2 裏童話
2 裏童話
「きさま、人の子か?」
と男の人の声が
「え~と・・・
そうですけど・・・」と
相手の動きを背中だ探りつつ
ゆっくりと振り向いた。
すると
ボロボロの鎧を着たおっさんが
僕に向けて弓を構えている。
「え~と・・・
なんで弓を構えてるんです?
どっかで会いました?
あっ!わかった!
先月因縁つけてきた
冒険者の方でしょ?」
とおチャラけて様子をみるが
「だまれ!質問してるのは私だ!」
「お、お~・・・
随分、好戦的ですね・・・
そうですね~・・・
質問は僕が人かどうか?
・・・だったかな?・・・」
「き、きさま~!平民の分際で~!
死ね!」
シュピンっ!
と僕に向け矢が放たれたが
シュンっ!
ビ―――ンっ!
矢は僕の後ろにあった大木に
突き刺さり、音を立て振動している。
「・・・くっ!・・・」
「いやー・・・なんです?
その弓、随分と早くないですか?」
矢が放たれた瞬間
空間魔法でおっさんの背後を取り
ナイフを首に当てるも
矢が早すぎて
少し腕をカスってしまった。
しかし、
さっきはチラっとしか見てないから
わからなかったが、近くで見ると
「さっきの平民発言といい、
この泥だらけで見間違えた鎧
・・・これ、かなり良い物ですよね?」
「くっ!きさま~!
貴族に刃を向けて
無事でいられると思うなよ」
とナイフ突きつけられてるのに
今だ毒づいている。
「そうですか・・・
じゃあ、さよなら・・・」
バチチンっ!
「くっ!」
バタっ!
電気魔法で直接、脳を電気ショック
したので、そのまま
地面に倒れたおっさんに
「・・・因みに僕は
人間ですよ・・・」
とだけ告げさせてもらった。
鑑定スキルを使うと
ゲノム・ブック(40)辺境伯次男
レベル13
「ホー・・・辺境伯の・・・
ていうかレベル低っ!」
この広大な魔物の森は王国の辺境領と
帝国領に接しているが
最低でもレベル20以上は
欲しい
でないと生きて出られない!
弓と鎧、そして腰にしている
剣を見ながら
「どうやってここまで来たんだ?
しかし、よくこれだけの
マジックアイテム揃えるなあ?!
やっぱり辺境のお貴族様だとお金が
あるんだろうな・・・」
とぶつくさ言いながらも
ふとっ嫌な予感がして
この貴族が来た方向に目をやった。
「・・・あ~やっぱり・・・
あ~~~!
めんどくさいな~!」と
僕は頭をワシャワシャした。
朝からついてると思っていたが
結局、帳尻が合うかのように
ついてないのか
その方向から僅かに血の匂いが漂ってくる。
多分だが、兵士を盾にして自分だけ
逃げてここまで、来たのだろう!
「あ~!兵士がアンデットになると
森の生態が崩れるし、
まだ、薬草も探してないし
これじゃ、また過労死だよ・・・」
僕は前世の教員生活のピリオドが
過労死なのを思い出しつつ
「あ~駄目だ!駄目だ!
今回は気楽にいくと決めたんだから
第一、5歳で過労死は笑えないよ」
僕は木に刺さった矢とイノシシを回収し
ポスンっ!
最後のマジックマッシュルームを
おっさんのソバに落すと
その場を後にした。
「ある程度でいいはずだもんね」
点々とまるで道しるべのパンくず
のように倒れている兵士の死体を回収し
薬草を見つければ回収し
魔物がくれば倒して回収した。
「いやな、童話だ!
鳥の代わりに肉食獣
パンくずの代わりに人ってなんだよ・・・」
そんな感じで数時間ほど
一人ブツブツ言っていると
「うっ!・・・・」
突如
何かの魔物に襲われたのか
おびただしい数の死体や馬車が
食い散らかした場所に出た。
「あ~・・・なるほど!
ずーと向こうの街道から
獣道を通ってここまで・・・
いや、だから
なんで、こんな所まで来んの?」
何かが焦げた匂い
そこら辺に
飛び散る腕、足、血、内臓
だが装備を見るからに
明らかに、王国の兵士たちだ
「まったくどういう事?
あっちは帝国!
でっ、帝国から王国に向けて
この森を・・・
いやいや、無理だよ!
こんな大人数の上に荷馬車なんて
足手まといにしかならないじゃん!
大人なのにそんな事もしらないの!
あ~もう!
こうなったら維持でも調べてやる!」
と深く息を吸い
「おーい!生きてるか~!誰か~!」
と叫んでみるが、
何の反応もない
「・・・いないか・・・」
だれもいなさそうなので
何があったか調べるため
死体を回収しながら
兵士の鎧に武器、壊れた馬車の荷台
とにかく目につく物は片っ端から
調べ回収していく。
「食料は大分残ってるな・・・
肉食の魔物だったのか?」
まだ回収してない兵士を見ても
噛み傷だらけだ
すると
近くから
「う、う、う・・・」
とうめき声が聞こえてくる。
「うん?」
そっちの方を見ると
一人の兵士が内臓が飛び出かかって
いるもののなんとか息をしているようだ!
「・・・・・・・」
その死にかけの兵士は僕をじっと見て
なにも話さない!
「なにがあったか教えてくれたら
楽にしてあげるけど・・・」
と僕が言うと
兵士の人は少し考えた様子だったが
やがて、力ない指で
隣で死んでいる兵士の人のバックを
指した。
僕がバックを開けると
色々、旅に使えそうな物の他に一冊の本が
ぺラ!ぺラ!ぺラ!
「日記か!」
どうやら、この兵士の人の日記のようだ!
「わかりました、
これで約束の条件はいいですが
ホントに良いんですか?」
と今にも死にそうな彼に再度聞くと
ニっ!
と笑った。
「・・・じゃ、じゃあ、行きますね」
ボワーン!
と闇魔法の毒製造で
霧状にしたもので彼の体を
包んだ
「相変わらず、エグイ魔法のくせに
綺麗な色の魔法だ」
とつぶやく
そして
最後の生き残りの彼が死んだのを確認し
「ふ―!
やっぱり異世界は慣れないな・・・」
その後も片付けを続け
あらかた終わるころ
ポタ!ポタ!ポタ!
と日が傾いた森に小雨が降ってきた。
パタンっ!
丁度、読み終わった日誌を閉じ
「・・・夕立か・・・帰るか!・・・」