第30話 仲良くしよう作戦
本日は2話です。
1話目です。
ギルドからの返事を持ってブイがコアルームに来た。
早速確認、の前に――
「ブイ、約束通り次回からは普通にロインの部屋に届けて貰うからな?」
どうしても再戦したいと言うのでそうしたけれど本来は良くない。
ブイにとっては屈辱だろうが今は攻撃と認識されていないだけであって、交流相手に攻撃を仕掛けていることに変わり無い。他の冒険者との戦闘を経てブイの動きが良くなったら勝負の目が出てくるかもしれない。
強くなってもレベル1状態で戦闘するように指示しているし、ダンジョンマスターの権限は絶対のはずだけど、こうも負けん気が強いと指示を無視して戦いを挑むのではないかと心配になる。
「無理言っちまってすいません」
「いや、本来なら歓迎すべきことだ。今は厳しいけど専用の部屋は用意しようと思っている。それまでは辛抱してくれ」
「本当か!? わかった! ありがてえ!」
俺の言葉を聞いたブイは子供のように目を輝かせながら持ち場に戻って行った。
その後、他の皆のために音読しながら手紙の確認をした。
利用規約の順守のためにギルドでは指導を徹底し、入口付近にも看板を立てるという旨が書かれていた。
強い冒険者については、ダンジョンがもっと頑張って欲しいということがやんわりと書かれていた。属性付きの魔物を増やして欲しいという要望は参考になった。
「そう言われても属性の魔素がな……スライム増やそうかな」
魔法はたくさん使って欲しいけど冒険者が戦い辛くなる。そうなると敬遠されて客足が遠のく可能性もあるから難しい。
「一気に全てとなると難しいですね。アーススライムの他はこの土地は水がやや多めですからアイススライムになるでしょうか」
「風の魔素が不足しがちだからアーススライムはいいかもな。まあ数日はDP温存するからすぐには無理だけどな」
問題があるとしたらアーススライムのドロップアイテムはスライムと大差無いから冒険者目線では微妙ということだな。魔石がやや大きくなるくらいか。
「うーん、返事に困る。さすがはキースさん。ソフィー、せっかく手を止めて貰ったけど今日は代筆は無しになりそうだ」
「どうしてですか? 待って下さっているのに……」
会議用に用意した円卓で隣に座るソフィーが不思議そうに聞いてくる。彼女が言う通りロスさんが入口で待っているから申し訳ない気持ちになるのは確かだ。
「ロスさんには悪いが今日はDPを貰うだけにしておくよ。別にバレてもいいとは思うけど、ダンジョンの仕組みに深く関わる要望だから少し慎重に行きたくてね」
強い冒険者を寄越せと言っておいて何を今更、という感じがしなくも無いが一時的に封鎖されそうになったから慌てて返事しただけだ。
「明日町に行って様子を探ってみて考えることにするよ」
「わかりました。手紙を書くときはいつでも言って下さいね」
ソフィーはニヴァンを抱っこ? しながら自室に戻って行った。日中はダンジョンだけど冒険者が帰った後は一緒に居ることが多い。何かの手伝いをしているらしい。翻訳の指輪の実験中に簡単な合図を決めていたみたいで、今言葉が通じなくとも問題ないとのことだ。
俺も調薬を教えて貰いたいけど、以前提案したらその時は道具がもう一式あった方がいいということなので、DPに余裕が出たら始めることになる。
なのでこれと言って他にやることもないので久しぶりに内職をした。
こんな時は内職に限る。DP的にはもう誤差だけど気が付いたら時間が経っているので暇つぶしには最適だ。
――――――――――
――早朝。
町に向かう途中でダンジョンに向かう冒険者の姿を見つける。俺は一応遠回りをしていたのでこちらは見られていないはずだ。たぶん手紙の返事があるかどうかの確認のために派遣された人だろう。
ギルドに顔を出すが人はまだまばらだ。
受け付けの女性にキースさんの予定を聞いてみる。ちょいちょい一緒に居るところを見られていたおかげで特に怪しまれずに予定を教えてくれた。昼前にはギルドに戻るとのこと、そこそこ時間もあるしせっかくなので以前から考えていた作戦の1つを実行に移す時かもしれない。
俺は早速とある建物に向かった。
(相変わらずでかいな……)
本来なら近寄ることすらしたくない場所。
教会だ。
名付けて――『天敵と仲良くしよう作戦』。
生存の確率を少しでも上げるため仲良くしておいて損は無い。上手くいけば内部情報を得られるかもしれない。ちゃんとゲアートさん達にはさわりだけ話してあるので疑われることもないだろう。
『んなこと言ってあの侍祭のお嬢ちゃんが目当てなんだろ? 結構他の若手の中でも人気があるから気持ちは分かるが……いや、それも勉強か。頑張れよ』
あくまで情報収集のためと強調したのに別の意味で疑われている。
『それはそれでその方に対し失礼です。真剣に付き合いつつ情報も貰って下さい』
『俺もどうかと思うぜ? 付き合うことになったら大切にしてやれよ?』
キースさんが黒いのと、一番軽そうなロスさんがまともなことを言っていた。
あそこに居る教会の人間は司祭のおっさんと侍祭の女の子のみ。あとは近所のマダムたちが手伝いに来ているだけだ。歳も同じくらいに見えることから考えても必然的にターゲットはその侍祭の彼女以外に考えられない。
ただの消去法による結果だ。
(もうそろそろだな)
間もなく彼女が出てくる時間のはず。この時間はいつも門から教会までの通路の掃き掃除をしている。これを話したらロスさんには「お前って結構……」って、何か言いかけて止められた。
誤解だ。俺には既にソフィーが居るし、こっちは命懸けだから必死にもなるというものだろう。3人にそう思われているのは心外だけど、何を言っても全て言い訳に聞こえるだろうから今はそれでいい。
そもそも俺にそんな経験値など無い。今までによく会話した女性といえば母と姉を除けば使用人くらいだし。
やや離れた路地から様子を伺っていると、目的の人物が箒を持って出てきた。朝早くから毎日よくやるものだ。
ややウェーブが掛かった肩ほどまである薄紅色の髪を揺らしながら掃除をする彼女の姿を確認すると、しばらく待ってから俺は通行人その1を演じた。
「おはようございます」
「あ……おはよう……ございます」
俺が挨拶をすると、怪訝そうな顔をしながら挨拶を返してくる。他の冒険者は彼女を狙ってるって話だからな、冒険者に声を掛けられるのは初めてではないのだろう。そう考えれば彼女が身構えてしまうのは仕方が無いことだ。
「ここを1人でするんですか? 誰かお手伝いの人とかは?」
「ここは……お手伝いの方達にお願い出来ないから」
自己紹介を交えつつ詳しく聞いたら入口なので教会の人間でないと駄目らしく、たとえ良くても朝一であることも重要なんだとか。それなら近所のマダムは厳しいだろう。距離があるから大変だと思うんだが、そういうものなら仕方が無い。
彼女はメリアさんというらしい。お名前をゲットしたので今日の所はこれでずらかるとする。俺が冒険者ということでかなり警戒されているから長居は良くない。
「そうなんですか。お時間を取らせてしまいました。失礼しますね」
そう言って立ち去ろうとしたその時。
教会の扉が開き、中から長い金髪の女性が出てきた。その女性はメリアさんを探していたのかこちらに向かって歩いてくる。
見ない顔だと思ってその方向を見ていると、俺の視線に気が付いたメリアさんの口から予想だにしなかった衝撃の紹介を聞くことになった。
「あの人は聖騎士の方です」
その女性は俺が最も出会いたくない職業をしていた。
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侍祭、助祭、司祭、司教の順です。
侍祭。アコライトって響きが気に入っています。




