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『無能な私』を擦り付けてきたブラック社長、私が消えた途端に全事業が詰んだらしいですね?~「ただの雑学」で世界を支配する、最強の成り上がり起業術~

作者: 新里泰久
掲載日:2026/05/02

「君の代わりなどいくらでもいる」――毎日午前三時まで馬車馬のように働かされ、挙句の果てに給料未払いで解雇された真昼。だが、社長たちは知らなかった。会社の全システムを支え、顧客の心を掴んでいたのは、彼らが「無駄」と切り捨てた彼女の膨大な知識だったということを。

どん底の真昼が趣味の「雑学」を武器に起業した瞬間、世界が彼女を求め、元の職場は音を立てて崩壊し始める。

オフィスを埋める、埃の混じった乾燥した空気。

カタカタと鳴り続けるキーボードの音に、意識が遠のく。

視界の端で、飲み干した栄養ドリンクの空瓶が転がった。

「まだ終わらないのか? これだから『女』は仕事が遅くて困る」

背後から突き刺さる、酒とタバコが混じった不快な体臭。

社長の肥大した腹が、私の肩を圧迫する。

爪が手のひらに食い込み、微かな痛みが眠気を飛ばした。

作成しているのは、彼が明日ゴルフで自慢するための「市場分析」という名の、ただの体裁を整えた嘘の資料。

外は冷たい雨が降っているのだろう。窓に叩きつけられる水滴の音が、誰かの嘲笑に聞こえた。

翌朝、渡されたのは給与明細ではなく、一枚の解雇通知。

「君の知識は『実務』に役立たないんだよ。もっと効率的に動ける奴を入れるから」

一円の退職金もなく、私は雨の街へ放り出された。

死ね。

心の中で、何かが弾けた。

半年後。

都心の超高層ビル、その最上階。

私は、シルクのブラウスに身を包み、眼下に広がる街を見下ろしていた。

手元にあるのは、設立わずか三ヶ月で時価総額が跳ね上がった私の会社のレポートだ。

「代表、次の商談相手が到着しました」

秘書が、深々と頭を下げる。

私が始めたのは、単なるコンサルティングではない。

かつて「無駄」と罵られた、脳内に蓄積された何万もの「雑学」を組み合わせた、唯一無二の最適化戦略。

例えば、物流コストを下げたいという依頼。

私は最新の物流システムではなく、「18世紀の帆船が使っていた積載理論」と「蟻の採餌アルゴリズム」を掛け合わせ、既存のインフラだけでコストを40%カットする解を提示した。

例えば、新素材の開発。

「中世の錬金術師が書き残した粘土の配合」と「最新のナノテクノロジー」の共通点を見出し、競合他社が数年かかる課題を数日で解決した。

知識は、点ではただのゴミだ。

だが、それを繋ぎ合わせ、面にしたとき――それは世界を支配する武器になる。

その時、受付で騒ぎが起きた。

モニターには、薄汚れたスーツを振り乱し、警備員に組み伏せられている男の姿。

かつての社長だ。

「真昼! 出せ! 出せと言っているんだ! 貴様が辞めてから、システムが全部止まったんだ! 顧客も全員、お前のところへ流れた! 責任を取れ!」

カメラ越しに見るその顔は、土気色を通り越して、腐った果実のような色をしていた。

汗と脂でギトギトになった額を、大理石の床に擦り付けている。

彼が「無駄」だと切り捨てた私のルーチンワークには、彼らには一生理解できない、雑学に基づいた高度なリスク回避策が張り巡らされていたのだ。

私が消えたオフィスは、地雷原のようなもの。

受話器を取り、冷静に、事務的に告げる。

「その方、どなたですか?」

「真昼ぇぇぇぇ! 頼む、戻ってくれ! このままじゃ倒産なんだ、借金で首が回らないんだよぉ!」

絶叫がスピーカー越しに割れる。

一瞬の沈黙。

口角が、無意識に上がった。

「あ。」

思い出した。

「社長、ご存知ですか? 古代ローマでは、借金が返せない人間は、債権者の所有物、つまり『奴隷』として売られたんですよ」

返答はない。

男の顔が、恐怖で引き攣る。

そのまま、彼は警備員によってゴミのように引きずり出されていった。

床に残ったのは、彼が流した情けない涙の跡だけ。

窓の外には、雲を突き抜けた青空が広がっている。

かつて見上げた空よりも、ずっと高く、澄んでいる。

私の脳内には、まだ数えきれないほどの「知の種」が眠っている。

次は、どの知識を使ってこの世界を驚かせてやろうか。

身体の奥底から、熱い何かが突き上げてくる。

もう、夜明けに怯える必要はない。

私がルールだ。

私が、未来だ。

さあ。

仕事(遊び)を続けよう。

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