日はもっと人がたくさんいた気がするんですが……なんかだいぶ静かになってませんか?」


「あぁ、実は今かなり大変な事になっている。 このエリシム王国の地図を見てくれ」


 麗翔、響希、カノンは言われるがままに壁に貼ってある国の地図を見る。


「エリシム王国には東西南北にそれぞれ代表的な街があるんだ。昨日聞いた話だと、確か君達3人も南の海で目覚めて、そして南の街を通ってここまで来たんだろう?」


 南の街。確かに海に面していたし、北に進めば兵団基地に行けるとも話は聞いた。つまり1周目、2周目で周った街のことだろう。


「はい、その通りです…」


「そんな風に東西南北に、有名で大きな街がある訳だけど今さっき、その4つの街全てに、同時に。 街の多くの建物が賊に破壊されたとの報告を受けた。 死者の報告はないが、怪我人が多数出ているという状況だ」


 あの時、響希とカノンとで巡った街が、破壊されているというのだ。



「そんな……」



 麗翔は呆気に取られ、言葉を続けられなくなる。



「そして既に今さっき、多くの兵士が東西南北の街の調査と、念の為に王都の防衛強化に出向いている。特に北の街はだいぶ派手にやられているらしくてね」


「そういうことか……」


「ただ、どの街も広いから犯人やアジトの調査は難航しているな。 それで、ここにいる6人は兵団基地の見張りと、また別の報告があった時の為の待機中の兵士だ」


「俺たちはどうすればいいんだ?」


「ここで待機だ。 一応、万が一のこともあるから起こしておいたけど、そっちから何かあるかい?」


 何か、と言っても無知で無力な麗翔には貸す力を愚か、貸す知恵も知識もない。世話になったのにも関わらず何もできないのは悔しいが──


「あ……待って下さい」


 そこまで考えた上で、一つ大きな情報を思い出した。もしその推測が正しければここで最大の力になれるかもしれないことがあった。


「南の街の破壊跡についてどんな報告が来たのでしょうか」


「ん、あぁ……建物が急に爆発したり、なんて報告だね。 恐らくは強力な爆発の魔法、エクリクシスというものだとは思うけど、何か心当たりが?」


 強力な爆発の魔法、過去にも火やら爆発の魔法で2人が死ぬ瞬間を見たハズだ。犯人はあの男に違いない。そして海に沿った森の中にあるアジト。これだけわかれば兵団にとって最大の貢献ができるだろう。


 察しの良さげなカノンもはっした表情をする。響希は相変わらずアホな顔をしているが、後でわかりやすく伝えれば問題ないだろう。ともかく、今話を伝えるべき相手はエリクだ。


「南の街付近のアジトに心当たりがあります」


 そう言い切ると、エリクは目を丸くして驚きながらも、期待に満ちた声で言った。


「あ……昨日言っていた謎の組織か? 確か氷魔法の使い手と聞いていたが……でも行ってみる価値はあるかもしれないな」


 流石にループ前のことは隠しているために、炎の魔法使いがいるとは言えないが、それでも大きな貢献になるだろう。


「南の街で報告された賊は2人と聞いている。俺とアモネで行けば恐らく確保できるだろう。 念の為、レイトだけじゃなくもう1人くらいにもついて来て欲しいが……」


 戦闘で頼りになる魔法使いのカノンか、一緒にいて気が楽な響希か──否。


「2人とも、来れる?」


 危険に付き合わせてしまうかもしれないが、どちらにせよ族が暴れまわるような状況の中で、行き場のない者同士の3人がバラけてしまうのは避けたい。


 その上、カノンの魔法があれば、きっと賊なんて瞬殺できるはずだ。アモネとエリクだけでは万が一の状況も有り得る。そう考えて言った麗翔の発言に、2人の反応も良いものだった。


「大丈夫です」

「ったりめーだろ」


 それを聞いたエリクは微笑みながら言った。


「よし、今から馬車を出そう。 3人とも、俺とアモネについて来てくれ」


 

 そういって3人はエリク、アモネと共に馬車まで向かった。




 この先に待ち受ける苦難など、知る由もなく。

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