フリーダム
特訓の内容自体は比較的シンプルなものだ。
まず一段階目として白神さんがオリビアの動きを真似て俺に攻撃を仕掛けてくるので、それを防ぐか避けるかをする練習。
隙を狙うためにわざと攻撃を喰らうにしても、下手すぎると相手に意図がバレかねないからな。
全くのど素人だった俺は、3日かけてなんとか動きがド下手から下手くらいになった。雑な攻撃に対して致命傷は喰らわないくらいのレベルだ。
次は剣の基本的な扱いになれるために素振りなどを二日。
その練習が終わったら、残りの日数は実戦の攻撃練習だ。満遍なくやったところで大した攻撃にはならないので、俺はとにかく下からの斬り上げと、それに連続した袈裟がけの練習をした。↗︎↙︎こういう動き。
これはオリビアが最後に俺の心臓を狙って突きをしてくる時を狙った攻撃だ。突きをされたら、咄嗟にしゃがみそのまま剣を斬り上げる。すると、その時オリビアの腕は伸びているハズなので、俺の剣が腕に当たった衝撃で彼女は体を開くはず。
その瞬間に俺は袈裟斬りをする。
こう考えると、あまりうまく行く気がしないが、まあとにかくやるしかない。
一週間ちょいなんていう日数はあっという間に過ぎていき、とうとう試合の日になってしまった。
ドキドキして全く授業に集中できない一日だった。
放課後になると、水戸先生が俺たちを練習場へと案内してくれた。ちなみに、試合自体は見たい人が見ればいい的なスタンスのようだったが、クラスのほとんどの人間が見に来ていた。練習場の観覧席には、知らない顔の人もいたので他クラスの人も少し来ているようだ。
練習場の真ん中に立ち、対面するオリビアを見る。彼女はオキナドライブと見られるものを布でくるんでいた。
「怖気づかずによくきたね、幸村! 意外だったよ」
「一度言ったことはやり遂げるのがモットーなんでね」
「ふーん。まぁ、いいけど。あんまり早くやられないでね。つまんないからさ!」
「やられやしないさ」
完全に舐められてるな。
まぁいい、好都合だ。舐められているなら俺の逆襲の必殺カウンターも決まりやすいだろうしな。
「さて、挨拶はそれくらいでいいか? ではルールの説明だ。各防具のダメージ率を抽出し、その値があのモニターに表示される。どちらか先にそのダメージ率が100%に達したほうが負けだ。それ以外に気絶や試合続行不可能の怪我を負った場合もな。何か質問あるか?」
「えーと、水戸先生。質問いいですか?」
「なんだ不動」
「あの、続行不可能の怪我って、シールドが残ってるのにそんな怪我負う事あるんですか?」
「なんだ。聞いていないのか。防具のシールドにも限度はある。一時的なダメージ量が大きいならば、相手の攻撃がシールドを突破することはあるんだ」
「そ、そうだったのか」
確かに、白神さんがライフと戦ってた時も、足に怪我を負ってたな。あれは足に大きなダメージを受けてたからか。
「他に質問ないなら、試合を始めるぞ。準備はいいか? では、両者オキナドライブを起動しろ!」
俺は、自分のオキナドライブを起動させた。
そして対面にいるオリビアは、武器を覆っていた布をとった。
瞬間、俺は驚愕する。
――銃型のオキナドライブ!?
彼女の持つ銃は、ライフルのような形状をしていて、銃身が長く、スコープがついていた。
なんてこった! オリビアが中等部の時の武器とは違う!?
しかもよりによって、近距離じゃなくて遠距離武器!!
「起きろ! Freedom!!」
オリビアの持つ銃に青白い線が浮かび上がる。その後、英語音声でオキナドライブが起動すると、彼女のリフレクションが展開した。
これも動画で見た時はアメコミヒーローの服装だったのが、なんとスーツ姿になっていた。上下ともに真っ黒なスーツに、中には白シャツ。そしてネクタイはアメリカの星条旗を意識したような彩りになっていた。
背中には、黒いジェットパックのようなものを背負っている。
「おいおい、聞いてた話と違うぜ……」
思わず口から愚痴がこぼれた。
「よし、双方準備できたな。では、試合開始!!」
水戸先生の合図とともに、試合が開始された。
すると、開始とともに、オリビアは後方に飛んだ。そして、ご挨拶とでもいうように、ライフルから一発のビームが放たれた。
俺はそれを何とかかわす。
ビームは、壁伝いに練習場に張られているドーム状のシールドに激突し、大きな音を立てて消滅した。
「アハハ! よくかわしたね! 今ので終わるかと思ったのに!」
「それくらいで終わってたまるかよ!!」
とにかく遠距離にさせちゃだめだ。近づかないと!!
でもまさかこんな事になると思ってないから空中戦の練習なんてしてないしな……。
「ほらほら、どうした! 逃げ回ってばっかじゃ私には勝てないぞ!!」
空からビームが降り注ぐ。くそ、このままだといずれ疲れて被弾するだけだ。
一応俺の防具にも空中戦用のスラスターが背中についてるけど……。やってみるしかないか? 土壇場での空中戦!!
俺は意を決して、空中戦に挑むことにした。
「スラスター」
そう言うと、背中からエンジン音が聞こえてきた。
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