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3話

「主、大丈夫?」

「主、ちゃんと寝れる?」

7番目8番目のセプテットとオクトは心配そうに寝ている私を覗き込んだ。

一方私はというと、とてつもなく気持ち悪い。例えると、ムカデが全身にくっついて動き回っているような感覚と頭から血を大量に吸い取られたようなくらくらする感覚が同時に襲っている状態だ。

果てしなく気持ち悪い。動きたくもない。

「う……大丈夫ではないわ」

「やっぱりあの男が悪いんだよ」

「あの男、いらないよね?」

純粋な瞳でこういう殺伐としたことを言うから怖いことを変わりない。

「……殺しちゃダメよ。彼は、人間でしょう。必要とされている人が必ずいるはずよ」

「僕たちにとってはいらないのに?」

「私たちにとっては、害なのに?」

「もしそうだとしても、彼は地上にいる人。きっと必要とされている人よ」

私は、きっと必要とされなかったんだろう。だから出来損ないの死神になってここにいるのだ。

すると、2人は優しく私を抱きしめてくれる。

「主は私たちにとって大事な人」

「主は僕たちにとって必要な人だよ」

私には10人の召喚魔がいる。この子たちが私にとって大事な人達であることには変わりはない。きっと生きていた頃の私はこの子たちにたくさん救われたんだろう。

「ありがとう」

嫌な感覚がどんどん薄れていくのを感じながら抱きしめていた。



⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎



2人の能力で無事気持ち悪い感覚を消すことに成功し、のんびり話しているとウーナが部屋に入ってきた。

「あらウーナ。どうしたの?」

何やら深刻な顔をしているのを確認し、思わず身構える。

「あの……デケムを出してもらうことは可能でしょうか?」

「デケム?別に構わないけど、なにかしてもらいたいの?」

デケムは、10番目の召喚魔、狐の悪魔で特徴はキスした相手に完璧に化けることができる。

肌に質感も髪の艶やかさもはたまた記憶も……

デケムの変化に気付くのは、聖職者の中でも相当実力がないと不可能だ。

「はい。あの人間に、なぜ主がそれほどまでに拒否反応を起こしたのか知りたくなりまして。願わくば、主の修行を手伝えればと思いました」

「なるほど。それはいい案かもしれないけれど、それはデケムを人間がいるところに送り込むってこと?悪魔が人間と暮らせることはできるの?」

私が人間を見ただけで寝たきりのような姿になってしまったのだ。

死神がダメなら悪魔でもダメだろう。勝手にそう思っていたけど……

「うん。できるよ」

「できるの?」

いきなり後ろから抱きつかれた感覚が出てきたと思い後ろを向いたら、そこにいたのは男のデケムだった。

「もちろん!主の体になれば大丈夫。僕は、主のためならなんだってするから」

「デケム……今日は男なのね」

さりげなく腕を解こうとしたら、さらに強く抱きしめられてしまい少しだけドキドキしてしまう。

「だって女の姿でもいいけど、男の姿だったら主、ドキドキしてるのが伝わってくるから」

ね?と私の顔のすぐ横に赤い瞳で見つめられるとやはり照れてしまう。

「デケム。なにしてるのです。離れなさい」

いつものウーナの2トーンほど低い声がデケムから漂う甘い香りを消していく。

「はあい。そんなにきつく言わなくていいじゃん」

デケムは私から離れて私のベッドのそばに座った。

「で。僕はなにをすればいいの?」

「私になりすまし、今外にいる人に近づいて、私がなぜ出来損ないの死神になったのか突き止めて欲しいの」

原因がわかれば、なんとか出来かもしれない。

淡い期待を込めた願いだった。

「うんわかった。その願い、叶える」

「……」

すぐに返事してくれたのはいいのだが、それをするためにはキ……き……キスを……

「恥ずかしいの?キスするの」

「もちろんよ!私、キスなんて経験ないもの」

いや、本当はあるかもしれないけど私の記憶の中にはない。

「大丈夫だよ。僕は男であり女でもあるから。僕より不確定なやつは見たことないもん。だからそんな緊張することないよ。なんなら狐にでもなるよ」

そう言ってもふもふの可愛らしい白い狐になってみるデケム。

そういうことじゃないんだけど……そう言おうとした口をすぐさま閉じた。

「狐じゃなくていいわ。人の姿で私の姿になってくれた方がまだいいかも」

そう告げた瞬間にデケムは人の姿になり、私を抱きしめた。

「ありがとう。絶対に主の抱えてるモノ、解決してみせるから」


次の瞬間、優しい熱が私の唇に触れた。


思わず目を閉じて、私の体からなにかを吸われるような気分になった。

熱が離れて、目を開けるとそこには


やはり私の姿がいた。

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