007 王との謁見
ゼノンさんに案内されて、謁見室の前までやってきた。王との謁見ということで、みんな緊張した面持ちだ。
(王ってどんな人だろう、僕のイメージでは横柄な態度で庶民を見下す感じだが。庶民や農民に優しい王様でありますようにと願っていると、)
ゼノンさんが謁見室の扉を開いた。
「さあ皆様王がお待ちかねです。中へどうぞ。」
僕達は中へ入ってすぐに目の前の光景に驚いた。王を中心に王族や貴族達が、僕達の方を向いて跪いていた。
僕達全員の入室を確認すると、王はその場ですっと立ち上がり話し始める。
「勇者様方、我が王国ベルヘルンへようこそ。ワシは王ロン・ノルマディーじゃ。そして、召喚に応じていただいた聖夜殿と赤城殿に感謝する。」
(応じたの僕だけどね。)
「召喚に応じてない者もいると聞いているが、戦う能力が備わったのなら、魔王軍討伐に参加してもらう。半ば強制になってしまうが許せ。」
(僕の召喚した農夫は戦えないけどね。)
「戦わない者を養う余力が今の王国にはない。魔王軍が攻め入っている場所は大規模な農場じゃった。その件で少し語ろう。」
ここから王様の王国についての話しが始まる。
王国は5つの領地から成り立っていて、その1つがノルマディー領で王国の8割の食料をこの領地だけで賄っていた。ノルマディーの領地は北側にあるが、その大半がかつて魔王軍の領地だった。その領地は肥沃な土地で農地に最適だったため、500年以上前から農地開拓をして広大な農地に拡大していった。だが1カ月前から、その土地を魔王軍が奪い取ろうと攻めて来た。大規模な農場が戦場と化したため、王国の食料が今、危機に瀕してしまった。
魔王軍に対抗するため、3つの領地から討伐軍を3部隊用意した。
第1部隊は北のノルマディー領出身者から募り、農場から溢れた農民も参加し大規模な軍勢となった。ノルマディー領は王国が治める直轄地でもある。王が領主であるが、第一王子に領地運営等は任せているとのこと。
第2部隊は北西に位置する王国所属のアンドラ領から軍を募った。この地の北西にはドラゴンが住んでいて、時よりドラゴンが領地を襲うことから、それに対峙するため屈強な部隊が多いとのこと。
第3部隊は王国所属のマウンティー領から軍を募った。この地は西側にあり主に山脈となっていて、ダンジョンも複数あり、ダンジョン討伐などで鍛えた部隊が中心とのこと。数々のダンジョン攻略を成し遂げたゼノンさんを第三部隊団長に任命。
東側に位置するグランエリン領はエルフ族やドワーフ族との対立し、海に面する南側のカルミナ領は他国への応援要請等をしてもらっていて軍を募ることが無理だった。
ここで土屋先生が質問
「食料が底をつきかけて、魔王軍から農地を奪い返すしかない状況なのは理解できたわ。でも西の山脈や東の土地に農地開拓すればいいんじゃないの?」
「西の山脈は魔物が多く生息していて、ダンジョンからもモンスターが溢れたりで農地には不向きじゃ。東の土地はエルフ族やドワーフ族と敵対していて、いつ戦場になるかわからない不安定な土地のため農地には不向きじゃな。」
「私達レベル低いし、戦い方もわからないわ。そんな素人の私達が戦場へ行っても役に立たないと思うけどどうなの?」
「繰り返しになるが、戦う能力があれば戦場へ強制的に参加してもらう。レベル上げはゼノンとダンジョンへ行って上げてもらう予定だ。戦い方は実戦で学んで欲しい。召喚によって得た能力はワシ等を遥かに凌ぐ。」
赤城から
「武器防具の援助ないんか?」
「後ほど武器防具の支援は行うで安心せい。」
「ひゃっほー。よし強い武器もらおうっと」
「もう、赤城君。」
「先生心配すんなって。俺がみんなを守ってやるから。」
聖夜から
「魔王軍とはいつ戦える?」
「ゼノンとの模擬戦を見ていたが、魔王軍と戦うにはまだまだじゃな。明日以降ゼノンと一緒にダンジョンへ行きレベルを上げて各々鍛えてから戦場へ行ってもらう予定じゃ。」
王様の背後から綺麗な女性が2人近づいてきた。
「父上ちょっと。」
「んなんじゃ。」
「ひそひそ」
王様が背後の女性と話しをしていた。
「ああ、すまない。ここにいるワシの家族を紹介しよう。ワシの隣にいるのが第一王女アン・ノルマディーじゃ。」
「勇者様はじめまして。わたくしのことはアンと呼んでください。聖夜様、わたくしと……」
「お姉様ずるい。お父様早くわたくしの紹介も」
「うーむ。アンの隣にいるのが第二王女のラン・ノルマディーじゃ。」
「わたくしの事はランと呼んで下さい。聖夜様わたくしは16歳です。お姉様よりわたくしの方が若いですわ。」
「なんですってえ、わたくしもまだ18歳ですわよ。聖夜様と1歳しか違わないじゃない。」
(なんだ急に聖夜を巡って王女どうしの争いが始まったぞ。)
ここで空気を読まず赤城が
「王様、もし魔王を討伐したらそちらの王女を妻に貰ってもいいか?」
「ああ、魔王討伐できたなら貰ってやってくれ。」
「よっしゃー。王女さん、俺が魔王討伐してやるから待っててね。」
(ブブ、ここでも聖夜に張り合うのか。王女様達引いてるやん。)
「最後に第三王女のミラン・ノルマディー。どこじゃ。ミランあいさつせい。」
壁際に目立たないように立っていた女の子が出てきた。
「勇者様方、はじめまして。ミラン・ノルマディーです。よろしくお願いします。」
第三王女は自己紹介するとすぐ壁際へ消えていった。
(僕の長女の妹くらいの年齢かな。妹みたいな王女さんだな。)
「それでは勇者様方、これから食事をしてもらって今夜はゆっくり休んでもらう。アン、ラン皆を食事へ案内を頼む。」
「任せてお父様。ささ、勇者様方こちらへ。」
クラスのみんなは続々と王女の後を追って部屋から出ていった。
僕とカルさんも食事へ行こうと部屋を出ようとした時、衛兵から呼び止められた。
「エイト殿とカル殿はしばしお待ちを。王がお二人に直にお話しがありますので。」
そう言われて、僕とカルさんだけ居残ることになった。




