恋の定義 [ないものねだり other side]
精神的NL、肉体的BL注意。
いつから間違ってしまったんだろうか。
ただ、頬に触れていたかった。
ただ、抱きしめていたかった。
ただ、一晩一緒に居てほしかった。
ただ、唇を奪って温もりを奪いたかった。
ただ、きみを大切にできる自分でありたかった。
それだけなのに。
“ 恋とか愛とかって、共有するもんなんじゃないんですか ”
恋とか愛とか、奪い合うもんだと思ってた。
きみがそう言うまでは。
だって、あのときまでそう思ってたんだ。
相手のものを奪う。取り去る。取り込む。
そんな風にしか見れない、と。
くだらないことで喧嘩したり体だけなのって怒られたり。
いくら弁解しても弁明してもきみは信じてくれなくて、挙げ句の果てには出て行ってって怒鳴られて、だから一日帰ってこなかったら玄関の前で泣きじゃくられて。
一方的に怒られたのも僕のほうだし、出て行けと言われたから出て行ったのに、一日帰らないだけでこんな風に泣くなんてずるい。
だけどしょうがなくぐしゃぐしゃのきみを宥めてあっためて、翌日熱出されて看病させられて。
そんなのが嫌だったわけじゃない。
でも、もっと仲良く、円滑になれるのなら、そうなりたいと願わずにはいられなかった。
もっと素直になってほしかった。
きみの唇から出てくるのはいつだって大嫌いで。
僕のことほんとうに嫌いなの、好きじゃないの、って聞きたいけど聞けない。
嫌いだって真正面から言われたらきっと立ち直れなくなるから。
“ こんど生まれ変わるなら男がいい ”
きみはそう言って、笑った。
表面に貼り付けたような薄っぺらい笑み。
普段どれだけ怒られても拗ねられても、そんな顔をさせた自分を悔いた。
でも。ねぇ。
きみは、僕と友達になりたいの?
恋人っていう関係性は嫌?
そんなに安定と安心が入り混じった幸福が欲しいのなら、
なってあげるよ。
生まれ変われたら。
そう思った。
でも、今はどうだろう。
男に生まれて。
きみに出会って。
あぁ、いいなぁと思って声をかけて。
きみが望んでた、僕にとっては思い通りの友達という地位を確保して。
ふたりで笑い合って一緒に過ごして。
それは前と同じように見えて……、でも根本的に違って。
それでも。
それでももどかしい。
あの頃のように躊躇なくきみのなかに踏み込めない。
もっと近づきたいのにできないなんて。
もっときみに近づきたい。
きみに触れたい。
きみを愛したい。
きみに愛されたい。
どれだけ怒られても、傷つけられても。
きみが、欲しい。
“ ああ神様。またあの子に触れられる関係をください。 ”
あー。
燃え尽きた。
こんどは百合百合させます。