第五話
なんかもう、ね。
最後あたりは力尽きました。
今回はシリアス(笑)が序盤にあります。
P.S.説明回は終わったといつから錯覚していた?
「……これが、私達の、と言っても私の事ばっか語ったけど、過去の全てよ」
……言葉が出なかった。
母さんは、俺達がのんきに赤ん坊をやっている間、壮絶な人生を送ってきたのだ。
言語の壁は? 戸籍は? 家は? 貴金属があると言っても売れたのか? ……きりがない。
そう、この世界で暮らすには、己が身に降りかかる問題が多すぎてきりがないのだ。
「辛くは……なかったのですか? 」
愚問であろう。戒ならその辺りはわかっているはずだが、聞かずにはいられなかったのか。
「そりゃ、辛かった。投げ出しそうになった。何度生きる事を諦めようとしたかはわからない」
俺なら確実に投げ出したであろう。
「それでもね、私はあなたたちの笑顔があったからやってこれたの。純粋な笑顔を向けられて、ママ、なんて呼ばれたからには諦める訳にはいかないわよ」
そういって母さんは俺達を見た。
その瞳からは、慈しみの感情が溢れている。
「私が諦めたら、あなたたちは死んじゃってた。そんなの、私を信じて託してくれた王様にも申し訳ないしね」
胸の内から熱いものが込み上げ、俺の目から出ていく。
母さんは、どうしてそんなに頑張れたのだろう。
所詮俺達は他人でしかないのに。
そんな考えがばれたのか、母さんは頬を膨らませた。
「そんなことないわよ。あなたたちは私の立派な子供よ。まあ最近は一人の立派な男にもなってきたけど? 」
なんだか妖しい視線を俺に向ける母さん。
そんなものは無視して、今は感情をそのまま言葉にする。
「……ありがとう。本当にありがとう、母さん」
「先を越されてしまいましたが、僕からも。本当にありがとうございます。母さん」
そう言うと母さんは少し涙目になり、どういたしまして、と言った。
「……はい。これで湿っぽい話は終わり!フィニッシュ! 」
パンパン、と手を叩く母さん。
……そうだな、今はこれからの事を考えよう。
さっそく戒が口を開く。
「では、先ほどの説明の中にあった、『霊術』とはなんですか? 」
「霊術かぁ……。そうね、有り体に言うと、霊力を使って発現する魔法よ」
ちなみに魔術は魔力を使って発現するものよ、と補足説明を入れる母さん。
「それは、どういったものなんですか?また、地球では使用出来るのですか? 」
「えっと、霊術は神様に祈りを捧げて、霊力を献上してその対価として発現したいものを起こすってかんじね」
また黒板をどこからともなく召喚した母さん。
これが霊術なんじゃ?と思ったが違うらしい。
「地球は満ちている霊力が強すぎるから、仮に発動したとしても効果がありすぎて使えないわよ」
それに、と言葉をいったん切る母さん。
「ここ地球には、神様はいないのよ」
どこか自嘲的なニュアンスで喋る母さん。
「なるほど、納得しました。兄さんは、聞きたい事ありますか? 」
俺に水を向ける戒。そうだな……。
「じゃあ、霊術は誰もが使えるのか? 」
やっぱりこれだろう。折角行くのだし、俺も使ってみたい。
「使えるけれど、信仰する神によって使える霊術は変わるのよ」
へえ……。どんな神様がいるのだろう。
「結構多いし、知らないのもいるから全部は無理だけど、代表的なものを紹介するわね」
そう言って、黒板に字を書きはじめた母さん。
「まずは、『癒し』を司る女神、『クーア』。特徴としては、司るものからわかる通り治す事に長けている霊術が多い」
「後は、『戦い』を司る神の『シュトライテン』や、『光』の『リヒト』に『影』の『シャッテン』」
今度は右端と左端に二柱の神を書く。
「そして、『善』を司る『グーテ』と『悪』を司る『ブーゼ』」
「この二柱はとても力が強い神で、一番有名な神なの」
少しといっても多いな。全部でどれだけいるのだろう。
「それと、自分の望んだ神様の加護を必ず得られるって訳ではないの。神様に気に入られなければ加護は得られないからね」
神様はどういう基準で選んでるのだろうか。
「逆に、神様から選ばれるなんてこともあるのだけど、これは『神託』と言って、普通より強い加護を得られるの。でもこれは10年に一人いるかいないかくらいなのよ」
俺はやっぱ、ドカンと派手なのを使いたいな。
そう言うと、二人とも俺にジト目を飛ばして来た。
「兄さん、霊術は戦う為だけのものじゃないですよ」
うっ……そうだよな。戦う為の力なんかより人の役に立つ力だよな。
「そう思える悠くんは優しいね」
母さんからウインクを頂いた。
理由はよくわからないが、ごちそうさまでした。
えっと、皆さんも両親に感謝しましょうね。
さて、次回か次々回あたりでようやっと異世界に行きます!
厨二成分全開でいきたいと思います、はい。
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