永夢
…とにかくあつかった。僕は、霞んだ視界の中、リモコンを探してクーラーをつけた。ものすごい永い夢を見ていたような気がする。
涼しい風が流れ始めた部屋で、天井をぼんやりと眺めながら、さっきまで見ていた夢の内容を思い浮かべる。あまり覚えてはいないが、それはTシャツが冷や汗でびっしょり濡れるほどに怖い夢だった。どんな夢を見たのか気になってしょうがない。意地でも思い出そうと、僕は再び目を閉じる……。
……思い出した。瞼を通り越して伝わってくる強い光と、身体中が焼けるようなこのジリジリとした感覚。既に真っ赤な炎に囲まれていた僕は、この状況から、今日から逃れる事はできない。きっと、僕がすぐにこの夢を思い出さない限りは。
ぴくりとも動いてはくれない足も、忘れないようにと願って固く組んだ手も、強くつぶった目も。
身体中が、とにかく…
これは私が高校生の時に、授業で課題として出された条件作文で提出したものです。
条件は「とにかくあつかった。」から始める。あつかったは、暑い、熱い、厚い、どれも自由でよい。
私はループものを書いてみたかったので、「とにかく」で始まるストーリーを「とにかく」で終わらせ、繋がりを作りました。それに加え、「あつかった」に前半と後半とで違う意味を持たせてみました。
最初は先程申した通りよくあるループもののストーリーだったので、タイトルは「n番煎じ」でしたが、タイトルにループしているという含みを持たせたかったので、「永夢」に変更してみました。
何度も読みたくなるようなストーリーにしてみたので、たくさん読んで頂けると幸いです。