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第55話 消される前に消える

日が昇るまでは今日とか言ってましたが。

どんどん昇りそうな時間になってますね。

 レベルアップの条件を探りつつ戦闘を行うこと20時間以上。

 おおよその条件は分かったし、転移石の制限時間が残り僅かとなったのもあり、戦うのはやめて雑談をして過ごすことに。

 2人並んで部屋の壁に背を預けるように座る。


「結局ずっと戦ってたわね」

「ああ、こういう時は眠る必要がない体はありがたいよ。有意義な時間だった。気になることはまだあるけど……」


 あれからレベルは3上がって12になった。

 やはり実力に見合った相手でないとレベルは上がりにくいことが分かった。

 更に、たとえ強い魔物であっても手加減をされた状態で戦った場合はレベルは上がりにくいようだ。

 無抵抗の魔物を倒して楽々レベルアップ! なんてうまい話は無いってことだ。

 後はパーティを組んだ時にどうなるかを試す必要があるが、生憎とここには俺しかいないから検証のしようが無い。


「今度は部下達も連れてきたら? 例の石は誰でも使えるのよね?」

「ああ。でもあいつ等は魔物だしどんな扱いになるか良く分からないんだよな。エルーシアの所に行ったときにも俺のレベルが上がったからパーティと見做されているとは思うんだけどな」

「分からないから試すんでしょ?」

「そうしたいけどDPがな。1人1日で1000DPだぜ? 組んでいる相手が誰であれレベルが上がることは分かっているから、あとは他所に殴り込みに行った時に実地で検証かな。そろそろダンジョンを広げないと客足がな」


 減ってきている訳じゃない。『水精の祠』に行っていた冒険者たちが来るようになっているからむしろ増えていると言っていい。

 しかし、モニターで見ていると以前から来てくれている冒険者の中には、飽きてきたような趣旨の発言をする者もちらほら居る。これを見過ごす訳には行かない。


「そういうことなら仕方が無いわね」


 隣で残念そうにするリーゼ。

 まるで自分のことのように親身になってくれる人が居るってのは心強いな。


「教会も動き出したらしいからな。それまでにどれだけ出来るか……」

「動いたって……大丈夫なの?」


 動き出したと言ってもデサルトの町の司祭の動きの話だ。港町ハーフェンのダンジョンを攻略したはずの従騎士隊がいつまで経っても自分の町に来てくれないことに焦って、問い合わせの手紙を聖都に送ったらしい。問い合わせを聖都にしてどうするんだ、とは思ったけどそれならより時間が稼げるだろうから、今後もその調子で頑張ってもらいたい。


「大丈夫では無いけど、想定よりは時間があると思う。事実の報告ならまだしも問い合わせだからな」


 『従騎士隊に無視されました。あと、謎のほら穴が出来てました』

 という、大神殿からしたら意味不明な問い合わせが来るってことだからな。


「そうね。それなら普通はまず事実確認をする人間を派遣するわね」

「で、その派遣された人間が聖都に戻って報告してからようやく聖騎士が動く、って感じだろうな」

「そうだといいけど。そもそもその司祭とやらの動向は確かなの?」


 これはこのダンジョンを訪れる前にデサルトでメリアさんから直接聞いた話だ。

 前にデサルトに行った時の教会は従騎士隊の動向は掴んでいなかったが、冒険者ギルドに遅れること3日、通いの商人から異変の話がもたらされたらしい。

 メリアさんが司祭の活躍(無能)っぷりを熱く語ってくれた感じからすると部外者に対する嘘ということは考えにくい。


「教会の人間に直接聞いた話だからな。信憑性はたか――」

「はぁ!?」


 リーゼが驚きの声を上げた。


「教会の人間って貴方、本当なの?」

「え? まあ本当だけど?」


 隠すことでも無いので俺はメリアさんと知己になった経緯を話した。それと一応聖騎士のルイーゼさんについても話した。


「ちょっと目を離した隙にまた増えてたなんて。小娘の方は危険ね……」

「増えたって、何がだ?」


 リーゼが頭を抱えて呟いている。

 聖騎士の方が断然危険に決まってると思うんだが……

 あと、見た目は貴女の方が小娘です。


「なんでもないわ……こっちの話だから。人間の貴方だからこそ出来ることよね」

「駄目で元々のつもりだったんだけどな。そのメリアさんに聞いた話だけど、聖騎士隊にもメンツがあるらしくてさ、出来立てのダンジョンに聖騎士隊が行くのは教団の恥みたいな考えもあるみたいなんだ」


 だから上手くいけば聖騎士じゃなく、別の従騎士隊を派遣という形に落ち着く可能性もある。俺のダンジョンは大神殿的には出来て間もないダンジョンだし、従騎士達が行方不明になったのはあくまでハーフェンだからな。


「それはいくらなんでも希望的観測過ぎよ。聖騎士が来るつもりで準備しておいた方が良いわよ?」

「勿論そのつもりだ」


 準備はしてし過ぎることは無い。

 人間同様に手が使える仲間も増えたから内職を復活してもいいな。ルカなんて顔色が悪いのと、常に水が滴ってることを除けば人間みたいなもんだし。エルーシアも何か出来ることを考えてくれているようだったから、戻ったらその辺りも相談してみよう。


「この先はどうするの?」

「うーん、少なくとも3週間程は安心だろうから、10日間ほど大人しくしてから一度はどこかに殴り込みに行くつもりだ。レベルを上げておきたいからな。」

「人間は6日で1週間よね? 全然時間無いじゃない」

「いや、かなり厳しめに設定しているから」


 3週間はあくまで教団側が最速で動いた場合の話だ。デサルトから聖都までは通常10日程掛かる。旅慣れた騎士達なら急いでも1週間強といったところか。さっき話した通りに連中が動くなら、実際は4週間から5週間って所だろう。


「確かにそれなら大丈夫かしら」


 計算の根拠を示しつつ説明すると納得してくれたようだが、彼女はまだ何か考えているようだ。


「ねえ、考えたのだけど……」

「どうした?」

「貴方達みんなでここに来たらどう? 大神殿から離れた方がいいでしょ?」

「いざとなったらそうだな……ソフィーやエルーシア達だけでも頼むよ」


 ありがたい提案だけど、彼女たちは別としてもダンジョンコアを持ち出せない俺は無理だな。


「何を言っているの? 貴方も含めて皆よ」

「いや、でもコアを残したらいずれは――」

「転移石があるでしょう? それを持ってきてくれれば、私が使ってそっちに行って貴方のコアを砕けばいいじゃない」


 ああ。そうか……そういえば詳しく言っていなかったな。


「残念だけどそれは無理だ。誰でも使えるとは言っても俺のダンジョンの関係者だけなんだよ。しかも使う場所は俺のダンジョン内じゃないとダメなんだ。通信で相手の承認を貰う必要があるんだけど、これって俺か俺の関係者が他所のダンジョンマスターに許可を取る形にしないといけないんだ」


 服の記載はないくせにこういう説明は丁寧だった。

 見学する必要が無い者は使う必要は無いということなのだろう。


「そう……なのね」

「そう言ってくれるのは嬉しいけどな」


 そう得意げだった表情から一転して落ち込んでしまったリーゼを元気づけるように笑って答えたが、依然として表情は暗いままだった。


「うん、そうよ。それなら――」


 しばらくして顔を上げると意を決するように頷きながら言った。


「じゃあ普通に行くわ!」


 何を言うかと思えば……これは流石に俺だって怒るぞ。


「いや、駄目だろ! 学園に居た時に話してくれたじゃないか! 魔界の太陽とは違うから外に出たらひとたまりもないって自分で言ってただろ!」

「少しくらいなら平気よ! 夜を選んで動けば――」


 彼女が猶も食い下がろうとした時だ。


『お嬢様。アルド様の仰る通りです。絶対に駄目です』


 初期の頃の迫力のハイン氏がモニターで現れた!

 いや、そりゃダンジョン内だし会話は筒抜けなのは織り込み済みだったけども!


「何よ! この前ちょっと出てみたけど大丈夫だったじゃない!」

『日没間際の5分程度でふらついておられたと記憶していますが?』


 それは……吸血鬼には詳しくないけどおそらくは大丈夫じゃないだろうな。


 恒例のじゃれ合いが始まる。

 同時に俺の周りに淡い光の粒みたいなのが舞い始めた。


「それを何とかするのが貴方の役目でしょ!」

わたくしでも出来ることと出来ないことが御座います』


 丁度転移石の時間が来たようなんだが。


「あの! 今日はお世話になりました!」


 ハインさん効果で丁寧語になった。でも2人とも俺に興味無さそう。


『僭越ながら、お嬢様が人間の町に行っても何も出来ません。何より言葉が通じないのですから、不逞の輩に拐かされるのがオチです』

「ふん! 甘いわね! 言葉ならこの指輪があるわ!」


 来た時に渡した翻訳の指輪を掲げるリーゼ。


『船は? 乗船券が夜に買えるとでも?』

「それは……忍び込むわ!」

『話になりませんね。どうしてもというのならこの場でアルド様には消えて――』


 物騒な言葉が聞こえた瞬間。

 周囲の光の粒が増え、宙に浮くような感覚が俺の体を包んだ。

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