第十話
なんだかやる気が出たのでまた投稿。
今回で初戦闘は終わります。
石となった母さんを見た途端、俺の中のナニカが弾けた。
「あああぁァ!! 」
敵である蛇を潰す為に接近する。
だが相手は母さんの拳を防ぐほど。とてもでは無いが一撃で屠る事は出来ない。
そんな事を頭の片隅で考えつつ蛇の懐に潜り込み、怒りのままに拳を振り抜こうとした時に、自分の体を流れる血液にも似たモノを感じた。
それを握った拳から放出するイメージで突き出す。
すると、イメージと違わず青白い光が発現し、蛇の胴体を穿った。
「はぁ、はぁ。……これが霊力、か? 」
自分の手に薄い膜のように纏わせてみたそれは、青白く光っている。
これがあればアイツを倒せる。
昏い笑みを浮かべた俺の視線の先に、胴体の穴が煙を上げながら塞がってゆく蛇が映った。
「シャーー!! 」
威嚇するように鳴くそれを気にも留めずに、今度は脚にも霊力を纏わせ、接近する。
自分の速度に追いつかないまま、半ば反射で右腕を突き出すが、蛇は回避した。
そのまま飛び掛かってくる蛇の攻撃はしかし、纏わせている霊力に阻まれてこの体に届く事はない。
殴る、殴る、殴る、殴る、殴る……。
避けられようとも反撃されようとも殴り続ける。
だがしかし、蛇も負けずと再生してゆく。
このままでは千日手となる、と思ったところで、頭の中に直接響くような声が聞こえてきた。
『おもしろそうな事してるじゃねえか小僧』
「……誰だ! 」
殴り続けながらも問う。回りには、後ろにいる戒しかいないはず。
『俺様か? 俺様はとある神様よ。……ちなみに頭の中に念を飛ばして会話しているから、念じれば喋らずとも返事出来るぜ』
『……こうか。それで、お前は誰なんだ。何の目的で俺に話し掛けてきた』
そう聞くと、おどけるような調子で返事を寄越した。
『おうおう最近の若者はせっかちだねぇ。なに、暇なんで見てたらキリがなさそうだったからな。手伝ってやろうかと思ったんだ』
拳打のラッシュをやめ、一旦距離をとる。
こちらの様子を注意深くうかがっている蛇から意識を少し外して、頭の中の声に返事をする。
『手伝うって、どうやって手伝うんだよ』
今はアイツを倒すのにはなんでもいいから力が必要だ。藁にも縋る思いで声の主に問う。
『俺様の加護を授けてやろうと思ってな、こうして参上したって訳よ。とりあえず……ほれっ』
そう言った途端、知識が頭に流れこんでくる。そして理解した。声の主は、自由の神――
『フライハイト、か。それで、どれを使えばいいんだ? 』
『えーっと、アイツの弱点は影だったな。って事で、今回は俺様の部下である影の神、スキアちゃんに手伝ってもらいまーす』
ズシリと体が重くなる。それと共に、もう一柱の神の意識が頭に飛んでくる。
『イェーイハロハロー! 私がスキアよ。……って大丈夫なのハイト? 神の意識を二柱分も飛ばしたら体がもたないわよ』
『大丈夫じゃね? この小僧頑丈だし』
俺をそっちのけで会話を始める二柱。なんだか気が抜けていくのを感じた。
『……で、俺はどの霊術を使えばいいんだ? 』
『あらごめんね、存在を忘れてたわ。テヘッ♪』
……こいつウゼェ。積もりに積もった文句を胸の奥に押し込める。
『え、えぇと……。コレを使えばイチコロよ! 』
俺の異様な雰囲気を感じ取ったのか、少し焦りながらも答えるスキア。
そして頭の中に流れこんでくる詠唱。
『……ありがとう、助かる二人とも』
『お礼は倒してからよ。ちゃっちゃと倒しなさい! 』
『そーだそーだ、小僧の力を見せてみろ! 』
二柱のエールを受け、俺は詠唱を紡ぐ。
「我が自由の神-フライハイト-の名の下に命ずる」
俺の紡ぐ言霊が、力を成してゆくのがわかる。
「自由の眷属スキアよ。我に力を貸し給え」
そして俺の目前に現れる霊術陣。
「我が希うは奈落。総てを飲み込む奈落! 」
俺の中にある霊力が、霊術陣に吸われてゆく。
「願わくば、我が敵に奈落が訪れん事を」
霊術陣は、発動の時を今か今かと待ち詫びている。
「闇に呑まれて堕ちろ。 ――降臨! 」
――霊術はここに完成する。
「堕天奈落!! 」
霊術陣から飛び出した、蛇へ向かって殺到する黒い影のようなモノ。
それが触れるや否や蛇の体は硬直し、だんだんと影に染められてゆく。
やがて影は全身を包み込み、蛇を溶かすようにして消え去った。
――パキンッ
ガラスが割れるような音が砂漠に響く。
何事かと横を見れば、石となっていた母さんが元に戻っていた。
「良かった……」
母さんを助ける事が出来た充実感と戦闘による疲労で、俺の意識は闇へと誘われていった。
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