白い世界。
地震、雷、火事、ハルマゲドン、理不尽な出来事ってイヤだよね。
ある日だった。寝て気付くと不思議な空に浮かぶ宮殿とその下には広大な湖が見える場所に居た。自分が居たのは湖の淵。
夢と思ったら宮殿から出てきた羽を生やした神様と名乗る不思議中年に出会うと、何故かその神様から謝られて転成して欲しいとか言われた。
断っても転生は絶対と言われ数十の宝珠みたいなの入れられて地球に似た別世界にいかされた。
行かされた最初は夢と思ったけど身体は完全に別人の、新しい身体になっていた。新しくなった体は六歳程の体、新しい親も居た。元の持ち主の身体を奪ったとかでなく、産まれる筈のない赤ん坊の身体に魂が入ったらしい。転成後の意識が戻ったのが六歳。
強制的に始まった新しい別世界の生活…異世界と聞いてたのに前の地球と同じ…転成先はたまに事故のニュースが有るだけの平和な日本だった。平和なので転生した時に貰った力を使う必要もなく、学校に通ってアニメを見てゲームをやり漫画を見る。別世界での生活は怠惰に十年程何事もなく過ごせた。
ホント……今までは何事もなく過ごせてたんだけどねー。
高校での授業の終わり……唐突にまた理不尽に終わりを迎えてしまいましたよ!!
また!また此処に来た!
高校で在席しているクラスでの授業が終わり担任の磯ヶ谷教諭が出て行ったすぐあと、自分+クラスメイト全員が教室に溢れた不可思議な光で包まれた。
それで目の前一杯に広がっていた光が消えると自分達が居たのは教室でなくて、ふわふわとした霧の様な靄に包まれた空間、空に浮かぶ宮殿と湖が見える場所。自分達は気付けばこの世とは思えない異常な場所へと移動。
前に来たことあるねぇ!!
絶対!十年前に人生強制終了させられた後の転生する前に来た所と同じ場所だ!!また転生ちゃうよね?同じ用件ならどうしようか。本当にどうしよう。もう一度の転生は勘弁して欲しい。身体が子供に戻るのキツいんだよ。
「なんだよここ?」「わ、私達教室にいたよね」
「周りの白い靄は何だ?」「や、やだぁあぁ……」
自分の他に混乱してるクラスメイトも居る。
クラスと馴染んで無いんでクラスメイトに特に思い入れとかないのでどうでもいい。ボッチちゃうよ。ただ精神年齢が合わへんだけやで?
「何処ですかここは!!」
7、3分けの真面目そうな眼鏡の西東氏の叫び。自分的にどうでもいい質問、場所は判ってる。場所より此処に連れて来られた理由!一体何でまたこの空間に拉致されたんだ?クラスメイト全員で転生とかないだろうね?
…わかんないなー。状況も判らないので大人しく待つかな。動いたって仕方も無いし昔と同じならそろそろ…………宮殿から出てきた。
「あ、あれ誰かいる!」
女生徒一人の叫びで全員が異質なその存在を見付ける。宮殿から現れたのは……神々しい翼、頭の上に光る輪、巨大な翼の中心にはそこら辺に居そうなオヤジ……異質だ。空に浮かぶ宮殿から重力を無視してゆっくりと降りてきた。
現れたオヤジみたいな存在は以前有った時は神と名乗った存在は自分達を見下すように眺めてますよ。見下すように?今回は態度悪くない。違和感を感じる。少なくとも前の転生の時は親しげだった。そう言えば前は被害者って話だったけ…なら…今回は被害者じゃないから態度が大きいとか?
とにかく予想通り現れた。10年前に出会った存在、以前と変わらない姿で出現。
『良く来たな。会えて光栄に思うと良い…………我は神だ』
相変わらず幸の薄そうな見た目の30代の中年に神って名乗られると吹き出したくなる。
「「変なおっさんが出た!!」」
おお、自分以外の感想も似たようなモノだ。何人か一斉に第一印象を素直に吐き出したね。けどよく不思議空間に出た怪しい人を言葉に出して変なおっさん呼ばわり出来る。………自分のは心の声だ。
『………っっおっ…さん?」
オッサン呼ばわりに相当葛藤してるね。神様って外見変えられないのかな?
「神様か何か知らないけど此処は何処なんです!何で俺達はこんな所にいるんです!」
「そうよ!何でこんな所に私たちは居るのよ!」
クラスのリーダ格。バスケ部所属の高身長な爽やか系イケメン、白木透氏と同じくリア充の佐原さんが代表して質問した。
良くあんな相手に聞ける。
そういえば十年前には自分は夢だと思って殆ど聞けなかったなー。冷静に聞けるとは白木氏はスゴいなー。流石、クラス一のリア充。コミュ力がある……けっ
『教えろだぁ?まずオッサン呼ばわり謝れや…ふん…まぁ良い。
……聞きたいのは此処は何処かか?此処は次元の狭間だ』
「次元の狭間!?な、何でそんな場所に俺達は連れてこられたんです」
『それはお前達が異世界に行くからだよ』
…うん?…イセカイ?…伊勢海にいくと言った?何故海?
「イセカイ?異世界!?い、異世界とはどういう事ですか!何で俺達がそんな所に行かなきゃいけないんですか!」
「ホントよ!意味わかんない!」
「何で俺らが行かなきゃなんないんだよ!」
『ごちゃごちゃと……面倒だな。もう時間もないか
………これ以上の質問は受け付けない』
小声で面倒とか言ったな。オッサン呼ばわりに相当腹を立ててる。微妙なお年頃?神様って年齢とか有るのかね。
「ふ、ふざけんな!!説明しろよ!何で俺らが異世界何かに行かなきゃいけないんだ!」
「いや!説明なんてどうでもいいから元の世界に帰せよ!」
「そうよ!異世界って意味わかんないし、かえしなさいよ!」
「何で私がアンタの言うことを聞かなきゃいけないのよ!」
クラスメイトの反発に同調せずに様子見。海なら何とか成りそうだと思っていたからだよ。
『まったく煩い』
「煩いだと!神様かなんかしらねぇが!横暴じゃねぇか!」
クラスで一番ガタイが良い赤嶺卓也氏が抗議。
その通りだけど……普段はリアルジャイ○ンみたいな性格な赤嶺氏が横暴って言うのは可笑しい。ムカついたとか言う理由で殴られ掛けた事があった。
「…言っただろお前達の意見は要らないと。 では話を進めるぞ。』
「て、テメェエエ!!」
見下した態度の中年に赤嶺氏はキレる。赤嶺氏は怒りのままに猛牛の様に突っ込んだ。怒鳴る気?何て平和な事を考えてたら…………
「おら!!」バッ!!
赤嶺氏は突っ込んだ勢いのまま躊躇なく神を名乗る人物の顔面目掛けて殴りかかった。ええーそれはないだろう。普通でも拉致された犯人にいきなり殴り掛かるとか自殺行為だろ。よりによって神様名乗ってる相手に……………………ああ、神様だって信じてないか。
羽抜きの見た目だけなら神様より二回りは大きい赤嶺氏。赤嶺氏の繰り出した拳の破壊力は、当たり所によっては人体に致命傷を与えるに十分な威力を持っているだろうね。クラスメイトの多くは元凶だと思える相手の撃退を期待してるみたいだ。不安そうなのは倒した後の心配?
自分の目には蟻が太陽に攻撃してる様に見えるんだけどね。
殴りかかられてる本人は……呆れた顔してるよ。
『はぁ…………』パシッ
「ぐ、ぐぅ!」
赤嶺氏の右ストレートで打ち出された拳は神様の人指し指一本で掴まれた。
クラスメイトはあり得ない光景を見たみたいに驚いてる。……まぁ一応…自分的にもスゴいとは思いますけど止めにくそう。別にあんな事しなくて近付く事すら出来ないんじゃ?オレTEEEEって見せたかった?
「う、うそ。赤嶺は空手部のエースだぞ!?」
え?学生の空手部のエースにどうにかされる神様がいた方が驚きだよ。やっぱり神様だって誰も信じてないのか…………うん、見かけのせいか。
「う、くそ!手が!!」
中年は人指し指一本で赤嶺氏の右手が完全に拘束してる 。赤嶺氏は右手を抜こうと顔を赤くして必死だ。けど中年の体は微動だにしない。……あんな中途半端な拘束って何したいんだろ?
『お前、神に殴り掛かるなんて何を考えてるんだ?』
「な、何が神だクソ野郎!!テメェみたいのが神様なんて誰が信じるか!!どうせ全部催眠術か何かだろ!そうじゃなきゃ俺の拳がお前みたいなのにっ!」
赤嶺氏は手を取るのを諦め蹴りを繰り出す。不完全な体制から繰り出された蹴りでも骨を折るには十分な威力を持ってそう。普通の人のならね
ガン!
中年にぶつかる前に透明な壁の様なモノが蹴りを防いだ。バリア?そんな事が出来るんだ。何で最初に殴られたのもバリアで止めなかったんだろ?
「グウウ!?」
バリアを蹴って足を痛めたみたいだ。相当固かったみたい。
『…………そうか………それが答えか』
声に込められた冷たさだけで体が少しブルりとした。次に静かに直接告げられた言葉は赤嶺氏にとっては死刑宣告に聞こえたか?
『……お前に…少し罰を与える』
赤嶺氏の腕は肩口から力付くで雑草の様に引き抜かれた。うわぁ、グロ。
「グギャアアアアアア!!??!?」
赤嶺氏の肩口から血が吹き出した
「キャアアアアア!!!」
「ひ、ヒデェ…………」
確かに血が酷い。腕からドボドボ出てる致死量まですぐかな。
「うでぇあああ!??うであああ!!ああああああああああ!!!!」
赤嶺氏は狂った様に痛みを訴え続けてる。あ、動きが無くなって来てる致死量まで行きかけてるのか。
『これで信じるか?信じるよな?信じないなら、もう一本貰えば信じるか?痛がってないで早く答えてくれるか。貴様の様なモノに掛けるには私の時間は勿体無さ過ぎるんだよ。早く答えろ。もう一本貰うぞ?』
神様が赤嶺氏の暴れる動きを強制的に封じて左腕を持った。
………普通に脅迫だなー。
「ゥグゥ…し…信じる!だから止めてくれ神様!」
赤嶺氏はポッキリ折れた様だ。
『うん?ああ信じてくれたんだな。なら「グウウアア。ウグゥアア」………鬱陶しいから戻してやろう』
そういうと一瞬で赤嶺氏の腕が元に戻った。
……過程とか無しにいきなり戻るの凄いな。赤嶺氏もキョトンとしてるなら痛みとかも無くなってる?まさに神業。……………別に間違ってないよ。
「えっ、ええ!?」
『神を信じるモノは救われるってな。さっさと向こうに行け、お前のせいでだいぶ遅れた。………それともまだ信じてないか?』
「違います!?信じ、てますよ!?」
神様が赤嶺氏の態々肩を持って立ち上がらせると赤嶺氏は悲鳴を上げて神様から離れた。
『質問はあるか?』
全員まっ青になって黙った。小動物みたいに震えてる赤嶺氏のせいかな?いや神様が威圧感を出してるせい?
『よろしい。何か知りたければ質問は行った先に居る人間にすればいい。早速異世界に移動を…あー忘れてたな。
異世界に行く前にお前達には能力を一つプレゼントしてやろう。まぁつまり異世界に行くお前らにチート能力をつけてやるという事だ。ほら、能力はこの扉の先に有る水晶を取れば得られる』
神の合図と共に湖に城の城門の様な緑紫の扉が現れて扉が開いた。扉の先には大きな部屋があり部屋には複数の棚がある。その棚の上に拳大程の全部形が違う色とりどりで…水晶の様な物が幾つも置かれた部屋が見えた。
『あの扉の中にあるのが能力の元となる秘水晶だ。秘水晶はお前らの数より三つ多い46ッ個ある。秘水晶から得られる能力は其々違う。秘水晶自体の能力は秘水晶を手に取れば判る。
それと秘水晶を手に取ってから能力を得るまでは20秒間は掛かる。イヤな能力なら習得前に秘水晶を離せば能力は習得出来ない。 これが能力の習得方法だ簡単だろう。
そうそう最初に言ったが秘水晶の能力は色んなのがあるが同じ能力はない。全部一つしかない。……勿論中には外れもある。だから良い能力は最初の方で取られていくだろう。後に残るのはお前らに取っての外れだけだ。全員が選んだら異世界に転送する。判ったな?じゃあ説明は終わりだ…………選んでくるといい』
台詞が終わると共に四人ほどが扉に向かい走り出した。
はやいな。中には赤嶺氏も居る。余程怖かったのか
『うん?他は良いのか?…"生き残る"為には早く良い秘水晶を選らんだ方が良いぞ。ああけどな、この能力はお前達の命を守る武器だ。それと落とし穴も有る慎重に………途中なのにもう向かった』
今度は自分以外は全員が走り出した。
よく神様の話を迷わずに信じるな?というより良くあんな怪しい扉に入れる。命の危機とか言われたから?伊勢海になんの命の危機が有るんだ?………海の上に落とされるのは普通に命の危機だった。自分みたいに濡れるだけとか無いな。神様と二人きりで残されるのも嫌だし…行こうか?
『うん?ひとり残ってるな。お前も早く………あれ?』
感じが10年前と同じ普通のマダ○いや中年みたいな表情に戻った。と言うか気付いてなかったんだ。
『な、何で君が居るんだい!?ミスった?や、やっちゃった!? あのクラスだった!?』
何か前に転成させられた時と同じ反応なんですけど、怖いんですけどね。
『えっ嘘、そうなの、ま、まぁいいや。………ってダメか。し、しょうがない……の君には残り物とオマケを付けてあげよう! だから許してね』
許してねって完全に前の強制転成の時と同じ台詞!?
貴方の謝罪はトラウマ何だよ!謝らないで下さい!?
『じゃあ今度は転生じゃないよ異世界に転移してくれ。ゴメン、ホントごめん。ごめんなさい、申し訳ありません』
連呼して謝った!?謝る前にモット説明をしてくださいな。前の時の強制転成含めて
『ホントにあの時はゴメンね!』
謝るなら伊勢海行きを止めてくれません?
『無理、ゴメンね!き、きっと楽しいよ!新しい世界を楽しんて♪』
海に落ちても新しい世界は開けんのよ!!って視界か白い光で!転成前と同じ光景!?
あーという言葉を心の中で最後に言って自分は消えた。