僕にとっては異世界です 1 うっかりミス
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異世界で体は子供になろうとも
心は子供になろうとも
突っ込みは忘れません!
主題 僕にとっては異世界です。
1・うっかりミス
バサ!バサ!
下から吹き上がってくる
風が干してる洗濯物を
いたずらに
たなびかせる。
「ふふ~ん!ふ~ん!」
鼻歌交じりで、
家の前の物干し竿に
洗った洗濯物を干していく
ふとッ
横に目をやると
家の近くの崖から
海原のような魔物の森が延々
と広がっている。
「ん~!今日は洗濯日和だ!」
長らくの雨で
憂鬱な気分でもあったが
久しぶりのお天気に
太陽を手で覆いながら
見ていると
ついッ笑顔がこぼれた。
「レイ!レーイ!」
家の中から母さんの声が
聞こえてきた。
「はーい!今行くよ!」
僕はレイ!
今年で五歳になりました。
見た目は普通の男の子!
でも、ちょっとだけみんなと
違うのは
前世の記憶があるのです。
「母さん何?」
僕は洗濯用のカゴを
ドアの外に置き
家の中に入っていくと
「レイ!今日は森に
降りるんだろ?
アップルパイ作るから、
沢山のリンゴを
取ってきておくれ!」
「ホントッ!
アップルパイ
作ってくれるの?
やった!
じゃあ、行ってくるね!」
僕は久しぶりの甘い物に
ありつけると思うと
テンションが上がり
家を出たその足で
タッ!タッ!タッ!タッ!
そのまま崖の方へ走っていく。
そして、崖の縁に足をかけると
「とう!」と
崖から勢いよく飛び降りた。
そして
ふわっ!シュ―ン!
風魔法で体を浮かせ
鳥のように森へ急降下していく。
シュ―――ンッ! シュタっ!
「到~着!」
「さ~て、
リンゴ・・・リンゴ・・・
あった!」
ラッキーな事に降りて
すぐの所にリンゴが
たくさんなる木が
あった。
「おっ!今日はついてるな!
早速、全部貰おう!
母さんのアップルパイへと
お前達を変身する機会を
やろうではないか
はははっ!」
と一人訳わからん事を
つぶやきつつも
プチっ! シュンっ!
プチっ! シュンっ!
風魔法で飛んで上の方から
順番にリンゴをもぎ取り
空間魔法でしまっていく。
そう、この世界は
魔法があるのだ。
しかも、
なぜか僕にはこの才能があった。
「よし!全部取ったぞ!
次は魔物の肉と村長に頼まれた
薬草とかだな・・・」
ブオ――ン!
僕は魔力を四方に
波のように飛ばし
跳ね返ってくる魔力を探った!
「う~ん・・・
こいつはゴブリン
こっちの蛇の魔物は
昨日食べたし・・・
オークとかいないかな・・・
あっ!」
僕は魔力サーチに引っかかった
方を見るため
魔力で身体強化して
バっ!と
木を登っていく。
「いた!アタックボアだ!
今日はついてる~!」
5キロ先の大きな樹の下に
イノシシみたいな魔物を
見つけた
「おっきいのだな!
みんなも喜ぶぞ!」
僕は小さな手をボアの方に向け
ブ――ンと魔力を込めると
「いっけー!」
バーン!と
土魔法で小石を飛ばす。
ブレットをイノシシの
魔物に向け放った!
ブモ!ブモ!
モシャっ!モシャっ!
大木の根元に沢山生えている
キノコを食べていた
アタックボアだが
キ――――ン!
と、かん高い音が
近づいてくるのに
気が付き、
ブモっ?
と音のする方へ頭を向けた瞬間
ドスっ!
ピぎゃふっ!
ドス―――ンっ!
10トンはあろう巨体が
眉間を撃ち抜かれ
その場に倒れた。
シュンっ!
「よしッ!一発だぜ!」
僕は魔法を放ってから
空間魔法でここまで
一瞬で来ると
倒したイノシシの側が
マジックマッシュルームの
群生地であることにすぐ、
気が付いた。
「な、なんて今日は
ラッキーな日なんだ?!」
ブチっ!シュンっ!
ブチっ!シュンっ!
僕は少し興奮気味に
地面に生えてる
キノコを魔法で回収していく。
「やった!やった!
これだけあれば、
マジックポーションが
どれだけ作れるか・・・」
とブツブツ一人ごとを
つぶやき売ったお金で
何を買おうかと
もう夢中でムシりながら
頭を巡らせている
この世界に来て
一番好きなのはここだ!
頑張って、
工夫して、
努力した分だけ
すべて、僕の物!
綺麗な物もおいしい物も
お金も全部だ!
そりゃあ、領主が住んで衛兵がいるような
安全な壁がある町では税金の支払いが
あるらしいが
こんな辺境ではそれもない!
つまりそれは、
やはり自然が相手な訳で
当然、安全も保障されてない訳で
カシャンっ!
すぐ後ろで
何か鎧の金属音のような音が
「・・・し、しまった・・・」
僕は、夢中になり過ぎて
すぐ後ろに何かが
近づいてくるのに
まったく気が付かなかった。
「くそっ!やけに今日は
ついてると思ったよ」
とうっかりしていた
自分を責めるが
ギリっ!チチチチチっ!
と僕の後ろで弓を引く音が
不気味に響いてくる。
「・・・やるか!・・・」
僕は覚悟を決め
手にもぎ取った
最後のキノコを静かに
パサっ!
と地面に落とす
すると男性の声で
「き、きさま・・・人の子か?」
次回 慣れない異世界