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第35話 作戦会議

今日は2話です。

1話目。

「まさかとは思いますがお一人で行くなどと仰いませんよね?」


 意外なハジメの台詞に驚く。


「俺が行くことは止めないのか?」


 カースの件でかなり無理したときはかなり怒られたんだが。


「遠出になりますから仕方がありません。翻訳と人化の指輪があるとはいえ、我々だけでは対応しきれない場面がどうしても出ると思われます。それにここで日和っても次は我々の番です、今は攻める時と考えます」


 ハジメのいう通り。数日寿命が変わるだけだ。


「色々問題があるが一つ一つ解決して行こう。まず俺の希望を言うから、バラノイとの話を踏まえて現実的かどうか判断してくれ」


 ハジメが頷く。


「まずメンバーだ、俺以外は戦闘能力的に考えて、エンペルとブイで行きたい」


 うちの戦闘部門のナンバー2と3だ。ナンバー1のミノタウロスのロインは留守を守って貰いたい。最低でも7日は留守にする訳だし。


 現状4500DPある。翻訳は1000DPで人化は2000DPだから、一切喋らないようにすれば2名は連れて行ける。


 ハジメは少し考えてから口を開く。


「人が集まらないため現地の知り合いが居たら紹介して欲しいとも言われました。ですので現地集合にすれば、マスターとブイは問題無いと思います。しかしながらエンペルは係員をしています。自由に出歩けませんので厳しいかと」

「そういえばそうだったな……」


 俺としたことがすっかり忘れていた。

 係員のエンペルはダンジョン内で違反が無いと待機部屋から出られない。ダンジョンから出られさえすれば大丈夫だと思うんだが。


『それについては妙案が御座いますぞ』


 ずっと黙っていたエンペルが喋りだした。


『吾輩がずっと考えていたことがあるのです。ここは一つ試して頂きたく』

「どういうことだ? 自由に出歩けるということか?」

『その通りです。マスターとソフィー様に御協力頂く必要がありますな』


 俺はともかくソフィーもか?


「そっ、そんな! 急に……」


 ん? ソフィーは分かったのか? 妙に慌てているが……


『流石はソフィー様ですな。これだけでお察し頂けるとは! となれば、やり方はお任せしますぞ! モニターは遠慮致しますゆえ思い切りなさると良いですぞ』

「わたし、頑張りますね!」

「がっ、頑張る?」

『それに比べてマスターときたら……』


 エンペルは肩をすくめて頭を左右に振っている。


「私はそこもマスターの良いところだと思いますが」


 ハジメも分かっているのか?

 とりあえずエンペルに指示されるままソフィーと2人で入口付近に向かう。



 もう3メートル程で外に出てしまう所まで来た。


「どこまで行け――」


 その時だった。「えいっ!」っとかわいい掛け声と共に彼女が抱き着いてきた。


 ――そういうことか。


 ここで俺はようやく理解する。違反が無いとエンペルは出動が出来ない。裏を返せば違反さえあれば出動できるってことだ。


 うん、そういうことなら仕方がないな!


 第一これは実験だ、変に照れると相手にも悪い。俺も彼女の背中にしっかりと手を回して抱きしめた。既に心臓が爆発しそうだが落ち着かねば。


『エンペル。いけそうか?』

『まだ足りぬようですな。もっとですぞ!』


 まじか!? これでもまだニャンニャンと認識してくれないのか……


「しっ、しし仕方がないっ! こうなったらキ――」


 俺は次のステップに移行しようとした。


『ご安心下さいマスター。現時点でエンペルは無事にそちらに向かっております。その状態でお待ち下さって大丈夫です。先に進んで頂く分には構いませんが』


『お前達が楽しんでることは分かった』


 安心してくださいと言われても全然安心できないが、実験としては上手くいっているのでこの状態をキープ。しばらくそのままでいるとエンペルが歩いてきた。

 走ってこいとか、じろじろ見るなとか思うことはあったけど、エンペルは俺たちの横を通り過ぎると無事にダンジョンの外に出ることができた。

 ちょっと名残惜しいがニャンニャンの構えを解いた。


「上手くいったな……やはり出てしまえば問題無いみたいだな」

「今エンペルさんが入ったらどうなるんでしょうか?」

「そうですな……踏み入った瞬間に以前の様に戻されると思いますぞ」


 そしてダンジョンに戻ってきた瞬間、エンペルの体を光が包んだ。


『思った通りですな。待機部屋に戻りましたぞ』


 すぐにモニターで報告をくれる。


『これでメンバーの問題は解決しましたね。一度お戻り頂けますか?』

『分かった。あと、助かったよエンペル。ありがとう』

『おや?』


 何やらエンペルが驚いている。


『どうした?』

『いえ、悪ふざけが過ぎたものですからな……』


 自覚が有るならするなと言いたいが俺も役得があったしな。


『いや、俺じゃ気が付かなかったことだからな。素直にありがたいよ。おせっかいなところは控えてくれたらもっと助かるけどな?』


 隣のソフィーに聞かれないようモニターを使わず念話で伝える。


『それはお約束しかねますな』

『なんでだよ……』


 俺のことを思ってのことなのかもしれないが人にはペースってものがある。


 まあいいや。今はとにかくコアルームに戻って会議の続きだ。


「マスター達が不在の間に違反行為があった場合はどうしますか?」

「ギルドの指導もあるからそんな奴は滅多に来ない……ことを祈るしかないな。そうなった場合は襲撃を多くして対応してくれ。最奥のオークは割と人気だから代わりのオークを通常召喚しておくか、本来なら今まで通り全員名前付きネームド召喚したいけど、状況が状況だしな」

「冒険者ギルドへの返事はそれまで保留としますか?」


 その話もあるな。


「流石にしばらく返事しないのはまずい。属性の話はしばらく伏せて、実現には時間がかかる旨だけ伝えておけばいいと思う。あっちも今は関係作りが目的らしいからな、それで十分だろう。ソフィーに後で書いて貰うとして、明後日辺りに冒険者ギルドに渡るようにしてくれ」

「分かりました」


 戦闘に関しては問題無さそうだ。こんなこともあろうかとロイン、エンペル、ブイは余裕のある時に人化の指輪を装備して訓練していたし。


 次は移動中に溜まるDPの使い道だな。


「サン、指輪を持って飛べそうか?」


 俺が聞くと小さく「キィ」と鳴く。大丈夫らしい。


「DPが1000を越えたら翻訳の指輪を届けてくれ。今のペースなら明後日には溜まるだろう、サンのスピードなら俺たちがあっちの町に着く頃には間に合うはず」


 ハジメにカタログの権限はある程度渡している。俺が近くに居なくても使えることは確認済みだ。


「ダンジョンマスター相手なら言葉は通じるのでは?」

「ああ、大丈夫だろうが念のためだな。あっちが召喚している魔物達とは言葉が通じない可能性があるから一応持っておきたい」

「確かに、あちらの魔物に案内を頼むことができればかなり楽になりそうですね」

「あとは俺が翻訳の指輪を装備しておけば、会話が出来なくてもエンペルとブイは言葉は分かるはずだ。そうすれば動きやすいだろ」


 こうすれば2人からの発声は出来ないが俺が人間に対して話している言葉は分かる。さらに考えうる事態をいくつか想定して合言葉と身振りをいくつか決めておけば何とかなる……はず。

 ブイがちょっと不安だがそこはエンペルを見て動いて貰えばいいだろう。


 そうと決まれば――


『ブイ、30分後にエンペルの待機部屋に来てくれ。明日からの打ち合わせだ』

『おうよ! 腕が鳴るぜ!』


 こういうのはモニター越しよりも対面のほうがいい。


『いい返事だな。覚えて欲しいことが多いから頑張ってくれよ』

『お、おうよ……』


 うん……なるべく単純にしないと駄目みたいだな。

 ソフィーにギルドへの手紙を書いてもらってから待機部屋に向かった。

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