第13話 営業初日と愛好家の人?
本日2話投稿しています。
2話目になります。
昨日のうちに復活通路を作っておいて良かった。
『冒険者がどれほど来るのか分かりませんが、分散された場合に我々が復活出来なくなる恐れがありますね』
というハジメの指摘のおかげだ。
魔物が復活するには侵入者からある程度の距離が必要だ。
冒険者が固まって移動するか、そもそも少人数しか来ないかであれば問題は無いけど分散される、あるいは大勢来るとその距離が確保できない。
――魔物が出なくなったら一旦外に出ること――
人間側もこれまでの経験でそれは何となく分かっているので、入口ではこのように教えてくれる。
中に入る冒険者のランクを確認するために先輩方が交代で派遣されている、今後のために入口付近に簡易的な小屋を作るっぽいな。どうせなら中に作って頂いてもいいのだが「中に作ったらそのうち消えちまうからな」って言っていた。
まあ、普通はそうだ。
周囲から人間が離れて一定時間経てば吸収出来るから、大抵のダンジョンマスターならそんなもの放置しないだろう。
人間側も心得ているから一度出て貰ってもいいけど、客を待たせなくて済むならそのほうがいいだろうってことで、一目で行き止まりとわかるような長い直線通路を何か所かに作った。
何体かの復活場所をここにしておけば主要部分から遠いので復活し易い。
中には隠し通路的なものがあると思って調べる冒険者も居るけど、それならそれで滞在時間が延びるのでまったく問題ない。
俺が町で見かけた若手のほとんどが来てくれているようで、改めて復活通路があって良かったと思う。物珍しいのもあるだろうから初日だけのことだろうけど、現在30名程は来てくれている。
明日以降は時間も分散するだろうし人も減るかもしれない。
来てくれている冒険者の平均レベルは4くらい。Fランクが多いのでこんなものだ。
道具や装備から考えると日没前には町へ帰るのだろう、明日以降の客の入りが6割くらいを基本として考えると、一日で200DP行くか行かないかってところだろうと思っている。
このダンジョンの基本方針として冒険者は殺さない方針で行こうと思う。
死体を吸収して得られるDPはおおよそ滞在DPの30日分とされている。一日といっても24時間ではなく、8時間が30日分だ。
レベル4の冒険者なら殺して得られるDPは600弱というところ、非常に魅力的だけどここは冷静にならないといけない。
殺してしまうとその瞬間はいいけど、長い目で見れば一か月以上通って貰ったほうが得になる。ダンジョンが長期間攻略されないという前提ではあるけど。
それに、以前にゲアートさんが言っていたように、犠牲者が多いと教会が黙っていないというのも大きい、死人が居なかったら何とか見逃して貰えないかなという期待も僅かにある。
皆コアルームの前までは来るけど、教育が行き届いているのか引き返していくので少しダンジョンを離れても大丈夫だろう。
いざとなったらコアルームに詰めてもらっているハジメたちには本来のレベルで応戦するように言ってある、二回目の調査時にゲアートさん達に全員突撃させた
おかげで、コウモリ達を除けば全員レベル4になっている。今日来ている冒険者達相手なら大丈夫だと思う。
俺は例の不審者のことを調べるため町に向かうことにした。
冒険者ギルドにて早速情報を入手。
薬師ギルドによく出入りしていてほとんど姿を現さないらしい。ランクは俺と同じEとのことで、冒険者としての活動に消極的なので実力はよく分からないとのこと。
どうもソフィーさんがらみの案件のようだ。
あれか? 『俺のソフィーに手を出そうとする悪い虫め!』ってやつ?
いいことを思いついたので再びソフィーさんの店の前を通ってみたところ、ちゃんと待っていてくれたのでダンジョンまで誘導した。
(レベルは6。やっぱ素人だったな)
入口に入るなりすぐに出て行ってしまったけどレベルはしっかり確認できた。
問題は俺のレベルなんだよな、ダンジョンマスターのレベルは見られないので自分自身の実力がいまいち分からない。
一応剣術をちょっとかじった俺は明らかに強い相手は何となく分かる。
その感覚から行くと強さは俺とほぼ同格だろう。
さて、どうするか。
追いかけて話を聞いてみるか?
まだ近くに居そうな気がするし、何かあったとしても入り口付近には先輩冒険者達が居るしな、少々危険な気もするが付き纏われても迷惑だし、この際だからはっきりさせるか。
そうと決めた俺は再び外に出る。
少し離れたところでこちらに背を向けて周囲を伺っている男の姿を見つけた。
一応先輩冒険者達からは見えない位置に居るようだが、俺がすぐに出てくるなんて思っていなかったのか完全にこちらに気が付いていない。
「俺に何か用ですか?」
俺が声を掛けると男は少し驚いたのか僅かにビクッとして振り返る。
「いっ、いや。何のことだか……」
とぼける気か。
「そうですか。ところで趣味が合うのでお友達になりません? 町で同じブロックを2周したり、ただ川を眺めたりするのって、楽しいですよね?」
男は理解したのか舌打ちをする。
「お前……気が付いてやがったのか」
「どうしてこんなことを? 用件が有るならどうぞ」
男は少し考えた後口を開く。
「どこで薬草を採ってるんだ?」
「なんでそんなこと聞くんですかね?」
「欲しがっている人が居る」
なるほど、それで俺か。どこからともなく採ってくるからな。
予想通りこいつも彼女にいい顔したいようだ。いや違う、俺は町のためだった。
内心ほっこりしていると男は続ける。
「残念ですけど教えることは出来ません。稼ぎが減っちゃいますしね。さっきのダンジョンで採れるみたいですからそこで――」
俺の発言を遮り、男はおかしなことを言い出した。
「うるせえ! 場所が分かってる薬草に用はねぇんだ!」
何言ってんだこいつ? 意味が分からん。
「いいか? 痛い目に遭いたくなけりゃ場所を――」
その時だ。
「どうしたー。喧嘩かー?」
男の声を聞きつけたのか先輩冒険者が見える所まで来てこちらに訊いてくる。
「チッ、人を呼びやがったか! 覚えてろ!」
そう言って男は町の方へ走り去った。
呼んだのはお前だ。
追いかけるのもなんだし、先輩の方に行って説明しておくか。
「なんか揉めてなかったか?」
「探し物をしてたみたいで手伝おうと声を掛けたら、虫の居所が悪かったのか怒って行っちゃいましたね」
「なんだそりゃ? そりゃ災難だったな」
「まったくですよ」
先輩は持ち場に戻って行った。
良くわからない奴だった。尾行についての相談なら既にギルドでしてあるが、依頼という形にしないと動いてくれないんだよな。そんな金はないので、今後は一層気を付けて町を歩かないとな。
ゲース達の件は仕方が無いけど今回のは困る。
真面目に仕事してるだけで変なのに目を付けられるとは。
(おかしな人多すぎだろ……彼は秘境にある薬草の愛好家なのだろうか?)
疲れたのでダンジョンに帰る。
冒険者たちが帰った後、再びオオコウモリが来た上に同じように闇の魔晶石を持っていた。やはりそういう習性があるに違いない。
モヤモヤは新たなモヤモヤとなっただけだったが、良いこともあったのでとりあえず良しとするか。
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