地盤固め……沈下?
朝です。ギルドに行ったのはもう三日前、このフィファニアの王城に来てから3日目の朝。目覚めた場所は王城近くの兵士が積める官舎の一室。三人部屋ですが主さんと二人で使わせて貰ってますよ。
主さんは隣のベッドでまだ気持ち良さそうに…「うーうーうう!?」…うなされて寝てますね。まだ3日前のあの事がダメージに成ってるみたい。
いやー、3日前はちょっと危なかった。 自分一割、主さん九割ぐらいの割合でね。それにしても今思い出しても本当に…下水道にラットがあんなに居るとは思いませんでしたよ。いえ、ラット討伐依頼を受け付けたのは、ブレイクスフィアのゲームの初期に発生するお得なイベントを覚えてたからですよ。
滅びの害獣。
このイベントはほぼ全勢力共通で下水道とかである元凶のせいで大量に増殖したラット系の害獣、そのラットが町に溢れて勢力の3分の1が壊滅するイベント。滅びの害獣イベントの前の大量に増殖する前の初期のある一定期間に元凶を排除出来ればイベント発生を止めることが出来る。初期に阻止すれば称号やら経験値的にも勢力的にも利益のある全勢力共通のお得イベント。
阻止しなきゃ勢力壊滅の危機ですがね。
元凶の発生時期はゲーム初期の初期、下水道で100ぐらいのラットを倒せば襲撃してくる元凶を倒せばイベント阻止。そんな訳で大量に居る筈のラットを狙って、マップ情報と人に聞いた情報を頼りに王都の下水道に行ったんですがね…確かに下水道にはゲーム通りにラットが大量に居ましたよ…けどね!!マップの赤い点、敵の表示が一万を越える位いたんですよ!!予想外でしたよ!ちょっとした軍隊ですよ!出てきた数が倒す予定の百倍ですよ!数キロは有る蜘蛛の巣みたいな下水道のマップに隙無く赤い点だらけですよ?
出現した敵は予想通りラットです。ラットだけです。ラットの大きさは小型犬程。ラットの強さはゲーム中最弱、初期レベルでも楽に勝てるアリんこレベルです!けどね!数の多さが…マップ範囲外からウジャウジャ、ドンドン沸いて来るんですよ!
無制限に沸いてくる蟻の巣を想像をしてください。
流石にそんなアホらしい数だと、レベル上げのお得場所どころかただの死に場所です。そんな中に入っちゃいました。
逃げようにもその隙も有りませんでしたから応戦しました。
まぁ何とか一つだけ大きな赤い点、大量発生の元凶、大きなラット、クイーンラットを偶然にも見付けて倒しまして残ったラットは逃走、イベント阻止に成功。
けどね結局倒したラットが4568。…予定の四〇倍ですよ!
初の戦闘ですよ!死ぬかと思いましたよ!終わった後は精神的にボロボロでしたね。……戦闘の最初は慣らしで一匹ずつ戦うつもりだったんですけどね。ラットが最弱モンスターの癖にあんな好戦的だと思ってもいませんでしたよ。
……主さんの悲鳴のせいかもしれませんね。
まぁ最初はキツかったですが何とか剣術スキルとレベルが上がったステータスに新しく手に入れたスキル、それにラットを百匹倒して手に入れ害獣駆除の称号と、1000匹倒して手に入れた恐怖の殲滅者の称号のお蔭で戦えました。
ああ称号とはスキルと少し違い行動によって付加される物です。
例えば連続して百回逃げたら逃走者という称号が入ります。
逃走者の称号は持ってるだけで速さが基礎から五%アップ、ボス以外の敵からの逃走率が30%アップになるよ。
今回手に入れた害獣駆除と殲滅の称号は、害獣駆除がラット系統等の害獣に分類される敵を百匹連続に倒した時に手に入る称号。
効果は害獣系統への特効と威圧感、威圧感の効果は動きを止めたり相手の動きを鈍らせる。
恐怖の殲滅者はレアと言うか手に入れるのが面倒な称号。
同一の敵だけを1000匹倒した時だけに手に入る称号。
効果は……討伐の経験のある相手を混乱させる。
両方の称号の効果は相手との強さの差で効果が変動。
今回は恐ろしいのが数だけの弱いラットですから効果抜群、称号を手にいれてからは、結構な数が動きを止めるは混乱するは同士討ちするわ、少しは余裕が出来て雑魚は幾ら集まっても雑魚なのだぁ!がリアルに出来ました。
それと称号の効果なのか称号を手に入れてから、生き物を殺す害獣のラットを殺す事への嫌悪感が無くなって精神的にも余裕ができたんですよ。
……精神操作されてそうで怖いですけどね。
それでラットを倒した経験値のお陰でレベルは1からレベル11までアップ。ええ、幾ら初期敵でも上がりが悪いですよ。
代わりに職レベルに関しては途中で剣士レベルがカンスト。
職のレベルは10でカンストです。カンストして得られたスキルは剣の装備時にステータスの上がるソードマスターです。
カンストした後はラット討伐の途中から職業を変えて旅人にしました。旅人職は体力以外は剣士職よりステータス的に戦闘力は落ちますが、得られるスキルは旨味がタップリです。
中でもスキル旅人の心得、効果は微量ですがヒットポイントに体力の自動回復。あれが無ければ体力切れで途中で倒れてましたね。
大量のラット討伐で旅人職もカンストしたので現在の職業は旅人の上の職業冒険者。
ああそれで終わった後、ラットの死骸の運搬に関しては、アイテムボックスにネズミの山盛りというアイテムとして百匹で一纏めに出来たので持ち運びは一度で終わりました。
それで持っていたらギルドランクが2つ上がりギルドランクEとなりました。ラット4568匹の持ち込みは前代未聞だそうです。
ランクを上げるのが目的だったんで良かったんですが……その代償は少し有りました。
実はあの場所、下水道はラットの大量発生で立ち入り禁止地区に成ってたそうです。知らなかったんだろうと少し怒られるだけで済みましたが、町を結果的に救ったのに何か要注意人物みたいな扱い。
それと少し……目立ち過ぎました。
後の代償というか不都合は自分じゃ無いですよ?ラットの大量持ち込みでギルドの受け付けが大変な事に……残しとくと腐りますからって全部出したのは……やっちまたぜ、ですね。
……後処理は大変でしょうね。
「ネズミィ!?ネズミ!!!?」
ああそれと主さんが3日前から寝てる時はうなされてます。
護ったので傷一つ無いんですがね?
まぁ放置です。
さて本当はギルドに行きたかったんですが、朝から呼び出されてます。訓練です。ほら主さん起きて訓練に行くよ?
「ネズミぃ!?」
ネズミは此処には居ないから落ち着いてや。
「!?!?」
担いだら暴れる暴れる。
ネズミの幻覚でも見てるんだろうか?
次の依頼どうしようか…ラットでもうひとつ上げたかったんですけど…もうラットの討伐は駄目ですか。またラット討伐に行ったらトラウマになりそうですし……だからと言って主さんを置いてく訳にもいきませんし。
そうなるとEランクにあった良さそうな依頼は……ギルドカードに出てる依頼は……ムカデとナメクジどちらが良いかな?
まあ今は無理ですがね。
…さて主さんを背負って外に出ましょうか。
扉の前に何時も通り兵士さんがいましたよ。何で何時も居るんでしょうかね?
何時も通り挨拶をしますよ。ご苦労様です。
相変わらず引き吊った顔で挨拶を返してくる兵士さんを放って訓練所に行くよ。