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切れ味

 

「全員! 後方出口より退避! ガルシア、白神はバスからオリジナル全員分持ってこい! オリジナルを持たない生徒達は、避難誘導! 不動は私とここでこいつを食い止める!」


「「り、了解!」」

「Yes sir!」


 水戸先生の指示に従い、各自自分の仕事へと移る。

 くそっ、なんでLAIHがここに。


「早く、渡してもらいましょうか」


 LAIHの右手が刃物へと変化し、一気に俺に向かって間合いを詰めるとそれを振り下ろしてきた。

 水戸先生が、その間合いに割り込み、腰に携帯していた、インスタントオキナドライブ、通称IOドライブを使用して、対抗した。


 バチバチと、火花が散る音がする。


 IOドライブは剣の柄のような形をしており、スイッチを押すことで、青白い光の剣を出現させる。

 この剣は、正に緊急時に使用する応急用のオキナドライブで、5分ほどしか出力が持たない。


「ちっ、何故検知をくぐり抜けたんだ……アラートが鳴ってないぞ」


 水戸先生は、鍔迫り合いをしながらそう言った。

 LAIHが出現してから、世界各国はLAIHの出現対策を行ってきた。そして出来上がったのがLAIH専用アラートだ。通称Lアラートだ。


 LAIHは、通常ステルス機能を使用しているため姿を捕捉できない。

 だが、イギリスの大学の研究成果から、ステルス解除を行う際の微量な重力場の変化、ゆらぎを検知する事で、ある程度出現を予期することができるようになった。


 このゆらぎを検知する機能は年々上がっており、現在はLAIHが出現する1分前には出現を予測出来ている、はずだったのだが……。


 水戸先生は、攻撃こそ最大の防御とでも言うように、激しく攻め立てていた。

 凄い、オキナドライブのアシスト無しにあそこまで動けるなんて。


「くっ……流石、オキナ学園の教師、お強いですね」


 LAIHが先生との攻防の中、不気味にもそう言った。LAIHが俺への注意を無くし始めている。

 よし、今のうちに俺も加勢しよう。

 刀から鞘を抜く。柄を両手で握り、構えた。


 一気に踏み込んで、LAIHの背後から斬りつける。LAIHは、水戸先生のIOドライブを、上に弾いて俺の攻撃を受け止めた。


「おっと、危な……?」


 ザンッ。


 LAIHが俺の攻撃を受け止めた――はずだったが、そのまま俺の刀は豆腐でも切るようにLAIHの機械仕掛けな腕を切断していた。


「えっ?」


 切った俺ですら困惑している。

 地面に落ちたLAIHの腕が、土埃をあげた。


「これが……『ファースト』の切れ味ということですか」


 LAIHは、何か考えるようにして自身の切断面を見つめていた。


「不動、よくやった! 一気に攻め立てるぞ!!」


 水戸先生は、LAIHへと追撃を開始した。俺も先生の邪魔にならない程度に攻撃する。

 LAIHは、なんとか攻撃を凌いでいたが、やがて形勢不利とみたのか、落ちていた自分の腕を拾うと、飛び跳ねて、空中へと逃げた。


「増援も来そうですし……今日は退散するとしましょう。会えて嬉しかったですよ、不動幸村。それは貴方に預けておきます」


 そういって、LAIHはどんどん上空へと昇っていき、やがて忽然と姿を消した。


「仕留め損なったが……オリジナルは守り切れた。上出来だな。よくやったぞ不動、助かった」


 先生の持っているIOドライブが光を失った。時間的にもギリギリだったんだ。


「いえ……あれは相手が油断してたまたま……それにしてもこいつの切れ味が……」

「ああ、恐ろしいほどの切れ味だな。リフレクション無しでそれだ。これはひょっとしてとんでもないお宝かもしれん」


 その後俺たちは学園へと戻り、ことの顛末を理事長へと報告することになった。

 理事長室へと入る俺と水戸先生。いかにも高そうなテカりのある木の机と、真っ黒な椅子に座っている理事長。


 入学式で見た以来だ。相変わらずオールバックな金髪で顔が怖い。

 ちなみに理事長は日本とロシアのハーフらしく、金髪で青目だが名前は春山恵令奈はるやまえれなと全部漢字だ。意外だ。


「ふむ……なるほど。Lアラートに引っかからずに出現ですか。それはまた、厄介な敵ですね」


 理事長は、手を顔の前で組みながらそう呟いた。

 相変わらずこの人は表情は怖いのに口調は優しい。そこがまた逆に怖い。


「それに、不動くん以外に抜けない刀、ですか……」


 理事長の机には発見した刀が置いてある。

 一応あのあと柚子とオリビアにも試してもらったけどやはり鞘から抜くことはできなかった。


 理事長も当然試したけど、「ぐぬぬぬぬ!!」とか言いながら結局抜けてなかったな。ちょっとあの必死な理事長は可愛かった。


「本来であれば、このオリジナルの受け取り人は決まっていたのですが……こうなった以上仕方ありませんね。これは、不動くん、君が使いなさい」

「えっ、俺が? い、いやいや、俺なんてまだ全然武器の使い方がわかってないのに」

「君が、使いなさい」

「……はい」


 2度言わせるな、と言わんばかりの張り付くような理事長の満面の笑み。

 もしもう一度食い下がってたら、ブチギレてたかな……。


「では、水戸先生、ご苦労様でした。素晴らしい功績です。次のボーナスは期待しててください」

「はっ、ありがとうございます」


 ボーナスが増えるんだ……。なんかそこは俗っぽいんだな。

 というわけで理事長との話を終え、部屋から出た俺と先生。このまま今日は解散かと思ったが、何やら水戸先生が俺に言いたそうにしていた。


「さて……不動。理事長からの評価も鰻上りで、ボーナスも増えるときた。これはお前のおかげだ。さぁ、約束通り、なんでもしてやろう」

「えっ」


 そ、そういえばそんなこと言ってたな。

 まるで何も考えてなかったけど、どうしよう。

 く、くそ、なんでもって言われるとエロいことしか思い浮かばないぞ。


「どうした? 遠慮してるのか?」

「い、いやぁ……」

「ふっ、お前の考えなどお見通しだ。さっきから視線がこいつに向かってるからな」


 そういって水戸先生は自分の胸を指差した。

 ば、ばれてるー!

 い、いやでも別に見たくて見てるんじゃないんです。なんか勝手に見ちゃうだけなんです。


「全く……これだから男というやつは。当たり前だがお前は未成年の上に私は先生だ。そんな事をしたら私は逮捕されるからな」

「わ、わかってますよ!」


 うーむ、エロい事以外で何かやりたい事といえば……あるか?

 俺は頭をフル回転させて、何かないか考えた……。



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