特訓開始
昼休みも終わり、そのまま授業を受けて放課後になった。俺と白神さんは、職員室に行き、オキナドライブの使用許可を水戸先生にもらいに行った。
「ほう、やる気はあるようだな不動」
「まぁ、やるからには全力でやります」
「良い心がけだ。来週の試合でも使う予定のオキナドライブを一週間貸してやろう。ドイツのマイヤー社製オキナドライブ、『グレーテⅢ』と、アメリカのロゴジー社製防具『コング』だ」
武器と防具は別々の会社のものでも使えるのか。
水戸先生は、そのまま装備がある倉庫へと案内してくれて、俺はそこから装備一式を拝借した。
防具であるパワードスーツとやらを初めて見たが、オリジナルが展開するリフレクション装備が服装のようになっているのに比べると、こっちはまるでRAIHの装甲だ。
全身を包むように金属と樹脂で出来ている装甲。全体的にゴツゴツしている。
胴体部分を上にスライドして、中に乗り込むような感じだ。ちなみに頭には兜のようなものを被る。
持ち運びできるような感じではないので、俺は倉庫で防具をつけた。
「よし、歩いてみろ」
水戸先生に言われるまま、俺は倉庫内を歩き始めた。
正直なところ、普段歩いている感覚とほとんど変わらない。
「問題なさそうだな」
先生のお墨付きも貰えたので、そのまま俺と白神さんは練習場で特訓に入った。
白神さんは既にリフレクションを展開している。
「いいですか。実際の試合では防具に備わっているダメージ検知システムを利用して、勝敗を決めます」
「ダメージ検知システム?」
「はい。これはオリジナルでも量産型でも両方そうですが、防具には受けたダメージがどれほどかを検知する機能があって、その計算結果を防具の中心にあるチップに送信します」
そう言って、白神さんは自分の胸元のあたりに埋め込まれている、青い宝石のようなものを指さした。よく見ると、俺の胸元にも同じようなものがついている。
これがそのチップとやらか。
「試合中は、ここに集められたデータを読み取って、練習場のモニターに数値化して表示してくれます。例えば、ガルシアダメージ率20%、不動ダメージ率35%みたいな塩梅で。そのダメージ率が100%を先に超えたほうが敗者というわけです」
なるほど。このドーム型の練習場にあのでかいモニター、ライブでもやってんのかと思ったが、なるほど、試合用に存在してたのか。ってことはクラス対抗戦とかの時に使うんだろうな。
「ダメージ率っていうのは100%超えたらどうなるんだ? 防具が壊れるのか?」
「いえ。防具にもオキナ鉱石が入っていて、ダメージを受けるほどオキナ鉱石は衝撃を和らげるためエネルギーを消費するんです。だから、100%とはエネルギーの枯渇を意味していて、達すると防具がただのに服になってしまいます」
「なるほどね。よし、試合の流れはわかった。で? 具体的にどんな特訓をするんだ?」
「一週間でやれることは限られてますし、相手はアメリカですから総合的に鍛えたところで勝ち目はないでしょう。なので、一点集中を目指します。ずばり、逆襲の必殺カウンター作戦です!!」
「逆襲の必殺カウンター作戦……」
なんか、めちゃくちゃ危なそうな作戦だな。
「実はですね、ガルシアさんが中学生の頃に、オキナ学園の生徒がアメリカで親善試合したらしくて、その時の動画を先輩に貰ったんです」
「い、いつの間に……」
「授業中にです、内緒ですよ?」
結構行動力あるんだなあ、白神さんって。
彼女は、ポケットからCzPhoneを取り出すと、保存していた動画を見せてくれた。
そこに映っていたのは、今よりも少し幼く見えるオリビアだ。
彼女が使っているのは、ソード型のオキナドライブだった。防具はなんかアメコミヒーローのような服装で、正直ダサかった……。
試合が始まると、鬼神のごとき猛攻で、オリビアは対戦相手を圧倒していた。防御に回るしかなかった相手は徐々に後退していき、もう退路を断たれたところで滅多打ちにされた。
そして試合終了。そんなオリビアの試合が三試合もあった。
見てたら怖くなってきた。
「彼女の弱点を、見つけたんです」
「弱点? 俺には全くわからなかったけど」
「実は彼女、攻撃の順番が決まってるんです。ゲームでもしてる気なのかもしれませんが。右腕、左腕、右足、左足、胴体へと斬りつけるのを繰り返して、最後の一撃は心臓」
そう言われて見返すと、確かに全ての攻撃がその順番に沿っていた。
恐ろしいやつだ。
「不動くんがかける逆転のチャンスは最後の一撃である心臓への攻撃です。このピンポイントな攻撃は、流石の彼女でも不自然な攻撃になってしまいため一瞬の隙が出来てます。そこをカウンターで捉えるんです」
「ちょっと待ってくれ、これって何年前の動画か知らないけど、オリビアがそんなゲーム今はしてない可能性もあるよな? その時はどうするんだ?」
「その時はあきらめましょう!」
「ええ?」
「それぐらい彼女は強いですもの。この癖が抜けてないことを祈ってやるしかないです!!」
と、いうわけで俺は現在も存在しているか不明なオリビアの癖にかけることになった。
もうこうなりゃやけだ。白神さんだってこんなに一生懸命にやってくれてるんだし、負けられない! というか負けたくねえ!
「わかった! 可能性にかけてやる! ありがとう白神さん」
「いえ! 絶対勝ちましょう」
「「おー!!」」
俺たちは二人で気合を入れて、特訓へ励みだした。
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