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無限に終わらない  作者: 睦月煉
第1章   邂逅と離別
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9話     世界を知る


「最近の大砲って砲弾じゃなくて剣をぶっ放すのか…?」


 あと一歩か二歩進んでいれば間違いなく響希に突き刺さっていたであろう、突如として飛んできた剣を前に、響希は頼んでもいないジョークをかます。

 しかし麗翔はそれについて何も言えないほど、心臓の鼓動を高らかに鳴らしていたのだ。


 そして剣の飛んで来た方向、建物の屋上あたりをふと見上げると、ぽつりと人影が一つ。



「あれは──」



 誰なのかと、そんな疑問を言いかけた時だった。



「すまない、うちの副団長がとんだ無礼を」


 緊張をほぐすように建物内から走って出て来たのは、金色に近い茶髪を爽やかに靡かせ、大人びた安定感のある男。高身長で和やかで、絵に描いたようなイケメンだ。


「無礼っていうか死にかけたわ!?」


「何か用か……って金髪のキミ、酷い怪我だな」


「すげぇナチュラルにスルーすんのな!? いやちっと凶暴な獣にがぶがぶされたんだけど……これって治せるんすか?」


「……とにかく君は、すぐにでも治療を受けた方がいい。詳しい話は中で聞こうか」



 歓迎が謎の剣飛ばしなのは流石に麗翔の心臓に悪かったが、割とすんなり話を聞いてもらえることに麗翔は安心した。


 こうして彼らは、兵団基地の建物内へと入っていく。



* * * * * * * * * 


 

「魔獣の出現に、謎の組織か」


 響希は治療のために別に部屋へ連れていかれ、麗翔はカノンと隣り合うイスに座り、先程出迎えた茶髪の男、エリクと話していた。


 ループ前に起こった事柄は無視し、ひとまず今さっき起こった全てをエリクに伝える。


「そして君達は気が付いたらここにいて、自分が住んでいた場所すらもわからず、魔獣や魔法など常識的に誰もが知っているようなことを知らず、挙げ句の果てに文字まで読めないと」


「はは、そうみたいです……」


「清々しいくらいに怪しさを隠さないな。だが、スパイにしては文字も魔獣も知らない人間がやる事ではないと思うし……それほど問題じゃないか。山奥の村にでも住んでいたのだろう」



 スパイの疑いが少し前までかけられていたほど、殺伐とした世界なのだろうかとなんとなく不安になるが、少なくともエリクの口調は優しいままだ。麗翔もそこに関しては安心できた。



「あ、疑いが晴れて良かったです。故郷についてはあまり記憶がなくて、ホント気が付いたら向こうの海の辺りにいたって感じで……」


「それは可哀想な話だが……まぁそう堅くならなくていい、それについては個人として相談は受けよう。問題はこの国に魔獣がいるって事だ、この国は十数年前にロベリアって国と戦争をしてたといったろう?」


「はい」



 再びエリクが長話をしそうなので、麗翔は単調に返事を返す。しかしこの世界について詳しい情報が得られるなら充分すぎるくらいに儲けものだ。


「戦力差はほぼ互角のところで、ロベリアが突然退却して終わったんだが……少なくともその時にロベリアの連れてきた危険な魔獣は絶滅させたハズなんだ」


 先程も出てきた単語、魔獣。名前からして物騒な感じしか漂わないので、麗翔は魔獣についての疑問を口にした。


「えっとその……魔獣、というのは?」


「どういった経緯で生成されるかはまだ判明されていないが、魔石という物質がある。それを生物が摂取すると、魔石によって変わるが特殊な力が使えるようになるんだ。代わりに理性が侵食されて凶暴化するがな」


「……え」


「そして魔石を食べて凶暴化するのは、もちろん人間だって例外じゃない」


「まさか、人間も……?」


 カノンが引き気味で言葉を呟いたのを聞いたエリクは、追い討ちするように衝撃的な話をした。

 それを聞いて青ざめるように麗翔は引く。というか人間でもそんな不気味な石ころを食べようとする無鉄砲な輩がいたのかと、異世界の治安を気にしてみる。



「その通りだ。人間はある程度の理性があるから、場合によっては1つ2つくらい耐えられる場合もある。しかし、もし自我を保てなくなれば魔獣よりも脅威になりかねない危険性を孕んでしまうんだ」


 魔法、魔石、魔獣、魔人。頭が追いつかないほど覚えることが多すぎて混乱しそうではあるが、世界の謎の一端は何となく理解できた。

 そういえば日本で麗翔を襲った黒フードの何か、それはもしかしたら魔人だったのかもしれない。


「だからこの国では、魔人は存在するだけで処罰、つまり投獄の対象となる。魔石を見つけたらすぐにこの国の兵団組織、エリシム兵団に渡すことが義務付けられているんだ。いくら理性の強い人間だって戦いの内に死にかけたり、危機的状況に陥って理性が少しでも欠ければ、無意識に暴走してしまうのだから」


「…………」


「あと、何か聞きたいことはあるかな?」


 麗翔は唖然とその話を聞き、反応に困っていた。だが、初めからその世界で生まれ育った立派な兵士に質問できるという嘗てないチャンスだ。

 カノンの方を横目で見ると、首を振って私は大丈夫です、とでも伝えるような素振りを見せる。ならば麗翔が自由に質問しても良いのだろう。そう思った麗翔は、


「あ……えっと、過去の戦争について教えてください」


 麗翔のような凡人が戦争に携われるかといえば到底無理な話だが、世界の歴史等については知っておく必要があると思ったのだ。

 何せこれから先の人生、もしかしたら一生この世界で過ごす事になってしまうかもしれないからだ。



「十数年前、君が生まれた時くらいだろう。あれはこの国にとっても大きな痛手だったらしい。王国が誇る我々エリシム兵団も、半数以上の犠牲者を出してしまったと。以前までは細かい階級や役職なんかあった大組織が、今じゃただの自警団みたいになってしまったよ」


 それを聞いて、麗翔はすぐに返答をすることができなかった。自分のした質問の不謹慎さに気付いたのだ。恐らく今会話しているエリクの友人なども命を落としてしまった事であろう。そう考えると申し訳なさで胸がいっぱいになる。



「……なんかすみません、無粋な質問をしてしまい」


「いや構わないさ、君もわからないことだらけで大変だろう」


「はい、すみません」



 会話が途切れて気まずさが部屋に蔓延しそうになるも、それを察したようなエリクは再び話を元に戻した。


「他に質問はあるかい?」


「あ、その……魔法を使えるようになるにはどうすればいいのでしょうか」


 麗翔はそう、僅かに笑みをこぼして尋ねた。

 異世界ファンタジーといえば魔法だ、最後の質問は魔法についてしかない。魔法を知らずして異世界ファンタジーなど過ごすわけにはいかない。

 と、麗翔はそんな気持ちで尋ねた。



「魔法か……人それぞれ適性はあるが、魔力を持たない人間はいないだろう。人間、微量でもほんの少しは魔力を持って生まれるものだ」


「僕みたいな凡人でも、使えるかもしれないってことですか?」


「そういうことだね。ちなみに魔法具っていう、道具でありながら魔力を持つ機械も開発されているんだ、それよりも……何なら自己防衛のためにもなるし、魔法を少し学んでみるか?」


「あ……その、是非お願いします。 あ、カノンはどうする?」


「じゃあ……私も、少しだけ」


 子供の頃からあれ程夢見た「魔法」が使えるかもしれないとなると、体が震えるほど迸る喜びがこみ上げてくる。

 カノンも真顔だが、何となく心のどこかでワクワクしてそうな感じが伝わってくる。深く考えすぎなのかもしれないが。


「アモネという兵士がいるんだ、新兵の指導係である彼女に君を任せよう。 君に近しい年齢だしきっと打ち解けられるだろう、ついて来てくれ」


「はい、ありがとうございます」



 そういって麗翔とカノンはエリクに続いて席を立つ。扉までつくとエリクが扉を開けたまま待ってくれている。気遣いのできる紳士的な人間なのだろう。

 そうして部屋を出ると、廊下の先には響希が見えた。


「あ、響希。怪我は治ったの?」


「おう、痕は残っちまったが治ったよ、異世界の治療ってやべーな。てかどこか行くの?」


 そう響希が尋ねると、麗翔が返答をしようとする前にエリクが答えた。


「これから魔法について教えるんだ、君も来る?」


「うおお、魔法かよ! 行く行く!」


 と、子供のようにはしゃぎながら響希は小走りでついて来る。無邪気なものだと、いつでも明るい彼を見て麗翔はなんとなくそう思った。




* * * * * * * * * * * 



 そのまま少し歩き、彼らは敷地内の運動場のような広い平地に着く。地面は普通の砂で、まさに学校の校庭といってもいい雰囲気の場所だ。


 そしてそこにはエリクと同じような茶髪を肩の下まで伸ばした、比較的背が低めの女性が立っていた。

 顔付きは高校一年生の麗翔より一歳ほど歳上くらいに見える、そんな女性。


「あ、変態シスコン」


「変態シスコン!?」


 すると彼女は、唐突にエリクの凄まじい性癖を暴露した。というかシスコンという言葉自体が異世界に存在する事すら違和感を覚えるが、ひとまずそれはいい。

 ともかく、そんなあまりの衝撃に麗翔は大声で復唱するが、流石に響希やカノンもぽかんとしている。


「おいおいアモネ、変態はないだろう」


──シスコンは否定しないのか


 麗翔は声に出さず心の中でツッコミを入れながら、黙って二人の会話を耳に入れる。



「……で、要件は?」


「今日は時間があると思うし、彼らに軽く魔法について教えてやってくれないか」


「なんかだいぶ唐突だね、時期外れだけど入団希望者か何か?」


「入団云々はともかく、怪しい人間ではないよ。金髪の子がヒビキ、黒髪の子がレイト、そしてこの女の子がカノンだ」


 すると彼女、名は話を聞く限りアモネというのだろう。アモネは何かに気付いたようにニヤリと笑いながら言った。


「あ、もしかしてあわよくば兵団に招こうとしてるでしょ!? 私、その子からすっごい魔力を感じるわよ……!」


──これはまさか、僕の超絶魔力による異世界チート生活始まりってやつか


 などと過度な期待をする麗翔だが、そんなご都合展開が運良く起こるわけでもない。

 案の定アモネの指差す方向は、麗翔から少し右にそれたところ──カノンの方だった。


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