好きでもないのに告白してきた理由
主人公から告白されるが、実は主人公は自分が好きではないのだと気づいたヒロインの話です。ハッピーエンドではありません。
「アクア、俺は君の為なら俺の命を捧げてみせるよ! だから、俺と付き合って欲しい。」
シュウ・ジンコウ伯爵令息は笑みを浮かべながらアクアに言う。
「じゃあ、今すぐ死んでくれる?」
アクア・ブルー伯爵令嬢は微笑みながらシュウに言うと、シュウは笑みを崩し唖然とした。
「え…、いや、その…何の冗談だい?」
「私がこう言うのは意外だったかしら。でもね、私の事が好きでもないくせに気があるセリフを言う男なんて死んで欲しいくらい嫌いなのよ、私は。」
アクアはシュウを睨みつける。
「シュウ様、貴方は本当はファイアー・レッド嬢の事が好きなのよね? 知っているわ。」
アクアの言葉にシュウは驚いたように目を見開いた。
「い、いや…何の話か分からないよ…。」
「私、シュウ様の事好きになりつつあったの。貴方は私の望む言葉をくれて、何時も嫌な顔をせずに笑顔でいてくれた。そう、私の理想通りに…。」
アクアは苦笑いしながら過去を振り返る。初めての出会いは、学園の教室で座っていたアクアにシュウが笑顔で話しかけてくれた。その後は魔法の力が強大すぎて上手く制御できないアクアに寄り添ってくれて、魔王の生贄にされそうになったアクアを命がけで助けてくれた。
「無理に笑顔を作らなくて良い。でも、何時か心から笑って欲しいんだ。」
「ブルー嬢は真面目なんだね。尊敬するよ。」
「ブルー嬢は俺が守る。」
「これからはアクア、て名前で呼ばせてほしい。」
そんな言葉を沢山くれたシュウに、ブルーは完全に心を開こうとしていた。
「…でもある日、いきなり夢を見るようになったの。シュウ様がリーフ・グリーン嬢と仲良くなる夢。シュウ様がサンダー・イエロー嬢と口づけをする夢。夢の中のシュウ様は性格が違うのよ。外見は同じなのに、私が知っているシュウ様よりも礼儀正しかったり、乱暴で荒々しかったり…本当に不思議。」
「っ!? そ、それは…」
アクアの言葉にシュウは焦った様子を見せた。
「そして最近、貴方の心の中が時々分かるようになったの。“この選択でアクアの好感度は上がる”、“次は俺が代わりに行く、を選択すれば良い”、“アクアを攻略したら、ようやく念願のファイアーたんのルートだぁ!!”、など色々と聞こえるようになったの。不思議なことに、これが幻聴や嘘だなんて思えないの。」
「なっ、何で…!?」
青白い顔になっていくシュウに、アクアは自分の言っている事が合っているのだと確信する。
「シュウ様が何者なのかは分からないけれど、私はもうシュウ様とは一緒に居たくない。」
アクアはそう言ってシュウから離れようとしたが、シュウはアクアの行く手を阻んだ。
「ま、待って欲しい。そ、その…話を聞いてくれないか?」
「…。」
必死な様子のシュウに、アクアは魔王から助けて貰った恩もあったので渋々話を聞く事にした。
「実は…、俺はこの世界の住人じゃない。この世界は俺の居た世界で流行っていたゲームの中なんだ! 俺はいつも通り部屋で眠った筈なんだが、気がついたらこの世界の主人公になっていたんだ。そしてその…何となくなんだけど、このゲームの全ルートをクリアすれば元の世界に戻れる気がするんだよ!!」
「…その、ゲームというのはどんなゲームなの? 何をすればクリアになるの?」
アクアにはシュウの言っている事が理解できないし納得もしていなかった。ただ、シュウが嘘を言っているように見えないので困惑しながらも一先ずゲームについて聞いてみた。
「それは…こ、攻略対象の女の子を、つまりアクアみたいな女の子に好きになって貰うとクリアになるんだ。」
気まずそうに話すシュウの話に、アクアの目線は冷たいものとなった。
「…つまり好きでもない女でも、口説いて楽しむゲーム…なの? それの何が楽しいのよ。」
「い、いや…その…さ、最初は好きではなくても内面を知って好きになる事もあるんだよ。」
「自分自身の性格を変えてでも好きになって欲しいの? 本当の自分ではないのに。」
「そ、それは…選択肢があるし、間違えると好感度上がらないし、下手するとバッドエンドになるし…。」
ごにょごにょと何かしらの言い訳をするシュウに、アクアはさらに苛立ちを募らせた。
「私は嫌よ。シュウ様の攻略とやらの為に貴方と結ばれるなんて御免だわ。それにゲームをクリアする為と言ったけれど、レッド嬢の事は好きなのよね? 彼女と結ばれたらどうするつもりなの?」
「え…、え、えーと……ファイアーのルートが終わればクリアだから元の世界に帰る、よ。」
シュウは相当悩んだ様子だが、帰ると答えを出した。
「レッド嬢の気持ちは考えないのね。最低だわ。」
「っ、い、いや、俺が帰りたくないと思っていてもどうにもならないかもしれないんだよ! リーフとサンダーを攻略した後また初めに戻ったし…。」
アクアのシュウに対する顔つきがどんどん悪くなっている事にシュウは焦るが、シュウの言葉でさらに状況は悪くなっていった。
「貴方にとって私達はゲームでも、私にとってこの世界は現実なの。自分の本心も見せずに相手が望むように振舞うだけ、そして好きになって貰えたら用無しになる。そんなの、私は絶対に許せない…!」
アクアがそういうと、アクアの身体から魔力が溢れ出す。アクアの魔力の圧にシュウは押されて後ずさる。
「そんなゲームがある世界なんて碌なところじゃないわね。もういっそ、戻らない方がいいんじゃない?」
「っ、そ、そんな…ま、待ってくれ、アクア!!」
シュウがアクアに近寄ろうとすると、アクアは自身の水魔法を使ってシュウの頭上から大量の水を浴びせた。シュウが慌てている間にアクアはシュウに背を向けて歩き出した。アクアの目からは涙が次第に溢れ出していた。
「…、好きだったのに。」
次の日、シュウは姿を消した。シュウだけでなくジンコウ伯爵家もなくなっていた。そして不思議な事にシュウとジンコウ伯爵家を覚えていたのはアクアだけだった。シュウが元の世界とやらに戻ったのか、ファイアーを口説くために何かをしたのか、それともアクアが好きにならなかったから消えてしまったのか、それはアクアには分からない…。
ギャルゲーや乙女ゲーはコンプリート目指しますよね。好みじゃなくても攻略するためにプレイして楽しみますが、攻略対象の立場になると辛いよなと思います。勿論ゲームだから全然問題ありません。でも、攻略対象に意思があったらとても辛いですよね。好きでもないのに攻略するために告白されるのですから。そんな事を思って書いてみました 笑
いつも誤字脱字報告をありがとうございます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。もしよろしければ評価して頂けると嬉しいです!




