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第4話 検証と副業

「たったの6……?」


 ダンジョンに戻るなりDPを確認した俺は、膝から崩れ落ちることになった。

 ダンジョンマスターの能力で手元に出現したカタログの表示を何度見返してみても、数字が変わることはなかった。

 最初に支給されたDPは1000だったことを考えるとあまりにも酷い。

 確かに町からダンジョンの入り口までの道程も荒れ地が多かったけども、いくら土地が痩せているといってもここまでとは思わなかった。


(仕返しとか言ってる場合じゃねえな)


 地形的に高さは稼いでないけど、幅と奥行きだけならかなりのもののはず。

 なにせ1000DP丸々注ぎ込んだ広さなのに。

 高さ5メートルかつ10メートル四方の部屋を作るのに必要なのが約100程。


(飯は抜きだな)


 ダンジョンマスターに食事は必要無いが食うことはできるので、DP次第では何か食べようと思っていたけどこれでは到底無理だ。

 カタログに載っているものならDPを消費すれば、ダンジョン内に限りなんでも出せる。本来は侵入者をおびき寄せるための財宝を用意するのに使う機能だ。

 その機能を試験も兼ねて使ってみようと思ったいたが、これでは通路を伸ばすことすらままならない。


 カタログの機能としてこれからやろうとする行為に必要なDPが表示されるので、その機能を使って色々と確認してみる。実際にできればこの上ない確認になるけど、この際

仕方が無いので実際にやるのはあきらめて、いろいろ試すだけにする。


 駆け出しダンジョンマスターを苦しめるこの世界の仕組みその2。


 ――ダンジョンは攻略可能でなければならない――


 と、いうものだ。

 解釈が幅広くて難解ではあるのだがわかりやすく言えば次の2点。


1:入り口からダンジョンコアまでの経路を十分に確保すること。

2:規模に見合った適切な魔物や罠を配置すること。


 1つ目を怠ると人間でいうところの窒息死をする。ダンジョンコアは言ってみれば俺の心臓みたいなもので、これを壊されると俺は死ぬらしい。ダンジョン内ではコアが健在な限り復活ができるって話だけど、これはDPを大量に消費する上にその事態になったら基本的に詰み・・だ。

 目の前で青白い光を放ちながら宙に浮かぶ、人の頭程の大きさの石を眺める。

 学園によると、入り口からの大気と地脈からの魔力を混ぜてエネルギーとしているらしく、この流れが滞っても死ぬらしい。

 このせいで入り口を塞ぐのはもちろんのこと、狭すぎる通路を作って通れないようにする作戦が使えない。


 2つ目については、絶対ではないが現実的には従わざるを得ない。

 ダンジョンの規模に見合っていない魔物を召喚しようとすると、通常より多くのDPを消費してしまう。罠についても同様だ。


 俺は試しにカタログの罠のページから、落とし穴の罠を選択する。するとカタログから文字が浮かびあがってくる。


『落とし穴:深さ1 大きさ1×1 看破難度:低 ―― 必要DP:30』


 これが最も基本の落とし穴だ。ちなみに単位はメートルなんだっけか。

 先のページにある別の落とし穴を選択する。


『針山落とし穴:深さ2 大きさ2×2 看破難度:中 ―― 必要DP:400』


 こうなる。この罠は少なくとも3階層以降での設置を推奨されているものだ。適正な階層で使用すればおそらく50くらいで設置できるはず。文字もさっきと違って赤字になっている。

 俺の今のダンジョンでは規模に合っていない判定ということになる。


 学園の教員によると――この段階からこんな罠があったら侵入者にとって理不尽。

 そのように世界・・が判断したらこうなってしまうらしい。


 誰が決めたのかわからないが、ダンジョンに恨みでもあるのかと聞きたくなる。


(そもそも入ってくる奴なんて覚悟の上で来てるんだから、理不尽も何もないだろ)


 ギルドのお姉さんの言葉を借りるなら、それこそ「知らなかったは無し」だ。

 危険な場所に来てるんだから自覚を持って挑んで貰いたい。


 これらのルールとギルドで得た情報を踏まえて、ダンジョンをどんな風にするかを考えていかないと。DPの収入に期待できない以上は、背伸びをして強力な魔物や罠はやめたほうがいいだろうな。

 一度作った部屋や通路は侵入者が近くに居なければいつでも改築できるし、その際にDPのロスもないので、この広い部屋も無駄にはならない。保護期間ギリギリまでは広さ重視の方針は変わらないな。

 厳密にいえばロスはあるけどこのダンジョンでは関係ない問題だから気にしない。


 朝一番に町に向かってから日没までに6ということは、1日にすると8か9ってところだろう、となるとあと約30日間で徐々に増えるとはいってもせいぜい400から500位と考えるべきだな。


(冒険者家業を頑張らないと、せめてオープンまでには3000は欲しい所だ)


 考えてみれば保護期間中に副業・・ができるのはある意味強みなんじゃなかろうか? 俺以外のほとんどのダンジョンマスターは町には行けないし、人型をしていても人間として振る舞うのはかなり無理があるはず。

 何も保護期間中だけじゃなくてもいい、ダンジョン経営が安定したら配下の魔物に任せて副業をしてもいい訳だ、例えば商人とかでもいいな。


(この後どうしようか、DPが無いからやることが無いんだよな)


 睡眠の必要も無くなるらしいから寝なくてもいいんだが、そうでもしないと時間がつぶせないな。他の連中は何をやってるんだろうな?

 暇という概念があるのかすら疑問だ。


 冒険者が来るようになれば、場合によっては24時間監視する必要があるから退屈しないのだが、この状態であと一か月は結構しんどいかもしれない。


(内職でもするか?)


 その辺の石ころはダメだけど人が手を掛けた物なら多少はDPになるはずだ。

 原材料をDPで出してしまうとよろしくないだろうから町で買う必要があるな、とりあえずやってみてどれほどの収入になるか実験してみよう。

 実家は男爵家だったけどあまり裕福ではなかったので内職のレパートリーはそれなりにあるからな。


 町で材料を買うにしても今は無一文だからまずは冒険者として活動しないと。

 今のところ常設依頼にあった薬草の採取とホーンラビットの討伐をやる予定ではあるのだが、その報酬で果たしてどれだけ買えるかだな。

 どちらの仕事も生前? にやったことはあるから要領は問題ない。当時は家の手伝いで無報酬だったことを思えば、むしろ今のほうがやりがいがあっていいかもしれないな。


 ホーンラビットは弱い魔物だしいい剣もあるので、午前中には依頼は終えられるはずだ。昨日はほとんどゲアートさんと話込んでしまったから、明日は町を見て回るのもいいかもしれないな。

 傍らの壁に立てかけてある俺を殺した剣を横目に考える。

 もし金が足りなかった場合はこの剣を吸収してDPに変えてもいいかもしれない。

 ここまでの業物は俺の活動には必要無い、そのDPで金を出してから安い剣に買い替えるのも有りだ。あの二人組の様に奪おうとする輩が他にもいるかもしれないし。


(明日も忙しくなりそうだ)


 今は床や壁自体が淡く発光しているのでそこそこの視界は確保されている。

 しかし、俺は暗くないと眠れないのでダンジョンの明るさを調節して暗くしてみた。

 これも中に冒険者がいると気軽にできないので今のうちだな。

 あまり意味は無いのかもしれないけど少しくらいは寝ることにしたからだ。ベッドを出せれば文句無しだが、そんな贅沢はできないのでそのまま床に横になるだけだ。


 そうして、その日はいつの間にか眠りについていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 高さ150cmくらい投稿者:黒目夜2022年 11月13日 10時19分 お前優しい 高さ30cm 妖精族が通れるくらい て十分は妖精族が攻略可能  高さ5メートルかテイマ一の成竜高さ10メ…
[気になる点] ダンジョンの入口に関する制約って、 子供が通れるくらい(高さ150cmくらい)の入口を複数作るとかも駄目なのかな? それが出来れば侵入者にかなりの負担を強いられそう。
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