ルームメイトは女の子
前半は設定説明なので後半まで吹っ飛ばしても大丈夫です。
「ホームルームはこれで終わりだ、では授業に入る。まずは基礎的な歴史からだ。教科書4pを開け。オキナドライブがどのようにして生まれたか」
そうして水戸先生は話を続けた。
話はこうだ。
2030年、日米合同の考古学研究チームが、ギリシャのパルテノン神殿の真下に謎の地下空間を発見した。
そこには、新種の鉱石と人工的に作られた武器があった。その後この地下空間、および武器鉱石は世界中に存在することが判明する。
この鉱石は、研究チームのリーダーだった日本の大学教授、翁昴からオキナ鉱石と名付けられた。
鉱石を持ち帰って研究した米国が、鉱石にはある特殊な性質があることを突き止める。
それは性別が女である人間がその鉱石に触れると、鉱石が青白く光出し、エネルギーを発するというものだった。そして一緒に置いてあった武器にその鉱石を嵌めることで、その武器が起動することもわかった。だが、この武器の性能を引き出すには使用者の年齢が若いほど良いことがわかり、各国は後に専用の学園を作ることになる。
オキナ鉱石により起動をする武器のため、この武器はオキナ駆動型古代武器と呼ばれるようになった。
武器には現在でいうOSのようなものやCPUのようなものが内在していることが分かったが、武器を物理的に破壊することはどんな衝撃でも不可能だったため、分解できず、原理解明は難航していた。
武器の威力は現在量産されている軍用の武器と比べて特別凄まじいというわけでもなかったため、各国はあまりこの研究に予算は出さなかった。
「だが、事変は急転する。白神、2031年何が起こった?」
「はい、正式名称、Robots with Artificial Intelligence that are Hostile to humankind。 人類に敵対的な
人工知能を持つロボット、すなわちRAIHの出現です」
白神さんがそう答える。
身長はおよそ2メートルくらいが一般的で、個体数は不明。目的も不明。ただ人類に敵対的なのは間違いない。言葉を理解し、話す。ただし、身体の中は機械で出来ており、生命は存在しない。
便宜上人工知能を持つと言っているが、どのようにしてこのロボットを製作したのかも不明。
どこから現れたのか未だに謎だが、最初にロシアに出現したそいつは、人類を震撼させた。人類に攻撃をし始めたライフとロシア軍は抗戦。
しかし、ライフには、人類のどんな武器や兵器も全く通用しないことが判明した。ライフには体を覆うシールドのような空間があり、それが攻撃を防いでしまう。後にこの空間は、『絶対領域(Absolute territory)』と呼ばれるようになる。
「ライフの絶対領域を破る唯一の方法、それがオキナドライブだ」
多大な犠牲を出しながらオキナドライブが唯一の対抗策だと分かった世界は、急速にオキナドライブへの研究を加速させる。
その後、各国がこの武器の試作、及び量産化を目標としつつも達成できずにいる中、ドイツがオキナドライブの試作に成功した。
それは古代武器と比べると威力や性能に比べかなり落ちるが、絶対領域を突破できる唯一の現代武器となった。
「おっと、時間が来てしまった。ホームルームが長引いた関係でもう昼休みだな」
というわけで、昼休みになった。
この学園には確か、食堂があるとか聞いたけど……。
「ふ、不動くん。学食に行きませんか? ご飯をその、い、一緒に食べましょう」
白神さんが話しかけてくれた。
「うん、行こう。場所がわかんなくて困ってたんだ」
ラッキー!
「あーあ、先手取られちゃった」
「くぅ。やっぱり戦いはスピードね!」
「落ち着いて、まだ焦るような時間じゃないわ」
何やらクラスはざわついていたが学食に移動した。
学食は豪華なホテルのレストランのような広さだった。だけど食事メニューは割と庶民的で、俺はから揚げ定食を頼んだ。白神さんはサバ定食。
適当な席に2人で座った。
「いやー、ありがとう白神さん。流石に知らない人ばかりの上に全員女子だと気まずくて」
「い、いえいえ。私はその、ちゃんと謝罪とお礼を言いたくて」
「謝罪とお礼? いいよ、そんなの。それより足、大丈夫なの? 昨日は松葉杖ついてたけど」
今日は特にしてないみたいだ。
ちなみに俺は全身痛い。骨折とかはしてなかったらしいけど。昔から体は謎に頑丈なんだよな。
「え、優しい……じゃなくて、はい。1日で一応治りました。まだちょっと違和感はありますけど。そ、それよりです! あなたのこと巻き込んでしまった挙句、危険な目に遭わせてすみませんでした……それと助けてくれてありがとうございました」
「そ、そんな畏まらないでくれよ。俺だって自分のやりたいようにやっただけだし。高校がいきなり変わったのは残念だったけど、まぁ白神さんみたいな可愛い人と知り合えたしむしろラッキーって感じかな」
これはちょっと臭かったかな。
ちらりと白神さんを見てみると、顔をゆでたこのように真っ赤にしていた。ピンクの髪に真っ赤な顔で本当にタコみたいになってる。
「か、かか、可愛い……わ、私が、可愛い……」
壊れたロボットのように繰り返してる。
「あ、あのごめん。急に変なこと言って」
「い、いえ、いえ! 大丈夫です。不動くんだって! か、かか格好よかったですよ! 私を助けてくれたあの時の姿は、ま、まるでそう、夢にみた白馬の王子……!」
「は、白馬?」
「はっ! ひえっ、違います、わ、忘れてください!」
白神さんは、恥ずかしかったのかコップで顔を隠した。ほとんど隠れてないが。
よくわからんけどメルヘンなところがあるんだろうか。
その後少しして、落ち着いてから俺たちは会話を始めた。
「白神さんってさ、なんでこの学園入ったの?」
「私は、小学校で受けた適正テストの結果が良くて、中等部への推薦を貰いました。それでそのままです」
「ふーん、中等部からの人間が殆どっていうもんなぁ。俺はただでさえ知識がないから大変だよ」
「分からないことがあったら聞いてください。私にわかる範囲ならなんでも答えます!」
「はは、そりゃありがたい。それなら、一つ。自己紹介の時にさ、恋人を作るのが目標っていう子もいたけど、この学園の生徒って男とどうやって知り合うんだ?」
生徒は全員女子だし、難しそうだよな。
「こ、恋人ですか!? わ、私はいたことが無いのでわかりませんが……よく聞くのは、小学生の時の知り合いの男子と帰省した時に付き合うとか。年上好きの子は水上都市で働いてる男の人を狙うとか、他校の学祭の時期を狙って突撃する、とかですかね。けど基本的には積極的な女の子以外は恋人なんていないと思います」
女子校と同じ感じなのかな?
女子校のこともよく知らんけど。
「なるほどなぁ。共学の女子よりも積極的な人が多そうだな」
「気をつけてくださいね、不動くん。あなたは、か、確実に学園の風紀を乱す気がします……」
「ええ!? なんで! 俺そんなチャラついたやつじゃないって!!」
「そういう意味ではありませんけど、不動くんは天然というか……」
「そうかなぁ。まぁ気をつけるよ」
釈然としなかったが、とりあえずそんな感じの会話をして昼休みは終わった。
その後も、一般課程の授業とオキナドライブ関連の授業を受けて、1日が終わった。
授業が終わって、とりあえず研究室に戻ると、静香さんがいた。
「ゆっきーの部屋は寮にもうあるよーん」
「ゆっきーってなんすか」
「幸村だからゆっきー。可愛いっしょ」
「はぁ。わかりました、じゃあその部屋に移動します」
ちなみに静香さんは本名、奈良静香と言ってオキナドライブ関連の研究者のようだ。
俺は荷物を持って言われた通りの寮の部屋へと向かった。それにしても研究室を出る時の静香さんの満面の笑みが気になる……。
部屋に入ると、部屋はベッドが二つあった。
そうか、寮は2人部屋になってるのか。
って事は俺は一人でこの広い部屋を使えるのか。ラッキー!
そう思って部屋を見渡すと、部屋には既に誰かの荷物が置いてあった。
い、嫌な予感がする。とても。
耳を澄ますと、誰かが浴室から出て来る音がした。
嫌な予感がするぞ!
「随分遅かったんですね。先にシャワー浴びてしまいました。これからルームメイトとしてよろしくです。私は白神柚子、で……す……」
白神さんと目があってしまった。彼女は口を金魚のようにパクパクさせている。
「な、な、ななんでここに不動くんが……!?」
浴室から出てきた白神さんは、バスタオルで髪を拭きながら、下着姿のみだった。
引き締まった身体と、豊満な胸が俺の目を襲う。
み、みたら終わりだ! 見たら終わりだ!
分かっているのに、俺は目を逸らせずにいた。
白神さんは、壊れかけたロボットのように、カクついた動きになったかと思えば、そのまま浴室へとダッシュし、Uターンしていった。
ま、まずい、弁解しないと。
「あ、あの白神さん。俺ごめん! 何も知らなくて、けどここが部屋って言われたんだけど!!」
めちゃくちゃ言い訳っぽい言動を我ながらしてしまったが、本当なのだから仕方ない。
返事を待っていると、ぽつりと白神さんが声を発した。
「不動くんの……えっち」
もしかして……俺の学園生活、終わった?
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