第七話
やっと異世界だ……。
もう疲れたよ、パトラッ〇ュ。
こんな駄作を見てくださっている方々に感謝を。
屋敷のドアを開けた俺達を迎えたのは、夏特有のあのうだるような暑さだった。
そう、今は夏休み。学生達が日々の勉学の疲れを癒すために用意されたものだ。
もっとも、提出物を終わらさなければ手痛いしっぺ返しをもらうが。
そんな謳歌するはずだった休みに、俺達は異世界なんてものに向かっている。
帰って来れるかはわからないが、俺と戒の学校は大丈夫なんだろうか。
……まあいいか。
「ところで母さん。俺達はどこに向かうんだ? 」
確かに異世界に行くとは言ったが、家の中で道具を使って行くものだと思っていた。
「家の中で使ったらね、半径200メートルくらいが更地になるわよ? 」
その答えを暑いからであろう、既に女教師スタイルから涼しげな白地のワンピースに着替えて、白い日傘を差した母さんが答えた。
って、なんでそんなに危険なんだ。
「満ちている霊力が段違いだからね。霊術を使うと周りの霊力が暴走するの。だから周りに被害を及ぼさないように、砂漠から転移するわよ」
地球は凄いんだなー。……ん?砂漠?
「……か、母さん。ここら一帯には砂漠なんてありませんよ? なにかの間違いですか? 」
俺と同じく嫌な予感がしたのか、この暑い中で冷や汗をかいている戒が母さんに聞いた。
「この辺りに砂漠があるわけないじゃない」
なに言ってんの、と言いたげな表情の母さんに、戒は安堵を顔に浮かべる。
だがその安堵は一瞬にして砕かれた。
「――海を走って渡って行くに決まってるじゃない」
……ですよねー。
「でも母さん、俺はおろか、戒すら海は走れないけど」
「大丈夫、私が担ぐから」
ぐっとサムズアップ。いや、普通は無理だから。
だいたいなんでそんな身体能力があるんだ。
「それはね、乳母式体術『ゲドゥルト』の鍛練のおかげね」
「な、なんですか……それは」
うん、俺もそう思う。そもそも乳母に体術も糞もないだろう。
「格言は、『耐えよ堪えよ。赤子とは、かくも無垢で凶暴なのだ。忍耐を忘れるな』よ」
……俺は、どう突っ込めばいいのだろうか。誰か教えてくれ。
「赤子は凶暴? ……僕にはサッパリわかりません」
「ツァイリングの赤ん坊はね、霊力を纏って手足を振り回すの」
どこか遠い目をしながら語る母さん。
「でもそれじゃあ僕達も暴れたと言う事ですよね。地球で霊力を纏っても大丈夫なんですか? 」
「そこは大丈夫よ。あくまで『纏う』だけだから。『変質』させる訳ではないからね」
何故か得意げに答える母さん。
「そうですか、安心しました」
そしていつもの事だからか、軽く流す戒。
「とりあえず、行くわよ」
クラウチングスタートの体勢を取る二人。
ってやばい。俺も慌てて準備をする。
「よーい、ドン!! 」
いつの間にか畳んでいた日傘を振り回しながら走り出す母さん。危ないわ!
「ってちょっと待て! 俺を置いていくなぁぁーー! 」
――そんなこんなで、砂漠についた俺達。
何故だろう。何故俺だけ汗をかいているのだろう。
……人体の不思議だ。
ん?海?母さんに抱えられたさ……。
「よーし、じゃあ行くわよ! 」
「ち、ちょっと母さん! 少し休憩しましょう! 体力が持ちませんよ! 」
そうだよ、少し待ってくれ。
「もう、仕方ないなぁ。これが発動するまでの30秒だけよ」
そういって、時計のようなモノのボタンを押す母さん。
「……結局待ってないような気がするけど、まあ覚悟は出来てるよな、戒」
「バッチリですよ、兄さん」
二人で頷きあう。
これからの緊張がほとんどだが、少しだけ期待している自分がいる。
……楽しい異世界になるといいんだがな。
「では……しゅっぱぁーーつ! 」
母さんがそう言った途端、俺達は激しい光に包まれ、思わず目を閉じた。
余談だが、悠達がツァイリングへ向かう際に発生した光は、一瞬地球を覆っていた。
『えー、こちらが謎の光が発生した場所との事です! 見てください、ざっと半径200メートル程度砂漠が消し飛んでいます! これは一体なんなのでしょうか。同時刻くらいに目撃された、海を走る人間との関係性はあるのでしょうか!? 』
……という感じに、世界を一時期騒がせたりしたのだった。
あれだね、書くこと無いね。
強いて言うならば、感想、誤字脱字、アドバイス等ありましたら、是非ともお願いします。