2話
現れた男性に見覚えはなかった。
赤髪の短髪でいかにも騎士のようだった。
それでも、私の汗と体温はどんどん奪われている。
「主、寝室に行った方がよろしいかと。この者は害に当たります」
「……そうするわ」
なぜ、こんなに立つのさえも辛いのだろう。
「セプテット、オクト。主をお運びしろ」
「「はあーい」」
セプテットとオクトは7番目8番目の召喚魔である男女の双子バクの悪魔。
私が眠れない時は、2人に無理やり眠らせるように頼む。
私はなぜか、眠れない。
死神に睡眠は必要なのか問う者はいるかもしれない。
答えは地上ではいる、だ。
地上では、空気が合わない。
まだ地下の方が合いやすいくらいだ。
なので脳の休憩が必要で、それが睡眠というわけだ。
「主大丈夫?」
「すぐに眠らせてあげる」
「ありがとう」
2人の肩を借りながら私は寝室に向かった。
⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎
無事主は、あの夢喰いバクの双子のおかげで寝室に行くことができたようだ。
にしてもあの男……どこかでみたことがある。
とても嫌な記憶で。
「ウーナ、あの男のことわかるか?」
「んーすごくみたことがあるけど、名前までは思い出せない」
ウーナの方もあの男を睨みながら答える。
「ただ分かることは、私たちにとっては害ね」
やはり抱いている嫌悪感も同じようだ。
「ああ。どうする?殺す?」
「人間は主が殺すべきよ。私たちが殺したところで主の修行は終わらないもの」
それもそうだ。
何しろ、主が歩けなくなるくらい具合が悪くなった人間だ。
きっと何か関係があるはず……
「デケム……デケムならあの人間と話せるんじゃない?」
「確かに。あいつならいけるな……」
デケム……10番目の召喚魔である狐の悪魔だ。女性なのか男性なのか少女なのか少年なのか定かじゃない。だからこそ完璧に化けることができる。
「でも、デケムを出すにはリスクが大きいわね……」
デケムは、化けることができる。そう思っているのは、主だけだ。
化けるだけではない能力が嫌なのは言うまでもない。
それに性格も……
「……」
「でもやっぱり主の謎を解くことができるのは、デケムしかいないわ」
「だが、あの能力はリスクが高すぎる。もし失敗したら、主は戻ってこないかもしれないんだぞ」
「それでも、私たちじゃどうしようもないでしょ。ドゥオは察することしかできないし、私は人を操りまくることしかできない。穏便に気付かれずにやるならデケムが最適よ」
確かに、派手に人間を混乱させたらこれこそ主が困るだろう。
「じゃあ私行ってくるから、あの人間見張ってて」
髪をかきあげながら寝室への階段を登っていくウーナ見ながら、まだ迷っている自分が情けなく感じた。