7話
悪魔は、寝ることはない。
世の中にとっては真夜中でも、悪魔には昼のように明るい。
だから私は、城の屋根にいる。
そこから街を見下ろしてみたら、見えるのは寝ている人間ども。
なんて無防備なんだろう。
あんなに安らかに寝ているのを見ると、首を掻き切りたくなる。
いっそのこと……
「デケム」
右を向くとそこには、騎士に寄生をしたセクがいた。
「悪い妄想しないで。主が穢れる」
「ふっ……そうね。主の身体だものね」
「うん」
「だけど、人間を殺そうと思うのは私たちの存在する意味よ」
「でも、主の身体ではやってはいけない」
「……そうね。確かに」
この身体で無意味に人を殺したら主はなんと言うだろうか。
きっとひどく、いや縁を切られるくらい怒るだろう。
心臓の鼓動一つしない私たちは、心臓が愛おしい。
しかし、主はそうではないようだ。
「ねえセク」
「なに?」
「どうだった?」
私はこの城に到着してまだ主の部屋しか知らない。
この屋根に来たのは、主の部屋の窓から出たからだ。
「『ロサ様が生きていた。確かに殿下が死んだと言っていたのに……』まずこの騎士と会う人全員言っていた」
また、殿下か……
「殿下は、明日帰ってくる。そう仕向けた」
「ふーん」
「殿下には婚約者がいる。その婚約者の名前が……」
一瞬濁ったセクの顔を見て、もしやと感じた。
「モネア・サンクトゥス」
「……サンクトゥス……」
主の名字と同じ。それが意味することは、分かりやすく、恨めしい。
「情報では、モネアは義理の妹らしい。母親が、主が12の時に死に、そのわずか数日後に新しい母と共に来たと言っていた」
「はぁ……殺したい。その元凶、恨めしい」
自然と口に出していた。
主はなんでも笑顔をだせば全てが終わると思っている。
口答えなんてしない。おしとやかなと思えばそれきりだけど、その背景を見れば、口答えなんてしたらさらに悪い状況に追い込まれたことがあったのだろう。その辛さを主はひしひしと感じていた筈だ。
恨めしい。憎い……
「今この城には、その女がいる。でも、おかしい」
「何が?」
「女は聖女だと書いてあった。しかも、祭り上げられたような文章で。なのに、悪魔を誰1人として防げていない」
この城に、聖女がいる?
そんな気配全くなかった。
聖女の気配なんて一番嫌なもの。だからすぐに感じるはずなのに。
何も感じない。
それに、聖女にしては脆い結界。
「女は、聖女ごっこでもしてそうね」
「うん」
ああ。どうやって主を殺したの?
その方法、まるっきり貴女に返してあげるのに。
でも、どういう性格か分からない限り、どうしようもできない。
「というか、姉が帰ってきたのならいの一番にきそうだけど」
「その女、部屋に行ったら失神してた。あまりの衝撃で意識飛んだんじゃない?」
「殺してないの?」
「ほかに人がいたから」
その表情は、心底悔しいと思っている顔だった。
普段無口で何考えてるか分からないセクでさえ、主の死の理由に近づくたびに憎しみが湧いているのが私でもわかる。
さぁ、明日は殿下とその女に会って覚悟をみましょうか……
残りあと6日。