表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/6

漫画家ドルマのぼやき

「あー、くそ。やってられねーよ……」


 戦時中のある国における、ある建物の中の一室で。


 紙を載せた机を前にし、手にはペンを持ってそんなぼやきを口にする男がいた。名前はドルマという。


 ドルマは国の命令で、戦意高揚のための漫画を書かされている。


 しかし、最近はそのことに嫌気がさしていた。


 なぜなら彼は元々、女を題材にいやらしい絵と話を書くのが趣味の男だからである。表と裏の名義を使い分けており、当然そういったいわゆるエロ漫画は裏の名義でやっていた。


 戦意高揚のための漫画を書かされるようになってからは、そっちの裏稼業のほうに割ける時間はなかったため、さすがにそろそろ自分の趣味に没頭したいという気持ちが大きくなっていたのである。


 そしてドルマの気分を陰鬱とさせていたもう一つの理由は、この戦争がいつまでも終わりそうにないことだ。


 つまり、下手をすると自分は未来永劫、気がのらない漫画を書き続けないといけない。今も国から与えられた一室にほぼ軟禁されているような状態だ。


 国力的にも戦力的にも敵国よりこちらの方が有利であり、順当に行けばこちらが勝つはずの戦争だった。


 しかし、その未来予測を覆す強大な存在が交戦中の敵国にいた。信じられないことだがそれはたった一人の女の将軍だった。名前はシルディールといい、敵国においては姫将軍という愛称で呼ばれている。


 その姫将軍がどれくらい強いかというと、剣一本であっさりと巨大な生物であるドラゴンを倒してしまうほどである。


 さらには飛んでくる大砲の弾すら剣で一刀両断したという武勇伝があり、シルディールが現れた戦場ではこちらの兵士も我先にと逃げまどい、勝負にならないのだ。


 他の戦場では優位に立っても、結局シルディールのせいでその勝ち分が帳消しにされてしまう。


 シルディールさえいなければこの戦争にはあっさり勝利できて、自分もこのつまらない役目から解放されるはずなのに……とドルマは心の中でののしった。


 それと同時に妄想の中でさんざんシルディールを辱める。その顔も姿もすでにこの国で知らぬものはない。敵国においては子どもはもちろん、赤子までその顔を知っているかもしれないほどの英雄だ。


 本当に、シルディールさえいなければ……。


 ……と歯ぎしりしていたドルマの脳裏に、その時絶好のアイディアが閃いた。


 戦いを勝利に導き、さらに自分の欲求をも満たせる一挙両得の考え。


 ドルマはその思いつきに膝を打ち、さっそく上司に進言しようと部屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ