パクリッ
我が輩は芋虫である。名前はまだない。どこでこうなったか頓と見当がつかない。
春眠の長いトンネルを抜けると芋虫だった。
ある朝何か不安のような夢から我が輩が目が覚めると、ベッドで芋虫になっていた。
芋虫というのは何なのか。手もなければ、足もない。腕も顔も、いや人間の五体のどの部分もない。
枕に登りながら、こう考えた。頭に働きかければ角が立つ。掴み損ねれば転がっていく。
布団の中は窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。
我泣きぬれて、芋虫としてたはむる。
伸びるべきか、縮むべきか? それが芋虫だ。
アイデンティティやら、オリジナリティやら、パーソナリティやらを求めて、我が輩は窓から飛び出して――鳩のやつに食べられた。
パクリッてね。