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男女一つ屋根の下

 試合が終わって、筋肉痛だらけの俺だったが、特に日常に変わりはない。

 敢えて言えば、オリビアと仲良くなったくらいだろうか。


「なぁー、幸村。今日お前の部屋遊びに行っていい?」

「えっ」


 授業の合間の休憩中、俺の席にきたオリビアの、いきなりの言葉に思わず声が出た。

 どう考えてもそれはまずい。というか無理だ。未だに俺が柚子と同じ部屋だって事は、クラスメイトにはバレてない(はず)。


「どんな感じの部屋なのか気になるな」

「い、いや、それは難しいかな」

「なんで?」

「そ、そりゃー、男女が同じ部屋にいちゃ駄目でしょ」

「ふーん、別に一緒に住んでるわけでもないし、いいんじゃないの? 日本だとそういうもんなのか? 柚子ゆず?」


 オリビアは、近くにいた柚子に話しかけた。あの試合から数日経ったが、オリビアはクラスメイトの全員と既に会話済らしい。恐ろしい行動力。


「うーん、まぁ泊まりとかは一般的に良くないと思いますが、生徒手帳にはそんな校則書いてありません」


 柚子は、生徒手帳と睨めっこしながらそう言った。

 おい! おいおいおい! 柚子、何を当たり前のように擁護側に回ってんだよ。

 そっちは自爆の道だぞ! ここで天然を発揮するな!


「って事は違反にはならないんだな! よし、じゃあ今日は幸村の部屋に遊びに行こーよ。柚子も!」

「えっ、わ、私もですか? 良いんですか? って、あっ!!」


 柚子はようやく気づいたようだ。口を押さえて、しまったという表情をしている。


「どうしたの? 柚子」

「い、いやぁ、やっぱりその、ダメなんじゃないですか? 男子の部屋に行くのは」

「急にどうしたのさ。そういえば柚子の部屋って何号室? あんまり寮で見た事ないけど」

「え? いやー、その……」


 柚子が言い淀んでいたその時、教室の扉が開いて水戸先生がやってきた。朝のホームルームの時間だ。

 仕方ないのでオリビアも席へと戻っていった。救いの女神だな、水戸先生。

 事務的な話を終えた後、先生からは意外な話が飛び出た。


「急な話だが、今週の土曜日に、東京大学がオキナドライブがありそうな場所の調査を行うらしい。場所は水戸城だ。興味ある奴がいたら私まで言いに来い。連れていってやる。中々こんな機会ないぞ」


 そう言って、ホームルームは終わった。

 オキナドライブの調査か……。

 昼休みになって、俺は柚子とオリビアに聞いてみることにした。


「なぁ、オキナドライブの調査ってそんなにレアなのか?」

「まぁ、そこそこレアですね。ただ、基本的には調査してもオキナドライブが発掘される事はありません。蓋を開けてみたらオキナ鉱石だけ、なんていうのが殆どです。実際に新しくオリジナルが発掘されたら相当凄いです」

「なるほど。精度はそんなに良くないってことか。けど今回は行ってみようかな。柚子とオリビアはどうする?」

「私は行く! 水戸城ってあれだろ? サムライがいるところだろ!?」


 それは随分昔の話だが。

 しかもかなり過激派のサムライが。


「じゃあ、私も行こうかな」


 柚子はそう言った。

 というわけで、柚子とオリビアも一緒に行くことになった。

 水戸先生に参加する旨を伝えると、特に驚かれることもなく了承された。



 そうこうして1日が終わり、寮へと皆が帰る中、オリビアがこんなことを言い始めた。


「ようやく私の寮の部屋が決まったんだよ」

「あ、オリビアさんはまだ部屋決まってなかったんですか」 


 柚子がそう聞いた。


「そうなんだ。今まで外泊してた」

「どこになったんです?」

「419号室」


「「419!?」」


 俺と柚子は思わずハモった。

 俺たちの部屋は420号室。つまり、その隣だ。隣空き部屋だったっけ……?


「どうしたの。二人揃って」

「い、いや」

「な、なんでもないですよ」


 まずいな、このままだといつかオリビアにバレてしまうかも。


 その後なんだかんだでオリビアにはバレずに部屋に戻れた俺たちだったが、急遽俺と柚子は作戦会議を行う事になった。

 ベッドの上に正座して向き合う俺たち。


「どう、しましょうか」

「どうするか」

「この部屋、防音がどれくらいしっかりしてるのかわからないですしね」

「下手に大声出したらソッコーばれるかもな」


 というわけで、俺たちは最新の注意を払って生活することにした、のだが……。


「ぎエエエエエぇぇ!!!????」


 夜の9時頃、部屋に黒くてカサカサしてるGのモノが現れて、柚子が断末魔のような絶叫をした。

 案の定、隣の部屋にいたオリビアはその声を聞いて部屋に突入してきた。(鍵をぶち破って)


「大丈夫か!!?」


 瞬間、部屋にいる俺と柚子を発見したオリビアは、三度見くらいした後に、ゴキブリを叩き潰してゴミ袋に入れると、部屋の扉を閉めた。

 そして騒動が周りに広がる前に、まわりの住人に嘘の事情を説明して野次馬を来ないようにしていた。


「なーるほど。そういう事かぁ」


 彼女は、俺たちを見て邪悪な笑みを浮かべた。


「ニヒヒヒ、面白いこと知っちゃったなー。そうか、二人はルームメイトだったんだな。もしかして、二人ってカップルなのか?」


「い、いや違うよ」

「ち、違いますよ!」


 オリビアの質問に思わず反射的に答える俺たち。すると彼女はますます意地悪な笑みを浮かべた。


「とはいえ若い男女が同じ部屋っていうことは……流石に『シタ』んだろ?」


 オリビアが何を言いたいのか俺はすぐにわかったが、柚子はポカーンとしていた。

 全然わかってないみたいだ。


「したって何をです?」

「えっ? な、何って……そりゃ……あ、あれだよあれ」


 あまりにも純粋な柚子の瞳にびっくりしたのか、オリビアは逆に動揺していた。

 そして、少し頬を赤らめながら、柚子に耳打ちをした。


「セッ……!? えっ……!?」


 柚子は顔を真っ赤にしてしまった。

 まさかそのまま言うとは……。


「す、するわけないじゃないですか! は、破廉恥ですよ!」

「ま、そりゃそうか。幸村みたいな奥手チェリーボーイにはまだまだ早いね。HAHAHA」

「わ、悪かったな、奥手チェリーで」


 俺にそんな度胸はない。

 とはいえオリビアの反応からして彼女が経験豊富なようには見えないんだが……。


「まあ安心しな。私はお前らのこと黙っててやるよ、その代わりひとつ条件がある」

「条件?」


 ニヤニヤしてるし、なんか嫌な予感がするな……。


「私もこの部屋にたまに泊まりにいく。その時は、柚子と私は部屋を交換する。条件はこれだけ」


 それだけって……それはまずいだろ。


「そ、それって幸村くんとオリビアさんがこの部屋で一晩一緒になるってことでは?」

「そのとーーり! なんか問題あるか? 柚子」


 相変わらずニヤニヤしているオリビア。

 そう聞かれた柚子は、俺の顔とオリビアの顔を交互に何度か見た後、腕をぶんぶん振り回して喚き始めた。


「だ、だめだめ! だめですー!! そ、そんな危ないこと! させられませーーん!!」


 柚子がこんなに駄々をこねてるところ初めて見た……。


「ふぅーん? 危ないって何が? 私と幸村が一緒だと何をするってのさ?」

「それはだからその……セッ……というか、まぐわりというか……」


 まぐわるという表現の方が卑猥な気がするぞ柚子よ。


「柚子は幸村が私を襲うと思ってるんだな? そうか、幸村、そうなのか?」


 そう言って、オリビアは俺の方へ体を向けた。わざと胸の下で腕組みして、アピールするように。

 今まであまり気づいてなかったが、オリビアの格好がかなりエロい。


「くっ、この攻撃……つよいぜ」


 ただでさえメロンのようにたわわな乳をしているのに、ノースリーブでおそらく下着もつけていない。お、おっぱいがこぼれ落ちそうですよ! オリビアさん!?

 め、目のやり場に困る。

 俺は思わず目を逸らした。負けた。


「あ、あー! 幸村くん目を逸らしましたね? え、えっちなんだー! やっぱりだめだめ! 危ないですよ!」

「柚子、危ないって誰の心配してるんだー?」

「そ、それはもちろんオリビアさんですよ」

「ホントかなー? 幸村が私に取られそうで必死になってるんじゃないのかー?」

「そっ、そんなわけないじゃないですか!!」


 相変わらず柚子は腕をぶんぶん振り回しながらそう答えた。

 オリビアにからかわれてるなー。


「じゃ、私がたまに交換しても問題ないな?」

「もちろんですよ! オールオッケーってやつですよ!」

「オーライ! じゃ取引成立って事で」

「あっ……や、やられました」


 ちょ、チョロすぎる、柚子。アホの子になってしまった。

 っていうかこの話、なんで俺抜きで勝手に進められてんだ?


「な、なぁ俺の意見は?」

「なにいってるのさ幸村、女子と相部屋なんて事がバレた時に1番困るのはお前だろ?」

「そ、それはそうだわ……」


 何も言い返せんかった。

 そんな事がバレたら俺の学園生活がどうなることやら……。

 というわけで俺たちはオリビアの条件に逆らえずのむことになった。


「つーかこの条件、オリビアは何が目的なんだよ」

「幸村、そんな事レディーに言わせる気なのか?」


 頬を赤らめてわざとらしく指をモジモジさせるオリビア。

 う、うそくせぇー。ぜ、絶対何か企んでるな……。

 とはいえその企みが何かはわからず、そのまま日は流れ、土曜日、オキナドライブの調査の日になった。


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