デブトレーニーのボディメイク始動
愛梨さんとのパーソナルトレーニングを始めて一ヶ月が経過した。
今日は三日振りにジムに来て筋トレをしている。
「…はい、あと3回!…2…1…はいオッケー!それじゃちょっと休憩して、次デッドリフトいくよ!」
「はぁ…はぁ……はい!」
タオルで汗を拭いつつ、ジムの滅菌シートでベンチプレス台とバーベルを拭いて綺麗にする。
この一ヶ月、中二日くらいで週2〜3回筋トレをしていた。
基本的には一日に五種目ほどのトレーニングをして全身を鍛えている。
これを全身法というそうで、筋トレ歴一年未満の初心者にはこのやり方がおすすめらしい。
やる種目は毎回ほぼ変わらない。
スクワット、ベンチプレス、デッドリフト、プルアップ、クランチを行う事が多い。
スクワットは下半身を総合的に鍛える事ができ、消費カロリーも高くキングオブエクササイズと呼ばれるものだ。
ベンチプレスで胸と肩と腕を鍛え、デッドリフトでハムストリングや脊柱起立筋、下背部と体幹を鍛える事ができる。
プルアップはいわゆる懸垂のことで、チンニングともいわれるトレーニングだ。
主に背中と腕を鍛える事ができるが、プルアップに関してはかなり強度が高く難しいトレーニングの為、まだ普通にこなすことができない。
だから足を床につけて強度を下げた斜め懸垂や、体重を支えてくれる専用の台を使ったアシストプルアップを行っていた。
最後のクランチは腹筋を鍛えるものだ。
学校の体力測定でするような腹筋はシットアップと呼ばれるものでクランチはまた別のものだが、形は似ている。
これらのトレーニングをすることで全身を鍛えていた。
食事もこの一ヶ月で改善していた。
僕はとにかく脂っこいものとかを我慢すれば良いのかと思っていたけど、栄養学について知れば知るほどそれは全く違うということがわかってきた。
食事改善に関して、まずは自分の代謝を知ることから始まった。
人間には基礎代謝と活動代謝、そして食事誘発性熱産生がある。
基礎代謝は起きていても寝ていても、生きているだけで消費するエネルギーのことで、活動代謝とは体を動かすことによって消費するエネルギーのことだ。
食事誘発性熱産生と聞くとすごく難しそうに聞こえるが、ようするにものを食べることによって内臓が働き消費するエネルギーのことである。
言葉だけ聞くと活動代謝がエネルギーを消費する感じがあって痩せそうだけど、実は基礎代謝というのが一日の消費エネルギーのメインを占めるものだったりする。
愛梨さんが計算した結果、僕の一日の代謝はおよそ3000kcal前後だろうということがわかった。
痩せる為には摂取するカロリーをこの消費カロリー以下に抑えなければならないらしいが、以前の僕は一日に平均4000kcal近くを摂取しているらしかった。
そりゃ太るわ。
我ながら呆れる。
カロリーは基本的にタンパク質と脂質、炭水化物の合計で算出される。
炭水化物は更に糖質と食物繊維に分けられ、カロリーとしてエネルギーになるのは糖質の方らしい。
愛梨さんと話し合って、まずは一日の摂取カロリーを3000kcalに設定することにした。
いきなり低くしすぎても体調を崩しやすいし、最初はよくてもすぐに痩せなくなると言われた。
また、以前の僕は4000kcalを摂るにしても、脂質と糖質が多くてタンパク質が少なくなっていたそうだ。
筋肉をつけて脂肪を燃焼させる為には、脂質や糖質を適度に抑えながらタンパク質を多く摂る事が大事だと愛梨さんに口酸っぱく言われた。
最終的にはできれば体重の3倍くらいのタンパク質を取れるようにしたいらしいけど、いきなり大量のタンパク質を摂るとほぼ間違いなく体を壊すとのことで、少しずつタンパク質量を増やして様子を見ていく事となった。
現在は体重の1.6倍のタンパク質を摂取している。
いま僕が98kgなので、一日に約157gのタンパク質を摂るのが目標ということだ。
………そう、体重98kg、である。
筋トレと食事管理を始めて一ヶ月弱で、僕は7kgの減量に成功していた。
まぁボディメイクは始めてすぐが一番体が変わりやすいし、食事管理をしていきなり体重が落ちるのは水分が抜けてるだけって愛梨さんが言っていたから、これで調子に乗ったら駄目なんだけどね。
でも毎朝体重計に乗るのが楽しみになったのは間違いない。
それに鏡を見ると少しだけ顔がすっきりしたような気が………勘違いかもしれない。
デッドリフトを終えてぜぇぜぇと荒く息を吐きながら鏡に映る自分は、相変わらずの巨漢っぷりだった。
魅惑のシックスパックや血管びっしりのバスキュラリティまでは程遠いようだ。
【教えて、愛梨せんせー!!】
Q.『BIG3』って何ですか?
A.「BIG3っていうのは、ベンチプレスとスクワット、そしてデッドリフトの三つの種目の総称だよ!この三つに共通しているのは、多くの筋肉に刺激を与えられること、重たい重量を扱えることだよ!」
「多くの筋肉?」
「例えばアームカールっていう種目だと基本的に腕の筋肉しか鍛えられないんだけど、ベンチプレスだと胸と肩の前側、そして二の腕の筋肉を鍛えられるの。」
「なるほど。重たい重量っていうのは必要なことなんですか?」
「もちろん!筋トレには漸進性過負荷の原則っていうのがあって、ようするに挙げられる重量に比例して筋肉が大きくなるっていうのが鉄則なのよ。」
「ほほう。つまりどんどん重たいものを上げればマッチョになれるんですね。」
「まぁ実際には挙げる技術やチーティングや神経系の発達も関係してくるから、一概には言えないけどね。」
「そうなんですね。」
「でも初心者はこういう基礎的な種目で、フォームを練習しつつ重量を伸ばすのが良いと思うよ!」
愛梨先生に聞きたいことがあれば感想やメッセージで教えて下さい。