第十五話
やっと街に着いた……。
今回じゃなく、次回はちゃんと街が出てきます!
というか、進みが遅いですよね……。
ふと、俺は思い出した。
さっき俺、霊力纏っていたよな、と。
早速、この身体に流れる霊力を知覚して、全身に纏うようにイメージする。
途端、今までの疲労が嘘のように体が軽くなった。
と同時に、何故今まで気付かなかったのかと少し憂鬱になった。
気を取り直して、ユイの背負っているものを持とうと口を開く。
「ユイ。今さらだが、俺がリュックサックを持つよ」
それを聞いたユイがこちらを向くと、少し驚いた顔になった。
「悠くん霊力を纏えるんだ。私は中々出来ないのよね」
掌に霊力を発現させるユイ。だがしかしその霊力は、不安定にゆらめいた後フッと消えてしまった。
「兄さん、霊力とはどのようなものなんでしょうか? 」
さっきからコチラを見てウズウズしていた戒が言って来た。
……その気持ちはよく解る。男だったら1度はやってみたいもんな。今は女だけど。
「何て言うか、こう、もう一つの血液が流れてるみたいな」
俺の拙い説明を受けて、目を閉じる戒。
一寸の後、目を開いた戒の体には、霊力と思わしい薄い緑色のオーラのようなものが纏わり付いていた。
「ありがとうございます兄さん。おかげで出来ました」
ニッコリと微笑む戒に、一瞬心を奪われたが、内心慌てて何事もないように繕う。
「そうか。あんな説明でも役に立てたら嬉しい。というか、人によって、霊力の色って違うんだな」
とここで、微妙に悔しそうな顔をしたユイが、リュックサックを押し付けて来た。
「戒ちゃんまで……。私だけ、霊力操作があんまり出来てない……」
落ち込み出したユイに、戒が慌ててフォローを入れる。
「いえいえ、その代わりに、あの馬鹿力があるじゃないですか。僕が霊力を纏っても、力では劣ると思います」
……戒よ。それはフォローとは言わないと思う。
案の定、ユイは余計に落ち込みだした。
「どうせ、私は馬鹿力しか取り柄のない女ですよーだ」
拗ねたように頬を膨らますユイと、ワタワタと慌てだす戒。……ぶっちゃけ、二人ともかなり見ていて可愛い。
「ぼ、僕よりも家事だって上手で……」
「……それよ!! 」
ここでユイが、いきなり天啓を授かったかのような表情になった。
「な、なんですか? 」
「その僕って言うのをやめるのよ! 」
……女の人って、話がよく逸れるよな。皆もそう思うだろ?
……って、皆って誰だよ。
受信した電波を頭から追い出し、二人の話に耳を傾ける。
「せっかく可愛い女の子になったんだから、一人称くらい直すわよ! 」
なんだかやたらとテンション高いな、ユイ。さっきまでのネガティブはどこに行ったんだ。
「変えるにしても、どうすれば良いんですか? ……そうだ、兄さんはどんな一人称が良いですか? 」
話の矛先をこちらに向けるな。
だけどそうだな、強いて言えば……。
「今まで通りで良いんじゃないか? 」
正直今までの方が違和感がないと思う。そう思い、ユイを見ると……。
「なら、戒ちゃんはこれから僕じゃなくて、ボクって言うこと! 」
「ぼ、ボク……ですか」
……なんだろう。変えなくて良いと言った矢先にあれだが、前よりも似合っている。
何が違うのか良くわからないが、同じなのに全然違うように感じる。
ドヤ顔でサムズアップを繰り出して来たユイに、こちらもサムズアップで返した。
「そうだ、後は微妙に発音に違和感があるから、戒ちゃんはカイちゃん。悠くんはユウくんにするわよ」
こちらでは、本当に僅かだが発音が違うらしい。
話が一段落ついたので、俺達は再び歩きだす。
道中の魔物に、あの蛇は一切出て来ず、ネズミばっかりだったので、ユイがあっさりと駆逐した。
そして、ついに周りの景色が砂漠から石造りの道や木々に変わり、遠目に建物が見えてきたのであった。
「やっと見えたな……」
砂漠を抜けて、少し安堵するもつかの間、草の茂みを掻き分ける、ガサガサと言う音が鳴ったかと思うと、俺達の前に5人の男が立ち塞がった。
そいつらの格好を見ると、俺達は思わず呆然とした。
何故なら、そいつらはどうみても北○の拳に出てくる、世紀末ヒャッハースタイルな方々だったからだ。
「ヒャッハー! ここは通さねぇぜぇ! 」
……うわ、本当にヒャッハーって言った。
横をチラリと見ると、ユイ達は完全に珍動物を見るかのような顔をしている。
「どうしたぁ。怖気付いたかぁ? 」
下卑た笑い声を上げる、恐らく盗賊達。
「おい小僧! 横にいる女共とありったけの金を置いて行ったら命は助けてやる! 」
余りにも不愉快なので、まずリュックサックを地面に置き、真ん中の青色を残して、周りの黄色を霊力を纏った足で急接近。
接近された事にすら気付かない愚図共を、手加減無しでぶっ飛ばす。
「……へ? 何が? ……ヒィィッ!? 」
周りの仲間があっという間に吹っ飛ばされたのを見て、面白いくらいに怯える青モヒカン。大丈夫か、肩のスパイクズレてるぞ。
「あ、兄貴ィ! どうか命だけはお助けを! 」
敵わぬとわかり、アッサリと土下座をかました世紀末。……兄貴ってなんだよ。
「お前も、吹っ飛べ! 」
ここで俺が吹っ飛ばす前に、ユイが先にストレートを繰り出した。
ドップラー効果を残しながら、空のお星様となったモヒカン。
「……ボク、異世界を侮っていました」
未だ呆然とそう言うカイに、ユイは咄嗟に弁明する。
「あんなのは他には絶対にぜぇったいに居ないわよ! 」
……まあそうであって欲しいと思いながら、俺達はようやく街に到着するのであった。
――今は、優雅にブレイクタイムを満喫しているダリヤ王。
お城にある自室の窓から望む、素晴らしい景色を見ながら、半ば現実逃避気味に紅茶を啜っていた。
「……うむ。我ながら、中々に良い味だ」
そう満足そうに頷くダリヤ王。
今彼は、心身共に疲れ果てていた。
そう、王の仕事量の多さに。
今までの王は本当に人間なのかと疑いたくなるその量に、彼は王としての責務を放り出そうかなどと、かなり真剣に考えるくらいに、凄まじいのだ。
そんな事を考えていると、ふと窓の景色に違和感が生じた事を感知したダリヤ王。
このあたりは、さすが王と言うべきか。何か物体が、こちらに向かって高速で飛んで来ているのに気付いた。
もしや暗殺か、と考え、急いで窓から体を離し、しゃがみ込んで腰に佩いた剣に手を掛ける。
その瞬間、ちょうど窓を通り抜け、飛来した物体が部屋に着弾した。
それの正体を確認した途端、彼の脳は考えるのを拒否した。
余りにも意味不明なのか、茫然自失となっている。
そして、大きな物音が王の部屋からしたので、何事かと急いで入ってくる近衛騎士達。
「殿下、お怪我はありませぬか!? 」
「……ああ、大丈夫だ。そいつの処理を頼む。我は眠るので、しばらくは起こすなよ。絶対にだ」
「承知致しました! 」
そう言って、近衛騎士達が部屋から運び出したモノは、――ユイがぶっ飛ばした、あの青モヒカンであった。
最近、気付いたんです。
主人公一行を書くより、王様を書く方が楽しい事に。
感想や評価を頂けると、作者のやる気が上がったりします。
特にアドバイスなんかは有り難いですので、是非お願いします!




