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「さあ、忘れ物は無いわね」
持ち物と言っても道中の軽食とかだけど、それでもやっぱり村を離れて久々の遠出の依頼だし不謹慎だけど少し張り切ってしまう。
「も、ももも森って魔獣とかいっぱいぶわーって出ないよね!?」
思いのほかトウカは森の魔獣に怖がってるみたいだ。出発は朝、森を通過するのは昼、森に詳しく『嗅覚』の魔力を持つアシシと『視界』を持つ私がいるのだから小さい魔獣位ならなんてことないんだけど、ここまで怯えられると恐怖が伝染しそうだ。
「森の中、最近静か、、、デス。そんなにイッパイいなイ」
今の森の状況を話すアシシの顔が少し曇った気がした。もしかすると今回の依頼と関係のある事かもしれないが、最初の約束通り依頼は現地に着いてからという事だった為その場は詮索せず、私達はアルンド森へ向かった。
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アルンド森へ入って数時間、何事もなくアシシの部落へ着いた。アシシの言った通り森は静かだった。以前数回しか入ったことは無いけど、その時は小さな魔獣や妖精がいた記憶がある。だが、今回は魔獣はおろか妖精すら見かけなかった。
森の静気さに疑問を持ちながらもシエラ族の部族長であるドンガ=ファンに話を聞くために部落の中心部にあるテントに向かった。
「あぁ、ルーマ村のお嬢さんかよく来たね。突然こんな所まで連れてきてしまってすまない。」
挨拶もそこそこ早速本題へと移った。
「ここ数か月前からなんだがね、突然精霊の声が途絶えてしまったんだ。」
精霊の声、、ですか? と繰り返すと
「このアルンド森には東西南北各1箇所に精霊の祭壇があるんだがね、そこに祀っている精霊がどうやら調子が悪いみたいなんだ。精霊の声が聞こえるのは我々の中でも極少数、そして神子様位なんだ。我々が呼びかけても応答が無くてね、精霊の声が聞こえなくなった時期と同時期にワシ等の食糧となる魔獣も消えてしまったんだ。」
ドンガの話によると、2か月前から森の安否を教えてくれる精霊の声が絶え、その後森から魔獣が消えてしまったという事、そして今肉やタンパク源がなくなってしまい部落は食糧不足で遠出までして魔獣を狩らなければいけなくなったという事を教えてくれた。
この問題を解決する為には取り敢えず各所の祭壇を確認する必要があると言われ、一息ついた後各所の祭壇まで案内をお願いした。部落からそう遠くはなく、祭壇は全箇所周る事が出来た。
精霊の声が聞こえない私でも一目見てわかるほど、祭壇は魔力が枯渇仕切っていた。ドンガにその事実を伝えると、神子の魔力を注ぐことで復活するという言い伝えがあると言ったが、トウカがこの世界に来たのはつい数日前の事、魔法すら使えない状況であり、魔力を注ぐなんてもってのほかだと伝えると、ここから少し遠くの神殿に行くと神子の力を高めれる場所があるという。
シエラ族を助けるためにも、トウカの魔力を開花させなければならない為一度ルーマ村に戻り村長やアーミラおばあちゃんと相談すると伝えると、戻る直前にドンガから神殿の場所を記した地図と神殿の名前を教えてもらった。
これを、神殿の守り人に見せるといい と、三角の石のペンダントを渡され、その翌日に村に戻った。