漫画家ドルマの笑い
「はははっ……まさかこうも上手くいくとはな!!」
一人、自宅の机の前でごきげんなのはドルマ。そう、あのいやらしい同人誌をばらまく計画の発案者その人である。
戦争はあっさりと終結した。もちろんドルマが身を置く国が勝利したのである。
シルディールがいなくなったあとの敵国はもろいものだった。
シルディールの代わりに該当地方の守備についたダムゴンドという将軍はたいした能力のない男であり、そこから侵入した軍がまさに破竹の勢いで敵国の首都にまで進攻したのである。
敵国の名だたる将軍はダムゴンド、マクシムを含めてほとんどが捕らえられ、斬首された。
シルディールは行方知らずだが、祖国の首都が陥落しても戻ってこないところをみると、おそらくどこかで野垂れ死んでいるのだろう。
ドルマは今回の功績で莫大な報奨金を得ることができた。
さらに戦意高揚の漫画を書くという面倒な義務からも解放されたし、あの堅苦しい場所からも出ることができたのである。今後は自分の家で、自分の好きに漫画が書けるということだ。
そして貰った大金のおかげで将来の生活を心配する必要もない。なんと素晴らしいことか!
しばらくは戦後の混乱が続くかもしれないが、それは自分にまったく関係のないこと。有り余る金で遊んで、飽きたら漫画を書いて、また飽きたらふたたび有り余る金で豪遊する。
うむ。理想の人生だ。
この戦争で一番幸せになれたのは俺かもしれないな、とドルマは顔をにやにやさせていた。
――トントン。
その時、良い気分にひたっていたドルマを現実に引き戻すノックの音が、入口のドアから聞こえた。
ドルマは友人の数はそこまで多くない。はて、誰だろうと訝しく思いながらも、ドルマは立ち上がって玄関へと向かう。
「はいはい、今開けますよっと」
ドルマが無警戒にドアを開ける。
銀色の髪と赤い瞳が見えたと思った瞬間、みぞおちに衝撃を感じてドルマの意識は闇に落ちた。