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第45話 進言

ニコラオのニが漢数字の二になっている所が数カ所ありました。

既に公開している部分でも見つけましたら編集します。

報告してくださいました読者様、ありがとうございました。


「初めてお目にかかります。侯爵を賜っておりますジャック・ジャン・ワーノルドと申します」


「まぁ、アーナのお父様ですか?マドラ王弟が息女アデレードでございます。すてきなお嬢様をお持ちね」


「もったいないお言葉でございます。懇意にしていただいているそうで、感謝申し上げます」


「ええ、すっかり意気投合致しましたの。そのお話は伺いまして?」


「はい。たしかに承りました。今後もどうぞ、末永くお付き合いいただければ幸いです」


 アデレードはにこりと笑みを深めた。


 コルティジアーナは父の説得に成功したようだ。


「わたくしの方からお願いいたしますわ。どうか、仲良くしてくださいね」


「はっ」


 マドラ国が王太子妃の後ろ盾になるという確約、と周囲は受け取りざわめきが戻った。


 しかし12年前に行方不明になり、もう死んでいるだろうと思われていたアルフォンソ王子によく似た青年がそこに付き従っていることで、事態をどう受け止めてよいのか人々は戸惑った。


 やはり今日何かが起きるのでは、と人々は不安な面持ちを見せつつ、期待を持ってことのなりゆきを見守ることにした。


 その様な空気の中、いよいよ王族の入場が告げられアンダレジア王室の面々が入場した。


 国王、王妃、王太子、コルティジアーナの順でやって来た。


 皆は静まり国王の挨拶を待つ。


「王太子ニコラオの婚儀に際しよくぞ参られた。感謝する。明日の結婚宣誓式が終わってより一年で王位を王太子に譲位するつもりである。だが、まだ一年ある。王太子が良き君主となるよう、皆に支えてもらいたい。今宵は参集された皆への感謝をこめて準備した宴である。十分に楽しまれよ」


 おざなりな拍手が起き、パーティーが開始となろうとしたそのとき、王妃が鋭い声を上げた。


「そこの者、近こう寄れ」


 ドミニクは怪訝な顔をして王妃が指示した辺りを見る。


 そこには紫色の衣装に身を包んだ白き姫、アデレードがいた。


「王妃よ。他国の王族の姫にそのような口をきいてはならん」


 王妃を諫めたドミニクは、王妃が血の気が引いたような顔色をして、わなわなと全身をふるわせていることに気が付き怪訝な顔をした。


「違います。姫に申したのではありません。その連れの者です」


 そう言われて改めてアデレードを見ると、たしかに背の高い見目の良い青年を連れている。


 ドミニクは青年の顔を見て、驚き、腰かけたばかりの玉座から立ち上がった。


「お主、アルフォンソか?!」


 その言葉を聞いて、大広間中の客が口々に驚きの声をあげる。


 ハッと王が失言に気づいたときは、もう取り返しのつかないほどの騒ぎとなっていた。


 その横で王妃はひどい形相でリアムを睨みつけている。


 リアムはしっかりとした足取りで王の前まで進み出ると、膝をついて頭を下げた。


「第一王子アルフォンソ、ただいま帰りました」


 張りのある声が広間に響き渡る。


 再び広間に静寂が戻って来た。


 リアムに最愛の側妃の面影を見出し、ドミニクは思わず涙ぐんだ。


「顔をあげなさい。よくぞ帰った!待っておったぞ!」


「陛下!お待ちください。この者がアルフォンソだとの確証はありません。早まられませぬよう!」


「何を言う!幼き頃の面影がこんなにもくっきりと出ておる。我が息子を私が間違えるとでも言うのか!」


 王妃が必死に進言するものの、ドミニクは相手にもしなかった。


 呆然としていたニコラオがここでようやく気を取り直した。


「母上、心配することはありません。兄上は私の結婚を祝いに駆けつけてくれたのでしょう。臣下として立派な行動ではありませんか」


「そ、そうね。アルフォンソ、ニコラオに祝いの言葉を述べなさい」


 リアムは意志の強そうな眼差しをドミニクに向け言葉を発した。


「恐れながら、ニコラオに祝いを述べる前に、陛下に急ぎ進言したいことがあります」


「なんだと!」


「まあ!」


「お前たちは黙っておれ。…よかろう、言うてみよ」


「はい。近年隣国マドラでは違法薬物による被害が多発しております。その違法薬物の売買経路を調査した結果、アンダレジア国内に生産拠点があることが判明致しました」


「それは真か」


「はい。マドラ王弟のご息女アデレード様より、詳細をお聞きください」


「よかろう。アデレード殿、久しいな。話を聞かせてくれるか」


 アデレードが進み出た。


 ニコラオは何事かもごもごと文句らしきことを言おうとしたが、アデレードの美しさと毅然とした態度に、結局は何も言えず黙った。


「お久しぶりでございます、陛下。発言を許可していただきありがとうございます。アルフォンソ殿下がおっしゃった通り、我が国では違法薬物による被害が拡大し問題となっています。そこで国を挙げて調査を致しました。マドラ国内で違法薬物を流通させている闇組織を発見し捜査を進めたところ、アンダレジア北部の町で栽培、加工され、マドラ国内に大量に輸出されていることがわかりました。その証拠の売買記録がここにあります」


 アデレードが書類の束を差し出すと、国王の護衛騎士が近づいて受け取り、ドミニクに渡した。


 ドミニクはパラパラと書類に目を通し、頷いた。


「確かに、アデレード殿が言った通りの売買記録であるな」


「ご確認いただきありがとうございます。ご存知の通り国際法上、違法薬物の生産も加工も流通も禁じられております。ことが発覚した以上、厳しく対処していただけると考えてもよろしいでしょうか」


「それはもちろんだ。国が関与していたと誤解されては困るのでな」


 もしも国が関与していたのならば、他国からの非難は否めない。


 そもそもマドラとの同盟破棄事件より他国からの信頼を失っている状態だ。


 そのことで逆恨みし違法薬物を流通させたとの濡れ衣をかぶせられることは避けたかった。


 ニコラオの顔色が心なしか悪くなっている。

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