銃が弱い世界
「銃使いか」
冒険者ギルドで登録を終え、クエストボードを見ていると後ろから声をかけられた。
「銃を知ってるのですか?」
後ろを向くと熊の様な大男が腕を組み私を覗き込んでいた。
私はてっきりここは剣と魔法のファンタジー世界だと思っていたが違うのかと思い聞いた。
「まあな、だが誰も使わない」
「なぜです? 強いでしょ」
21世紀の地球で最強と言ったら銃だ。こっちでは違うのだろうか。
「強い? 馬鹿言うな。雷魔法一つで爆発し自分どころか仲間まで被害が及ぶ危険物だ。田舎じゃどうだったか知らないがこっちに来たからには、使うのはやめてけ、危なっかしくてパーティーも組めん」
「……」
火薬を持ち運ばなければいけないからか。確かに危ないかもしれない。
「いいか。こっちじゃゴブリンシャーマンどころかゴブリンですらサンダーを使う。魔法と銃、どっちが早いか分かるだろ」
「銃ではないのですか」
「本気で言ってるのか? ファイアやウインドカッターよりサンダーは早い。どうやって勝とうと言うんだ」
「そりゃ、バシュッと……」
まあ私はそんなこと出来ない訳だが、プロなら可能だ。
「そんなことを言ってる間にサンダーなら10発は飛んでくる」
「……でも詠唱いるし」
流石に10発は大げさだろ。
「本当に田舎から出てきたんだな。モンスターは詠唱しない」
「じゃあどうやって魔法を使うんですか」
「体内の魔石さ、むしろ詠唱を必要とする種族の方が稀だ」
異世界に火器がない理由を考えた。