表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

1 僕はそれが恋だなんて気づきたくなかった。

 いつからなのか。

 僕はわからない。


 気づかされたのは、幼馴染の達也に彼女ができた時。


「あの子を守りたいんだ」


 中学二年生の時に、転校生がやってきた。

 野生動物みたいな女の子だった。

 髪はずっと洗ってないのか、だまになっていて、絡まった毛糸みたいだった。

 赤毛だったから、余計にそう見えたかもしれない。

 小汚い、その言葉がよく似合う女の子で、降ろしたてなのか制服だけがピカピカ輝いていた。

 彼女、幸奈ちゃんは静かな子だった。

 一週間後、苛めが始めった。

 汚い、臭いなど、幸奈ちゃんは黙ったままだった。

 庇ったのは達也で、彼はなんと彼女を家に連れて帰った。

 戸惑う彼女に対して幼馴染の家族はお風呂を貸してあげたり、夕食をご馳走した。僕もその場にいて、戸惑ってしまった。

 幸奈ちゃんはもっと戸惑ったと思う。

 その後に、なんと彼女を家まで送っていった。


 僕は流石についてこないほうがいいと言われたので、行ってないけど、達也の両親と幸奈ちゃんの父親の間で色々話し合いがもたれ、児童相談所に相談することになった。


 結果、彼女は幼馴染の家に住むことになった。

 幼馴染には兄しかいない。

 御両親は娘が欲しかったから、ちょうどよかったみたいだ。


 幸奈ちゃんは変わった。

 元の白い肌を取り戻し、髪は赤毛のウェーブだ。

 毎日お風呂に入って、髪も叔母さんが見てあげてるみたいで、彼女は全く別人のように美人になってしまった。


 達也は彼女の虜で、僕のことは後回しにされるようになった。

 幸奈ちゃんの境遇には同情しているし、達也の性格上、助けられずにはいられないのはわかっている。

 僕だって、小学校の時に虐められて、達也に助けてもらったからだ。


 彼女と幸せそうに笑う達也。

 僕は置いてけぼりだ。

 友達を失うような痛み、僕はそう思っていた。

 けれども、達也が彼女への恋心、想いを語る度に僕の心臓は軋む。


「幸奈を独り占めにしたい。俺だけを見てほしいんだ。だけど、そんなことだめだとわかっている」


 達也を一人占めしたい。僕だけを見てほしい。そんなことだめだとわかってるのに。


 この思いが恋だと気が付いたのは、二人が正式に恋人同士になってからだ。

 手を繋いで、登校する。

 僕は二人の後ろを歩く。

 時たま、二人は後ろを振り返り、僕を呼ぶ。

 彼女は僕のことを邪険にしない。

 本当にいい子だと思う。

 僕とは大違いだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ