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第21話 嫌な予感

本日2話投稿。

2話目です。

 突然冒険者になると言い出したソフィーさん。


 立ったまま話す事でも無いので冒険者ギルドの飲食スペースに移動して、改めて話を聞くことに。


「なんで冒険者に? 今のお店は?」

「お店を続けます。わたしがダンジョンに入れたら大丈夫だと思うんです」

「薬草が必要だから? 冒険者に任せる、じゃダメなのか?」


 彼女は頷く。


「さっきのスホル……さんについてどう思いました?」

「どうって、ギルドのメンバー想いのいい上司さんじゃないのか? あのバカ2人に依頼したのはどうかと思うけど」

「あれは多分あの人も知らなかったんだと思います、いつも連れている部下が手配したんだと思います。今日は居なかったのでクビにしたんでしょうか……」


 ソフィーさんが自力で薬草を取りに行くことと何の関係があるんだろう。


「薬師ギルドが薬草を冒険者ギルドから買っているのは知ってますよね?」

「ああ、そうらしいね。最近は薬草が少ないから町中の薬屋さんが困ってるって冒険者ギルドでも聞いたし」

「ええ、アルドさんのおかげで薬草不足は解消されたそうです」


 ん? 気になる言い方だったな。


「そうです?」

「同業の方に聞きました。アルドさんとは言ってませんでしたが、薬草を積極的に納品してくれる冒険者が現れたからこれでしばらく困らない、って」


 噂になっていたのか。頑張った甲斐があったな。でも、前にランクアップ祝いで回復薬を買ったときも不足している感じだったような。


「それだとおかし――」


 言いかけてハッとする。

 だとしたら考えられるのは――


「薬草をどの店にどれだけ卸すかを決めているのがスホルさんか?」

「その通りです」


 そういうことか。彼女の店だけがいつまでも足りなかったんだ。


「そんなことをして問題にならないか? いや、巧くやっていたのか」

「実際わたしの店にも届いていましたよ。しっかり厳選・・されたものでしたが」

「ギルマスには?」

「ダメでした。『彼がそんなことをするはずが無いだろう』って、全く相手にされませんでした」

「そうか、そうだな。俺もそんな人だとは……でもスホルさ、スホルはなんだってそんなことを?」


 彼女は眉をひそめて俯いてしまう。


「いや、ごめん。無理には聞かないよ」

「相談したのはわたしですから……推測ですけど……何度も誘いを断ったからです。お店を大切にしてるのを知ってて……辞めたくないのを……それで……」


 思い出して胸が一杯になったのか両手で顔を覆い嗚咽を漏らし始める。


 誘い・・ってそういうことだよな。

 親子ほど年が離れてるだろうに……


 自分の人を見る目の無さに落ち込む。

 給仕のお姉さんの俺を見る目にも落ち込む。


 何度か話題に出ていた例の件・・・とやらがそれだろう。『君のためにと思った』なんて、どの口がぬかしやがるって話だ。


 そう考えれば俺への質問の意図も分かる。せっかく供給を断っているのに、どこからか薬草を採ってくる冒険者はさぞかし邪魔だったろう。

 ギルドからのルートが断たれた以上は自力で入手するしかないと彼女が考えてしまうのも無理はない。


 テーブルの間を忙しなく動き回る給仕のお姉さんの視線に耐え続けること数分。


「すみません……急に」


 落ち着いたのか涙を拭いながら顔を上げる。


「冒険者になりたい理由は分かったけど俺は反対だな。副業してる俺が言うのもなんだけど、掛け持ちして出来るような仕事じゃないよ。しばらくは昨日みたいに護衛を付けてダンジョンに通うしか無いんじゃないか?」


 昨日町に戻る途中に聞いたところ、もともと護衛はダミドクだけだったところに、無料でいいからとあの2人が付いてきたらしい。Cランクだから信用してしまったらしい。

 彼も一人なら魔が差さなかったに違いない。たぶん。おそらく。

 以前からの知り合いだというので、彼も黒だったことは伏せた。


「昨日みたいに毎回護衛を雇えないですし、同じようなことになったら……」

「いやいや、あいつらが飛び抜けて異常だっただけだよ。他の皆はちゃんとしてるから大丈夫だ」


 中にはおっぱじめる奴らも居るけど、それはもう相手が居ることだしな。

 むしろあのパーティなら安心か?

 いや、普通に女性だけのパーティに依頼すればいいのか。


「そうですか、アルドさんにお願いするのはダメなんですか?」

「それも考えたけどね。残念ながら俺はEランクだから護衛依頼を受けられない。Eランクまでのダンジョンで一般人の護衛の依頼を受けるにはDラン……ク……?」

「アルドさん?」


 変だ。奴もおれと同じEランク。

 ダミドクが単にギルドの規約を知らなかったならそれはそれでいい。

 むしろ問題は別にある。


「昨日ダンジョンに行くことは誰かに話した?」

「い、いいえ。前にアルドさんに聞いた採取ポイントについてダミドクさんにも聞いたんです。それならこっそり行ってみないかってダミドクさんが……それで町の外で待ち合わせて……」


『君がダンジョンに向かったと聞いてね』


 偶然姿を見かけた知り合いが行き先を知るわけがないから、これはダミドクがスホルに教えたんだろう。あいつはスホルの手下と考えるのが妥当だ。


 でも『凄腕に捜索を依頼した』のはどうしてだ? 護衛にダミドクが居ることを知っているはずなのに? 奴だけじゃ不安だったからか? でも奴だけなのはそもそもスホルの指示では?

 何らかの目的があってソフィーさんを連れ出したのは明白じゃないか?


 「護衛」は実は「刺客」だとしたら……


「落ち着いて聞いて欲しいんだけど――」


 これは黙っている訳にはいかないのでソフィーさんに伝えた。


「考え過ぎかもしれないし、そもそもなぜそんなことをする必要があるかと言われればわからない。だけど嫌な予感がするんだ」


 彼女は顔を真っ青にして震えている。


「怖がらせてしまってごめん」


 ただの考えすぎで、実は――


 ダミドクがソフィーさんに乱暴しようとする。

 スホル手配の凄腕登場、からのダミドク御用。

 スホルさんってステキ!


 ――とか。


「ありえないです。せめて人に頼らないで自分で助けて下さいって思います」


 考えたら俺も似たような手口だな……


「ま、まあ。用心するに越したことはないからさ」

「用心って言っても、どうしたら」

「そこなんだよな。定期契約で護衛の依頼を頼むのもお金が掛かるしな。おばあちゃんの遺した店って言ってたね。一緒に住んでる人は居ないんだよね?」

「はい」


 彼女の両親は彼女が小さいころに蒸発。それ以来祖父母に育てられたそうで、その2人も昨年他界したそうな。これも昨日の道すがら聞いた。

 ギフトは遺伝しやすいからな。祖母と同じ『調薬』を持っているらしい。

 ギフトが無くてもその仕事に就けるけど、持ってる人の方がいい結果が出るから、ギフトに合わせた仕事に就くのが一般的だ。


「この後それとなく相談してみようか?」

「そうですね。お願いします」


 色々と話をしているうちに、いい時間になってきたので料理を注文する。

 俺の分を配膳するときに乱暴に置くのはやめて頂きたい。

 お姉さん、あなたは誤解している。


 見栄を張って俺が支払おうとしたけど、どうしてもというので割り勘になった。

 やがてウェスさんが来たので合流。世間話をしながら時間を潰した。


 担当の職員への説明は問題なく終了。職員ではないけどたまたま居たので参加したロスさんには、どうやってカースを倒したのか追及されるも、仲間割れと罠を利用したと言ったら納得してくれた。


「そういやお前の家だったな。罠の場所くらい分かるか」


 と笑っていた。

 職員によると予算の都合上で再発防止策を講じるのはすぐには難しいらしい。毎日Dランク冒険者を張り付けているだけでも大変なんだとか。


「あの2人さえ居なきゃ、残ってるおかしな奴らはたいしたことねえ奴ばかりだ。Cランクの奴も居るが、寄生してランクを上げた雑魚だし。Dランクの奴でも十分制圧できるだろ」


 ということなのでひとまず安心か。

 俺やウェスさんには当然だがこれといったお咎めは無し。むしろウェスさんには相棒の見舞金? が出るみたいな話をしていた。故郷に戻って相棒さんの両親に渡すらしい。


 解散になったもののさっきの相談をロスさんにしてみることにした。


「ロスさん。俺の友達の話なんですけど――」

「なるほど。お前の話か」

「いやいや、友達ですよ?」

「わかったわかった。それで? その友達がどう困ってるんだ?」


 俺は所々ぼかしながら相談する。

 しばらく考えた後、ロスさんは口を開く。


「店が大事なら引っ越せとしか言いようが無いな。金が無くて、その相手とも正面切って戦えないならそれしかない。大切なのは何なのかをよく考えればいいんじゃないか? 場所なのか店なのか。どちらかは諦めないとダメだろうな。例えその友達は何も悪いことしていないとしてもな」

「そう……ですよね。考えてみます」


 途中からソフィーさんがメインで話してるから。俺は空気。


「力になれなくて悪いな」

「いえ、相談に乗って頂いてありがとうございました」


 ロスさんと別れた後は約束通り回復薬を貰いに店に寄る。


「単独行動を避けて戸締りをしっかりね」

「はい。今日はありがとうございました」


(俺にも出来ることはないかな?)


 そんなことを考えつつ帰った。

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